Volume 04, No.1 Pages 33 - 35
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第2回SPring-8シンポジウムについて
From the Executive Committee of the 2nd SPring-8 Symposium
大阪大学大学院 理学研究科 Division of Biological Sciences Graduate School of Science, Osaka University
1997年秋にSPring-8が稼動を始め、それからあまり間を置かずに前回のシンポジウム(1998年3月)が開催されました。それは多くのユーザーにとってはまだ夢を語るシンポジウムであったと思います。しかし今回のシンポジウムは、聞きしに勝る素晴らしいSPring-8の性能を皆が体験してから初めて開催されたものと言えるでしょう。あるいは、第三世代放射光の特徴を使いきるのは容易なことではないことをユーザーの多くが実感してからのものとなりました。
第2回SPring-8 シンポジウム プログラム
日時:平成10年12月2日(水)13:30〜4日(金)12:00
場所:兵庫県立先端科学技術支援センタ−
12月2日(水):施設報告
「はじめに」
13:30〜13:40 あいさつ 松井 純爾(姫工大)
13:40〜14:10 施設全体報告 上坪 宏道(JASRI)
「施設の現状報告(加速器)」
14:10〜14:30 加速器の全体報告 熊谷 教孝(JASRI)
14:30〜15:00 蓄積リングのビーム特性 田中 均(JASRI)
(15:00〜15:30 コーヒーブレーク)
「施設の現状報告(ビームライン)」
15:30〜15:50 全体報告 下村 理(原研)
15:50〜16:10 挿入光源の現状 原 徹(理研)
16:10〜16:30 フロントエンドの現状 高橋 直(JASRI)
16:30〜17:00 光学系の現状 石川 哲也(理研)
17:00〜17:20 高度化計画について 植木 龍夫(JASRI)
(SG会合)
12月3日(木):ビームライン報告
「新ビームライン(1)」
9:00〜9:20 BL29XU(長尺BL) 石川 哲也(理研)
9:20〜9:40 BL19IS(30m長直線BL) 北村 英男(理研)
9:40〜10:00 BL44XU 月原 冨武(阪大)
(10:00〜10:30 コーヒーブレーク)
10:30〜11:00 BL16XU 平井 康晴(日立)
BL16B2 泉 弘一(NEC)
11:00〜11:20 BL11XU 塩飽 秀啓(原研)
11:20〜11:40 BL24XU 篭島 靖(姫工大)
(11:40〜13:30 昼食)
13:30〜16:00 「ポスター・セッション」
「新ビ−ムライン(2)」
16:00〜16:20 BL33B2 大橋 裕二(JASRI)
16:20〜16:40 BL23SU 寺岡 有殿(原研)
16:40〜17:00 BL27SU 金島 岳(阪大)
17:30 バス等でSPring-8レストランへ移動
18:00〜19:30 懇親会
12月4日(金):ビームラインの将来計画
9:00〜9:30 ビームライン利用の展望 菊田 惺志(JASRI)
9:30〜9:50 ビームライン検討委員会報告 佐藤 繁(東北大)
9:50〜10:10 課題選定委員会報告 太田 俊明(東大)
10:10〜10:30 利用者懇談会報告 松井 純爾(姫工大)
(10:30〜10:50 コーヒーブレ−ク)
10:50〜11:10 課題選定とマシンタイム配分 植木 龍夫(JASRI)
11:10〜11:30 ユーザー支援体制 武田 崇(JASRI)
11:30〜11:50 安全管理室から 多田順一郎(JASRI)
11:50〜12:00 その他、質疑応答 渡辺 巌(阪大)
会場ロビーにて
今回のシンポジウムでは、日々その姿を変えるSPring-8について、「今現在、どのビームライン(BL)で何ができるか。解決しなければならない課題は何か。」を主題とすることとしました。どのBLも始めての技術的課題に直面し、いくつもの問題を抱えていたり、あるいはその解決を済ませた経験があるかと思われますが、その様な情報が広くスタッフとユーザーに行き渡ることを念頭においた発表をお願い致しました。
しかし問題は発表件数の多さと分野の広がりです。現在、39ものサブ・グループが活動しています。そして先行して立ち上がった共用BL以外に多くのBLが建設されています。この様な状況をたった2日間の日程で報告するには、もはや口頭発表だけでは不可能です。そこで今回のシンポジウムでは、ポスター発表を主とし、またその内容はよく吟味、選択されたものとなるように、BL担当者、建設責任者、サブ・グループ世話人の方々にお願い致しました。それでもポスター発表は65件もの多数となりました。この様に多数の発表が同時に行われる状況となるとアブストラクトが是非とも必要となります。そこで要旨も書いていただくこととしました。これらは、1、2週間の期限でお願いしたので、担当して下さった方、特にBLごとに取りまとめをして下さった方々には大層ご苦労をかけました。全く短期間に執筆をお願いしたにもかかわらず、どの要旨も内容が充実していたことは有り難いことでした。お蔭さまでSPring-8の現状を概観するのに非常に有効なアブストラクトが参加者に配付されることとなりました。このアブストラクトは評判がよくて、参加人数よりもかなり多くの部数を用意したにもかかわらず不足となり、急ごしらえのコピーを作製しなければならない程でした。(こっそり余分に失敬された方もおられた訳です)
口頭発表では、新規デザインのBLについて10件の報告をお願いしました。いずれも普段見聞きしない珍しい話題に驚かされた人が多かったと思われます。その他、施設の現状や将来計画について上坪所長を始めとして施設の方々に口頭での報告をいただき討論が行われました。私達が日々お世話になっている利用業務部からは武田部長、安全管理については多田室長にユーザー実験に対する支援の現状について報告していただきました。これらの質疑においてはユーザーからは持込薬品の安全管理の簡略化が要望され、施設からは手続等の期限厳守を要望されました。
上坪所長はSPring-8の産業利用を強調されていましたけれども、今回の参加人数250名の中に企業関係の方が多かったことや、口頭発表で産業利用BLの現状を聞いてシンクロトロン放射光が学問の世界にもはや留まってはおらず広く社会に貢献するものとなりつつある実態が明らかとなりました。
今回のシンポジウムで課題として意識されたものはつぎの様なものでありました。
(1)BLの数が多すぎて1日間で全てのBLについての報告を行うことは不可能となりました(施設や各種委員会からの報告があるため2日の期間に1日しかBL報告に使えない)。次回はプログラムの編成あるいは日程について新たな発想が必要となると思われます。
(2)BL担当者が施設から出る時間が取れず、折角のポスター発表に立ち会って下さる姿が少なかったのは残念でした。
(3)今回は全ての発表を依頼によるもののみとしました。これには当然、功罪両面があり、全てのBLの現状をもれなく概観できるものとなった一方、一般ユーザーの自由な発表を封じることとなりました。これも次回の検討課題であると思います。
最後に本シンポジウムのお世話をして下さった方々にお礼を述べさせていただきます。副実行委員長の櫻井吉晴氏(JASRI)には本シンポジウムの全般にわたり奮闘いただきました。特に、各BLの発表の根回しについてはあの広大なSPring-8内ホールを何度も回ってお世話下さいました。会場の設営・受付、コーヒーブレークのお世話、バス、宿舎、懇親会の手配、アブストラクトの印刷などの実務に当たっては八木克仁氏(JASRI)を始め企画調査部に全面的にお世話になりました。ポスター会場では大量のパネルの設営が必要となった訳ですがこれは青柳秀樹氏(JASRI)を始めJASRIの若い方々にお世話になりました。最大の功労者は、本シンポジウムの案内送付から登録・受付等の業務にあたられた佐久間明美氏(利用業務、利用者懇談会事務局)でありました。佐久間氏には連日の残業をいとわずお世話下さった事に心より感謝致します。
渡辺 巌 WATANABE Iwao
大阪大学大学院 理学研究科化学専攻
〒560-0043 豊中市待兼山町1-1
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