Volume 04, No.3 Page 83
4. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第2回SPring-8利用技術に関するワークショップに参加して
Report from an Attendee on the 2nd Workshop of Experimental Techniques at SPring-8
3月4日から5日にかけて一泊二日の日程で、第2回SPring-8利用技術に関するワークショップが開催されました。一日目は、昼過ぎから行われた全体会議終了後、イメージングセッションと赤外光セッションの2つの会場に別れ、それぞれの分野の複数の研究者の方々から、最近の結果を交えた発表が行われました。夕方からは懇親会が開かれ、いつもは交流を持つことのない異分野の研究者と語り合う絶好の機会となりました。二日目は、蛋白質構造解析セッションとコヒーレント光セッションがそれぞれ別の会場で行われ、午前中でプログラムを終了いたしました。
私が一日目に出席いたしましたイメージングセッションは、トップバッターの早川慎二郎先生が都合により最後の発表へまわるというハプニングで始まりました。最初に2件続けて行われた蛍光X線イメージングの応用に関する発表では、金属元素の生体中における二次元的分布を観測した例が紹介されました。蛍光X線イメージングの実験技術が、砒素や鉄の生体中における分布を調べることについては、高いレベルに到達していることが私のような門外漢にもよく判りました。また、位相/屈折コントラストイメージングについては、X線干渉計を用いた位相コントラストイメージングの講演に加えて、兵庫県ビームラインやBL47XUで行っている屈折コントラストイメージングの研究例も紹介されました。撮像時間や空間分解能について、かなり突っ込んだ質疑応答がなされていたのが印象的でした。セッションの後半は、マイクロビームに関するいろいろな技術が順に発表されました。結果的に最後の講演となった早川先生の発表は、手法や装置に関する内容でもあり、イメージングセッションの締めにふさわしいものだったと思います。
懇親会では、私自身、いつもは語り合うことのない赤外光セッションの参加者とも交流を持つことができました。赤外光の利用希望者の方々には新たな実験を始めようとする勢いを感じましたので、「体が2つあったならば、赤外光セッションにも参加できただろうに。」と少々悔しい思いもいたしました。学会主催の懇親会では味わえないこのような交流は、このワークショップならでは素晴らしいところでした。
2日目は、たんぱく質構造解析セッションを聴かせていただきました。私にとっては異分野ということもあり、研究内容に関する報告は控えさせていただきます。ただ一点、神谷信夫先生の「ビームライン担当者をもり立てよ。」というお言葉について思うところを述べさせていただきます。私自身、8年間、ビームラインの保守管理のお手伝いをしてまいりましたので敢えて申し上げますが、安定したビームを利用することを当然の権利と捉えるあまり、発する言葉は文句だけになってしまっている利用実験者には、本当に襟を正して欲しいと思います。たとえ、慢性的なマンパワー不足という苛酷な状況にあったとしても、ビームライン担当者が「やりがい」を持って活躍できるならば、そのような共同利用実験施設は繁栄し続けることができると思います。
ワークショップ終了後、しばらく訪れることのないSPring-8の空気を胸いっぱいに吸い込んで、帰りのバスに乗り込みました。この期間中、多くの方々と知り合うことができただけでなく、いくつもの貴重なアドバイスを頂戴いたしましたので、私にとってはとても有意義な2日間でした。最後に、力量不足のためにこのような至らぬ報告しか書けませんでしたが、このような私に執筆の機会を与えてくださいましたことに深く感謝申し上げます。
杉山 宗弘 SUGIYAMA Munehiro
1967年生まれ
〒371-0034 群馬県前橋市昭和町2-13-7 鳩待荘103
TEL:027-234-3690
e-mail:kmk@mta.biglobe.ne.jp
略歴:1989年大阪大学工学部精密工学科卒業、1991年東京工業大学材料科学専攻修士課程修了、1991年NTT電子応用研究所、1996年NTT基礎研究所研究主任、1997年大阪大学工学博士(論文提出による学位授与)、1999年4月より群馬大学医学部医学科3年生。日本放射光学会会員。1997年応用物理学会講演奨励賞受賞、1998年日本放射光学会若手奨励賞受賞。