Volume 04, No.2 Page 52
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
SPring-8第3回マシンスタディ報告会
The 3rd Meeting on Machine Studies of SPring-8
第9サイクル(1998年9月)から第12サイクル(1998年11月)までに行われたマシンスタディについての報告会が1998年12月8日にSPring-8の会議室で開かれた。今回は加速器の基本的なパラメータ、各機器、装置の特性や性能に関する測定、軌道安定化などの運転性能向上の試みに関するスタディが主であった。いくつかのトピックスについて簡単な紹介を以下に行う。
第10サイクルでは核共鳴散乱などの実験に重要なパルス放射光発生のためにセベラルバンチのユーザー運転が行われた。セベラルバンチ運転時のバンチ純度向上にも関係する線型加速器の電子銃のダーク電流(グリッドに引き出し電圧がかかっていないときにも電子が漏れでる現象)とグリッドバイアス電圧との関係が測定された。シンクロトロンではシングルバンチを生成するRFKOの重要なパラメータの1つであるチューンおよびクロマティシティの測定と補正がリアルタイムスペアナを用いて行われた。また入射時間短縮のための8パルス運転のスタディが行われた。
放射光発生用加速器で従来から問題となっている光電子による真空ゲージの異常動作に関する測定や、光アブソーバーへの放射光の照射位置を変えることによる脱ガス量の変化を真空度の変化により測定し、いわゆる真空的な枯れの程度を見積もるスタディも行われた。
さまざまなフィリング、電流値で正しい軌道を測定するために、夏期停止期間中に蓄積リングのCOD BPMの処理回路に狭帯域のバンドパスフィルター、アイソレータを挿入する改造が行われた。この効果を確かめるスタディが行われた。
蓄積リングの電子ビームの軌道安定化のため、COD BPMから得られる軌道を2分間隔で基準軌道にフィードバックする試験が行われ、この補正を行うことによりID設置部での軌道変位を水平で5μm程度、垂直で1μm程度に抑えることが出来た。現在ではユーザー運転において1分間隔での軌道補正が行われている。また、電磁石冷却水の温度変化と軌道の関係も調べられ、おおよそ水平方向には最大2μm/0.1度、垂直方向には最大1μm/0.1度の変動が見られることがわかった。
また、加速器の重要なビームパラメータの1つである垂直エミッタンスの評価法の1つとしてX線干渉計を用いた空間コヒーレンス測定から電子ビームのサイズを測定する試みも行われた。
報告会で発表されたスタディのテーマは以下の通りであった。個々のスタディの詳細な内容については今後 SPring-8 Annual Report などで発表されて行くと思われる。それらも参照願いたい。
線型加速器電子銃のダーク電流測定
堀 利彦
リアルタイムスペアナを用いたシンクロトロンのチューンの測定と補正
青木 毅
ランピング時のクロマティシティの測定と補正
深見 健司
8パルス入射試験
鈴木 寛光
蓄積リングにおける真空計の真空度マイナス表示の原因調査
佐伯 宏
アブソーバーのbeam self-cleaning効果の測定
佐伯 宏
COD BPM実機改造前の状態把握のためのスタディ
佐々木茂樹
COD BPMの改造後のフィリング依存性、電流依存性の測定
佐々木茂樹
XBPMとID rf-BPMのリング電流およびフィリングパターン依存性
青柳 秀樹
ビームを用いた蓄積リングBPMの較正
早乙女光一
電磁石初期化の再現性
熊谷 桂子
軌道安定化の試み(1)継続
田中 均
バンチ長測定
中村 剛
水平、垂直ベータトロン振動の結合補正による垂直エミッタンスの下限値
田中 均/石川 哲也
蓄積リングのビーム軌道に対する電磁石冷却水の温度変化の影響
熊谷 桂子
ID23-1周期的位相駆動試験
島田 太平
RFバケットハイトとバンチ純度の相関
田中 均