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Volume 04, No.4 Pages 28 - 30

4. 原研・理研・R&Dビームライン/JAERI・RIKEN・R&D BEAMLINE

生体超分子複合体構造解析ビームライン(BL44XU)の建設状況
Construction of Macromolecular Assemblies (BL44XU)

山下 栄樹 YAMASHITA Eiki、月原 冨武 TSUKIHARA Tomitake

大阪大学 蛋白質研究所 Institute for Protein Research, Osaka University

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1.はじめに
 生体超分子構造解析ビームライン(BL44XU)は学術振興会未来開拓研究事業、科学技術振興事業団及び文部省補正予算より援助を受けて、平成8年度から建設に取りかかり平成11年秋の利用開始を目指した準備が進んでいる。本ビームラインは生体内の組織化された機能の理解を飛躍的に高めるために、多様な機構で反応系を制御している生体超分子複合体の立体構造を結晶構造解析法によって決定することを目的としている。本稿では、1999年6月現在でのビームラインの調整を含む建設状況について報告する。

2.ビームラインの概要
 BL44XUは高輝度X線を利用するために光源としてSPring-8標準の真空封止型アンジュレータ(周期長32mm、周期数140)を採用し、基幹チャンネルはSPring-8標準仕様に準じた構成になっている。
 光学系は、分光素子にSiを用いた回転傾斜型二結晶分光器及び主に高調波除去を目的とした水平はねミラーを含む標準的輸送チャンネルから構成されている(図1)。水平はねミラー調整機構はベント機構も備え水平方向の集光が可能になっているが、光源の平行性を生かすためにほとんど集光せずに使う予定である。ミラー本体は溶融石英の母材上にロジウムを蒸着した70cm長の平面ミラーで、視射角は7mradで設置しており、7〜17keVまでのX線を高輝度特性を損なうことなく使用できる。ミラー調整機構は実験ハッチ内にあるのでミラー下流側のコンポーネントの位置を調整すれば、数mradの変更が容易である。
 
 
 
図1 BL44XU光学系の模式図 
 
 試料への入射X線サイズは試料直前に置かれるコリメーターによって決定する。測定に用いられる試料サイズが様々なために、コリメーターは0.5〜0.02mmまでの数種類を準備している。試料を取り付けるゴニオメーターは、ビームラインの偏光を考慮して回転軸が水平方向のものと溶媒に浸した状態で測定する試料のために垂直方向のものを独立に準備している。検出器にはこれまで蛋白質結晶構造解析に実績のあるイメージングプレート回折計と高感度高速読み出しのCCD検出器を準備している。イメージングプレート回折計では既存のソフトウエアと組み合わせ振動写真撮影法による回折強度データ収集を行い、1500Åの結晶格子では3.5Å分解能までの回折強度測定を可能にする。CCD検出器は当面既存のソフトウェアで振動写真法による回折強度データ収集に用いるが、測定精度を上げるため静止写真撮影方法の開発も行う。 
 
3.建設の経過
 平成9年2月〜3月にフロントエンド部と標準的な輸送チャンネルのコンポーネント(4象限スリット、分子ターボポンプ、X線ストッパー、γストッパー)の入札・発注が行われた。平成9年3月〜平成10年12月にかけて、アンジュレータの磁場測定と蓄積リングへの導入が行われ、収納壁内の機器の設置及び調整が終了した。本ビームラインのハッチは隣接するビームラインBL44B2光学ハッチの壁を一部共有する設計になるためにBL44B2が稼動していない時期(平成10年12月〜平成11年1月)を選びハッチの建設が行われた。ハッチの建設後、分光器とミラー以外の輸送コンポーネントの設置は姫路工大理学部の吉川研究室、阪大工学部甲斐研究室と我々の研究室の学生らが行った。光学系を含む輸送コンポーネントの設置は2月中旬に終わり、インターロックの導入が3月中旬までに終了し、ビームラインが完成した(図2)。 
 
 
 
図2 光学ハッチ及び実験ハッチ 
  
4.立ち上げ状況
4-1  サーベイ

 平成11年4月から設置後の輸送コンポーネントの動作確認を行った。4月下旬にインターロックの自主検査に、5月の連休明けに使用前検査に合格し、平成11年の第6サイクル(5月12日〜5月28日)でフロントエンドのスクリーンモニタ上でBL44XUでの最初の放射光を確認した。フロントエンド部の機器に流れている冷却水量の関係からアンジュレータのギャップ制限が付けられたが、サイクル中にハッチ漏洩試験に合格し、ビームラインが使用可能となった。夏にフロントエンド部の機器の点検をし、秋再開時にはアンジュレータの最小ギャップでの漏洩試験を行う予定である。

4-2  光学系の調整
 第7サイクル(6月2日〜6月18日)では、他のビームラインの立ち上げにおいて確立された分光器の調整手順書を基に分光器の定位置出射及び分光器のエネルギー校正を行った。エネルギー校正にはアンジュレータのギャップ制限から金の吸収端を用いた(図3)。エネルギーを8〜22keVに変更時の光軸のズレは分光器から約8.5m離れた試料取付位置で縦に約60μm、横に約80μmであり、ビームサイズは光源から約50m離れた輸送チャンネルのベリリウム窓直後、半値幅で横約1.3mm、縦約0.8mmであった。集光せずに0.1mmのコリメーターを通した後のX線の強度(実際試料に入射されるX線の強度)を、イオンチャンバーにより測定したところ、経験的に高エネルギー加速器研究機構の蛋白質結晶解析ビームラインBL6Aと比較して、約2倍程度の強度が得られている。分光結晶のΔθ1スキャンでロッキングカーブを測定したところ、12.4keVで半値幅が約10秒であった。エネルギー変更時に出射位置がまだ0.1mm近く動く。ミラーに関しても反射後の強度変化についてはまだ測定できていない。CCD検出器の調整の日程上、先にコリメーターまで通す必要があったため、分光器の各軸の調整が不十分であり、分光器とミラーに関しては、CCD検出器の調整後、再度調整を行う予定である。 
 
 
 
図3 AuのL3吸収端測定 
 
4-3  ゴニオメーターと検出器
 ゴニオメーターは、回転軸が水平な軸と垂直な軸の2軸あり、各軸の精度を得るために独立軸とした(図4)。回転中心の位置精度は水平軸が約2μm、垂直軸が約5μmであった。各軸には試料センターリング用のモーター軸があり、ゴニオメーターを制御しているコンピュータ上で行う。また、X線による試料の劣化を防ぐため、冷却窒素ガス吹き付け装置を設置する。 
 
 
 
図4 ゴニオメーター 
 
 検出器は検出面積が210mm×210mmのCCD検出器(Oxford社製)と直径400mmのイメージングプレート検出器(マックサイエンス社製)を準備している。CCD検出器は検出面積がイメージングプレートに比べて小さいので、CCD検出器の取り付け台は上へ100mm移動可能である(図5)。またCCD検出器については、補正用のイメージを収集し、補間ファイルを作成中である。試料−検出器間の距離は両検出器とも100〜1000mmの間で変更できる。 
 
 
 
図5 CCD検出器と架台

5.おわりに
 このビームラインは阪大蛋白研のビームラインではあるが、建設には理研、原研、JASRIの多くの方々の単なる援助の域を越えた支援によってできたものである。計画及び建設にあたっては、石川哲也主任研究員、北村英男主任研究員、植木龍夫利用促進部門長をはじめ多くの方から貴重な助言、支援を頂いた。また、挿入光源、フロントエンド、制御、光学系の各グループの方々には、御助力を頂いた。特に、理研の山本雅貴博士にはビームラインの計画から立ち上げまでの全てにおいて、長期間恒常的に援助を頂いて、今日まで至っています。この場をお借りして深く感謝いたします。



山下 栄樹 YAMASHITA  Eiki
大阪大学 蛋白質研究所
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-2
TEL:06-6879-8605 FAX:06-6879-8606
e-mail:eiki@protein.osaka-u.ac.jp


月原 冨武 TSUKIHARA  Tomitake
大阪大学 蛋白質研究所
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-2
TEL:06-6879-8604 FAX:06-6879-8606
e-mail:tsuki@protein.osaka-u.ac.jp



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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