ページトップへ戻る

Volume 04, No.4 Pages 1 - 4

1. ハイライト/HIGHLIGHT

兵庫県ビームラインの利用状況
Hyogo Beamline Operating Status

岩崎 英雄 IWASAKI Hideo

(財)ひょうご科学技術協会 Hyogo Science and Technology Association

pdfDownload PDF (34 KB)


1.はじめに
 兵庫県ビームライン(BL24XU)は、産官学の連携による産業利用を掲げて、1998年10月より本格的に稼動した。技術的な本ビームラインの現状については、本誌Vol.4 No.2に掲載されている「兵庫県ビームライン(BL24XU)の現状」[1]を参照していただくこととし、ここでは、その運営方法と利用状況について述べる。

2.運営体制
 図1に兵庫県ビームラインの運営体制を示す。(財)ひょうご科学技術協会は、兵庫県より本ビームラインの運営・維持管理を委託されている。本ビームラインの建設を担当した姫路工業大学理学部X線光学講座の先生方(当協会の研究支援専門員でもある)が、ビームライン責任者として技術・安全管理を行っている。
 
 
 
図1 兵庫県ビームラインの運営体制 
 
2. 1  課題申請
 兵庫県は、外部の有識者により構成される兵庫県ビームライン評価委員会を設置している。この委員会は、年2回程度の申請課題の採否、研究成果の中間評価を行う。
 課題申請者は、共同研究計画書を提出するが、採択されれば原則3年間の利用研究の承認期間が得られる。この3年間は研究成果の芽を事業化の芽とする見通しを得るために必要な期間である、との判断である。とは言え、研究成果は厳しく評価され、期間途中といえども研究継続の可否について見解を求められる。
 実際の課題申請受付に当たっては、研究内容や放射光の必要性の観点からだけではなく、ユーザータイムの確保や研究支援の負担度の観点からも事前に調査・検討し、その結果を踏まえて課題申請をしていただくことになる。
 兵庫県より通知を受けた採択課題に対しては、それ以降当協会が一元化された窓口として、SPring-8の制度に沿って利用計画書を提出する。安全審査を経た後、ユーザーは利用実験を始めるためのユーザー登録等の利用手続きを行う。

2. 2  利用委員会
 兵庫県ビームライン利用委員会に、実験ハッチ毎の実験ハッチ検討WGを置いている。ビームタイムの配分方法、ビームラインや実験ハッチ内機器の高度化、その他運営・維持管理に関する問題に関して協議する。
 限られた予算であるが、研究環境の整備のためや、よりすばらしい成果が得られるよう、研究設備のバージョンアップを行なってきた。

2. 3  ユーザータイム配分
 ユーザータイムの基本的な配分方針は、兵庫県(兵庫県ビームライン評価委員会)により示される。それに基づき、当協会が配分調整、通知を行なっている。
 兵庫県ビームラインは、同時に利用実験が行える次の3つの実験ハッチを持っている。
   実験ハッチA:蛋白質結晶構造解析
   実験ハッチB:材料評価
   実験ハッチC:マイクロビーム、イメージング
 実験ハッチ毎に研究内容や、評価装置とその光学系等に特徴がある。ユーザータイムの配分は、実験ハッチBは問題ないが、実験ハッチA、Cは、その特徴を生かした配分方法をとっている。ユーザータイム配分は、1日(3シフト24時間)を最小単位としている。
 実験ハッチAは、研究分野の特徴で、1回の利用実験は1〜2日の希望が多い。しかも評価試料の作製上、利用希望日の調整が小まめに求められる。そのため予約システムを構築し、今年3月の試行後、4月からこの予約システムを利用してビームタイムを配分している。平日利用と休日利用に比重をつけた各ユーザーの持ちポイントの範囲内で、自由に予約することが出来る。
 実験ハッチCは、この実験ハッチの特徴から、各ユーザーの利用する光学系や評価装置が大なり小なり異なる。光学系の組換えや光軸調整に時間がかかるため、1回の利用実験の配分は、概ね2〜4日としている。実験の利用効率を上げるため、光学系・測定系の似たものをグルーピングし、中期的に大枠の配分計画を決定し、ユーザーには早めに通知している。

3 利用状況
3. 1  安全教育

 利用実験を始めるに当って、ビームラインの基本操作・光軸調整(主に分光器)、および実験ハッチ内機器の操作習熟・安全の実地教育を行なっている。習熟度の資格認定を行ない、実験グループに認定者がいなければ、夜間・休日の実験を行なうことが出来ない仕組みになっている。
 これは、ユーザーの責任において利用実験が効率よく行なえ、特に夜間・休日の研究遂行に支障を来たさないためである。SPring-8のビームライン担当者・当番に夜間・休日のトラブル対応をお願いしているが、復帰後も研究継続が可能となる。
 ビームラインの建設と実験ハッチ内機器の整備を担当した姫路工大理・X線光学講座の先生方、および実験ハッチ内機器の整備とビームライン操作を習熟した県立工業技術センターの研究者に、教育の講師をお願いしている。

3. 2  1998年第10、11サイクル
 兵庫県ビームラインが本格的に稼動した1998年10月から12月までを試行期間と位置付け、希望するユーザーにビームタイムを配分し、装置の使い方、装置性能の評価を経験していただいた。そのため、10月から11月初めにかけての第10、11サイクルは、他の放射光施設やSPring-8の他のビームラインの放射光利用を経験した一部のユーザーを除いて、装置操作習熟・安全教育や、装置性能評価実験に充分な時間を割いた。これは専用ビームラインが臨機応変に対処できる特徴を充分に発揮したもので、早い時期に装置の改良個所を抽出して貰おうという狙いでもあった。

3. 3  1998年第12サイクル以降
 その後、試行期間である11月、12月の第12、13サイクルは、利用実験への過渡期と考え、遅れて参加したユーザーへの教育を行ないつつ、利用実験の配分を増やしていった。
 1999年に入って、本格的な利用実験が始まった。但し、初めて実験に参加するユーザーや、新規に課題申請したユーザーには、充分に実地教育を行なった。
 1998年11月の第12サイクル(C99A期のスタート)から1999年6月の第7サイクルまでに、実際に利用実験を行なった機関数を企業、国公立研、大学別にまとめると表1になる。合計数が各実験ハッチの和と異なるのは、同じ機関名は1とカウントしたためである。兵庫県ビームラインは産業利用を掲げているので、ユーザーの半分近くが、企業ユーザーであることが分かる。 
 
表1 実際に利用実験を行なった機関数(1998年10月〜1999年6月) 
 
 
 
 表2は、表1と同じ期間内における、利用機関に対するユーザータイムの利用形態を示す。企業ユーザーが充分に利用していることが分かる。各実験ハッチ毎のビームタイム利用率(但し、表2の(注2)の実験中止は対象外とする)は、実験ハッチAが97.3%(ハッチ扉の故障)、実験ハッチBが99.7%、実験ハッチCが100%ときわめて高く、フル稼働していることがわかる。実験ハッチB内の装置は2台とも調整の段階であり、現在利用実験扱いとしているが、装置性能評価のための基礎データの収集段階である。  
 
表2 利用機関に対する利用形態 対象期間は1998年第12サイクル〜1999年第7サイクルで、この期間の全ユーザータイムは2496時間である。 
 
  
 
3. 4  利用研究者数
 今までに本ビームラインを利用した(機器調整、機器操作教育も含め)研究者の総数は153名である。その内訳は
  実験ハッチA 67名
  (企業36、国公立研12、大学19)
  実験ハッチB 14名
  (企業4、国公立研9、大学1)
  実験ハッチC 72名
  (企業26、国公立研19、大学27)
である。
 機関別に見ると、企業66名、国公立研40名、大学 47名となる。

3. 5  研究成果
 研究成果の外部発表件数は正確には把握していない。まだ殆どが学会発表であるが、既発表、投稿中を含め10数件である。フォロー不足のため、もう少し多いのではないかと思っている。
 いい成果が出始めており、7月23日に第1回兵庫県ビームラインの研究成果発表会を神戸市で開催する予定である。

4.今後の課題

 本ビームラインが本格稼動して1年近く(ビーム運転日数で)が経った。
 SPring-8ならではの高い水準の成果を得るために、そして産業利用として価値ある成果を得るために、課題選定を見直す時期に来ている。その理由として、本ビームラインは産業利用を掲げているので、基礎研究とのバランスも重要であるが、成果のスピードアップが要求されること、現ユーザーは3年の利用承認期間があるとはいえ、評価委員会の厳しい中間評価があるため、安住することは許されないこと、新たな利用希望の打診が多いこと、等がある。
 ユーザーが多く活況を呈することは喜ばしいことであるが、研究支援体制にも課題は多い。
 放射光実験に手慣れたユーザーも多いが、そうでないユーザーも多い。現在は姫路工大理学部・X線光学講座、および工業技術センターにそのケアの負担を強いている。今年6月より、スプリングエイトサービス㈱に業務委託し、本ビームライン専属の技術者を1名派遣していただいているが、未だ充分とは言えない。
 限られた予算、人員、実験場所等問題は多いが、装置の改良、支援体制の充実を図って、多くのすばらしい成果が出るよう支援していきたい。
 
5.おわりに
 専用ビームラインの特徴である柔軟で効率のよい運営方法をとったため、多くの方々に、特にSPring-8の関連部門の方々に、提出書類の遅れや直前の計画変更、または無理なお願い等、多大のご迷惑をかけましたことをお詫びします。これも研究者に早くいい成果を出していただきたいとの願いからであると、ご理解下さい。
 最後に、本ビームラインの運営に際しては、多くの関連機関や多くの方々のご協力をいただき、また本稿を作成するに当っても多くの方々から情報をいただきました。感謝申し上げます。

参考文献
[1]松井 純爾他:SPring-8利用者情報Vol.4,No.2,(1999)36.


岩崎 英雄 IWASAKI  Hideo
(財)ひょうご科学技術協会
〒678-1205 兵庫県赤穂郡上郡町光都3-1-1
TEL:0791-58-1402    FAX:0791-58-0236
e-mail:iwasaki@cast.gr.jp
略歴:1998年4月、NEC研究開発グループより出向。審議役



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794