ページトップへ戻る

Volume 04, No.4 Pages 41 - 43

6. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

Particle Accelerator Conference(PAC)’99に参加して
PAC ’99 Report

早乙女 光一 SOUTOME Kouichi、安積 隆夫 ASAKA Takao、谷内  努 TANIUCHI Tsutomu、田中  均 TANAKA Hitoshi、大熊 春夫 OHKUMA Haruo

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門 JASRI Accelerator Division

pdfDownload PDF (25 KB)


 Particle Accelerator Conference(PAC)は、2年に1度開催される加速器全般に関する国際会議である。第18回目の今回は、3月29日から4月2日にかけてニューヨーク市で開催された。1000人ほどの参加者があり、75件の招待講演と121件の一般講演が2カ所の会場で並行して行われた。
 講演はトピックスごとに、下記のように分類されて行われた:Plenary Session、High-Energy Hadron Accelerators and Colliders、Sources and Injectors、Multiparticle Beam Dynamics、Magnets、Light Sources and Free-electron Lasers、Extremes of Beams、Linear Colliders、Special Sessions、Advanced Concepts、Lepton Accelerators and Colliders、Controls and Computing、Single-Particle Beam Dynamics and Optics、Radio-Frequency Systems、Low- and Medium-Energy Accelerators and Rings、Beam Instrumentation、Accelerator Technology、Applications of Accelerators、Pulsed-Power and High-Intensity Beams、Instabilities and Feedback
 またこれらの講演と同時に、1000件を越すであろうポスター発表も連日行われた。
 SPring-8からは、招待講演“Performance and New Capabilities of SPring-8(H.Kamitsubo, N.Kumagai)”と9件のポスター発表があった。以下、会議の概要を感想もまじえてトピックス的に紹介する。自分の発表を担当する以外は各人の興味にまかせて参加したこともあり、全体を網羅しているわけではないことをあらかじめお断りしておく。投稿済みのプロシーディングス原稿で著作者が閲覧を許可しているものは、www経由で取得することができる。会議の詳しい内容を知りたい方は、
 PAC99ホームページ:http://pac99.bnl.gov/
 口頭発表:
 http://pac99.bnl.gov/Pac99/Program/Oral.html
 ポスター発表:
 http://pac99.bnl.gov/Pac99/Program/Poster.html
にアクセスされるとよい。
 まず、“Opening Plenary”のセッションでは、KEKB(筑波)とPEP-II(USA)2つのB-factoryおよびRHIC(USA)の現状報告などがあった。B-factoryは電子-陽電子衝突型加速器であり、電子リングと陽電子リングからなっている。ビームコミッショニング開始時期は異なるが、ともに順調に蓄積電流値を伸ばし、両者とも検出器のインストールを今年5月に予定している。Luminosityに関してはPEP-IIがやや進んでいるようだが、計画の進行状況はほとんど同じと言ってよい。2つのB-factoryの報告を1人がまとめて比較しながら行った、というのも印象的だった。聴衆にはわかりやすかったが、「講演者の方はいろいろとご苦労されただろう...」などと思いながら聞いていた。RHIC(Relativistic Heavy Ion Collider)は4月からマシン(超伝導電磁石)の冷却を始め、今年の中頃にはビームコミッショニングを開始するとのことであった。今回は超伝導電磁石の調整状況などが報告された。放射光業界と直接関係はないが、超伝導技術を駆使した加速器という点で興味のあるマシンである。次回のPACあたりで、ビームコミッショニングの経過報告があるのではないだろうか。
 “Multiparticle Beam Dynamics”のセッションでは、陽子加速器におけるspace-charge効果についての発表が盛んになされていたのが印象的だった。またelectron cloudの効果についての発表があった。これは、真空槽中に発生した光電子が周回ビームによって加速され、2次的な電子を発生し、やがて(正に荷電した)ビームのまわりに引き寄せられてcloudとなる、というものである。これには、真空槽の幾何学的形状と表面の効果、および加速器のパラメータが密接に関連しており、モデルに基づいた理論的考察と、PF、CERN、APS、PEP-II、KEKBなどでの測定結果が議論された。また、これに関するポスター発表もかなり見受けられた。陽子や陽電子など正の荷電粒子を扱う加速器では重要な問題である。幸いSPring-8では陽電子運転を(今のところ)行っていないから、この効果は考えなくてもよいが、興味深い話題ではある。放射光に直接関連した話題としては、NSLS VUVリングからのコヒーレント放射の観測についての報告があった。リングの蓄積電流値がmicrowave instabilityの閾値を越えたときに電子ビームに密度変調が生じ、偏向電磁石ビームラインで波長約7mmのコヒーレント放射が観測された、というものである。検出器での信号強度が、ある電流値を境に、電流値の2乗に比例するようになったことから、コヒーレント放射と判断したようである。「波長7mm」を説明する候補としてベローズ部のインピーダンスを考えているが、明確な結論はまだ出ていないようである。また同じくNSLS VUVリングであったが、momentum compaction factorを正負に変えてバンチ長などを系統的に測定した、という報告も興味深かった。こうした試み自体は、例えばUVSORリングですでに行われているが、6極電磁石で非線形項まで制御したときにRFバケツ内に2つの安定点が生じ、おのおのに電子ビームが捕獲されるという過程を、放射光イメージで見せてくれた。
 “Light Sources and Free-electron Lasers”のセッションでは、BESSY-II(ドイツ)のコミッショニング報告があった。BESSY-IIは蓄積電子のエネルギーが1.7GeVの第3世代放射光リングであり、VUVおよびsoft X-ray領域の放射光利用を目的としている。昨年4月にビームを蓄積して以来、順調にコミッショニングを続け、デザイン通りのパフォーマンスをほぼ達成したとのことである。蓄積電流値は最大で400mA近くを記録し、エミッタンスは6nmrad、カップリング比は0.1%以下である。すでに4台の挿入光源がインストールされており、放射光を使った実験も始まっている。ポスター会場でも話を聞いたが、非常に精力的にマシンスタディを行い、ビームの質の向上を図っているという印象を持った。またAPSからは、試験的に行ったトップアップ運転の結果が報告された。APSにおけるトップアップ運転とは、“injection with photon shutters open”ということで、頻繁に入射し続けるモードと数時間に1回入射するモードを考えているそうである。電流値のゆらぎを0.01%以下に抑えることを目標に、トップアップ運転のコミッショニングを昨年9月に開始し、放射線安全やビームへの影響を調べたという内容であった。蓄積電流値がある範囲で一定に保たれるため、光学系に対する熱負荷が一定になる、あるいは、ビーム診断系の電流値依存性がなくなる、などのメリットがあるとのこと。ユーザータイム時のトップアップ運転を、年内にもテスト的に行うそうである。SPring-8でも、シングルバンチ的な蓄積をしたときにビーム寿命が短くなることから、こうした運転の必要性や可能性が議論されはじめたところである。トップアップ運転をターゲットとした入射電磁石の改造も検討され始めている。またこのセッションのタイトルにもなっているが、FELとSASEに関する講演が4つあり、こうした光源の開発が精力的に行われているとの印象を受けた。
 “Sources and Injectors”セッションの電子源関連では6件のうち5件がRF電子銃に関するものであった。FM TechnologiesのF.M.Makoは招待講演でバンチ化ビームを発生する電子銃について報告し、特にマイクロパルス電子銃と呼ばれるRF空洞内でのマルチパクタリングを利用した電子銃についてシミュレーションと実験結果を示した。これは空胴壁の一部を電子は透過できるが電界は遮断されるようにして、空胴ギャップで起こるマルチパクタリングの共鳴条件に適合する位相にある電子のみが増幅され、その結果バンチ化ビームとなって空胴から出射されるというものである。実験ではLバンド(1.3GHz)空胴でバンチあたり1.1nC、バンチ長40psecのビーム発生が確認された。大電流バンチ化ビームの新たな生成方法として今後開発が進むものと思われる。一方、高密度、低エミッタンスビームの生成を目指した開発ではMITによる17GHzのRF電子銃、BNLにおける高電圧パルスを用いた電子銃の報告があった。前者はRF空胴の周波数を上げることにより、200MV/mの加速電界発生を確認した。また、後者はパルス電圧により1GV/m以上の加速電界を発生するというもので、シミュレーションによれば1πmm・mrad以下のエミッタンスビームを生成できる。1MVパルスによる実験が行われており、5MVの電源も開発中である。さらにDESYでは、以前から開発が進められてきたRF電子銃がTTFの電子銃として設置され運転が始まった。TTFではリニアコライダーの開発と並行してSASE原理実証のためのFEL計画(TTF-FEL)が進められており、2002年の試験運転と2003年からのユーザー運転を予定してる。ポスターセッションでもRF電子銃に関する発表が30件近くあり、盛況であった。
 “Advanced Concepts”のセッションでは、プラズマ加速やlaser wakefield 加速など、新しい加速機構の開発についての報告がなされた。内容は、各研究機関での経過報告といったところである。
 またポスターで、アンジュレータ光をモニターするためのX線BPMについての発表がELETTRA (Galimberti,et.al.)とAPS(Decker,et.al.)からあったことを報告しておく。両者とも偏向電磁石からのバックグラウンドX線を減らしてS/N比を改善させることを目的としているが、手法は全く異なっていた。ELETTRAで検討している方法は、アンジュレータと偏向電磁石からの放射光スペクトルの違いを利用し、ブレード部から出てくる光電子のエネルギーを測定してフィルターをかけるというものである。なるほど、という感じである。現在試作機を作製中とのことである。一方、APSで検討している方法は、アンジュレータ上下流の偏向電磁石の曲げ角を1mradずつ減らしてビーム軌道を外寄りにし、アンジュレータ直近の補正電磁石で1mrad分を補償して偏向電磁石からの光をアンジュレータの光軸から分離する、というものであった。当然、リングの各コンポーネントの再アラインメントが必要になる。ただし、補正電磁石からの光がどう影響するのか、無視できるのか、といった疑問が残り、とうとう理解できなかった。
 最後に一言。今回の会場はMarriott Marquisというホテルであったが、これはニューヨークの街中の最もにぎやかな場所にある。夜中でも人通りが絶えないので、まっすぐ歩くのが難しい。東京で言えば歌舞伎町である。ただ、治安は想像以上に良かった。滞在費がかさむのは言うまでもないが、物価のレベルが全く異なる国から参加した人たちは、いったいどうして暮らしていたのか、などと心配するのは大きなお世話であろうか。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794