Volume 04, No.2 Page 44
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第2回SPring-8シンポジウムに参加して
An Impression of the 2nd SPring-8 Symposium
SPring-8の最新情報を的確にかつ効率よく得る機会として、シンポジウムは私にとって大変重要なイベントです。前回(平成10年3月)同様最 初から最後まで参加させて頂きました。年間を通して関連の多くの研究会や委員会が開催されていますが、本会は施設関係者とユーザーが一堂に会する良い機会 です。
本誌「SPring-8利用者情報」誌も毎回目を通していますが、限られた紙面では必ずしも微妙なニュアンスが伝わってこない場合もあります。例えば、蓄積電流が20mAから70mAにアップされたという話を人伝てに聞いても、その性能アップがなかなか実感できませんでした。シンポジウムでは、ビームの安定性の評価やなぜ100mAの運転がすぐにできないのかなど、ユーザーとして関心の高い情報が得られました。前回のシンポジウムで、ビームの安定度を高めて下さいとの要望を出しましたが、そのこたえが今回ビームの安定性の向上(田中氏−JASRI)という結果で示されたので、その対応の速さに驚きました。
シンポジウムのメリットのひとつとして、ユーザーの声が施設側にとって応援歌になる場合もあるのではないかという印象を受けました。
前回から8ヶ月足らずの間に建設計画が大幅に増加したとの報告も驚きのひとつです。補正予算による計画の前倒しは、ユーザーにとっては極めて喜ばしいことかもしれませんが、建設担当者にとっては体力的な問題が生じるのではないかと余計な心配もしています。
特に長尺ビームラインの建設(石川氏−理研)は、夢のような話で、このように早い時期に実現できることになったのは関係者の熱意の賜物でしょう。加えて、30m長直線アンジュレータの建設(北村氏−理研)の予定も早まったことは、コヒーレントX線光学関係者にとっても朗報で、ユーザーの人達も準備を急ぐ必 要があるのではないかと思います。そのほかいくつかの新しいビームラインの順調な立ち上がりの様子が伺えました。
ポスターセッションでは、SPring-8ならではの高エネルギーX線(100keV以上)の利用や超微量元素分析(ヒ素に関する報告は異常な関心を持たれた)、新しいX線光学素子の報告など放射光利用の新しい展開が感じられました。どの発表も出来たてのほやほやの成果ばかりで、発表者の意欲がひしひしと 伝わってきました。
最後の3日目の話題は、今後の方向を示唆するものが多くユーザーのひとりとして関心を持って聞きました。特に、課題選定とマシンタイム配分は実務的には最も悩ましいのではないかと想像されます。半期毎の課題選定には当初戸惑いを覚えましたが、多くのユーザーが、短いサイクルでチャンスを与えられるというメリットもあるのかもしれません。
12月初旬の開催通知を頂いたときは何かの間違いかと思いました。前回の話題との重複を危惧していましたが、実際にはほとんどが新しい情報で実りの多い会議でした。今回は偶然でしょうが、紅葉の季節とぴったりと重なった様で、行き帰りのバスから眺められる山々の紅葉が実に素晴らしく、シンポジウムに参加して二重の楽しみを味わいました。関係者の粋な計らいに感謝いたします。
青木 貞雄 AOKI Sadao
筑波大学 物理工学系
〒305-8573 つくば市天王台1-1-1
TEL:0298-53-5299 FAX:0298-53-5205
e-mail:aoki@kirz.bk.tsukuba.ac.jp