Volume 04, No.1 Pages 32 - 33
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
SPring-8シンポジウム開催にあたって
On the 2nd SPring-8 Symposium
SPring-8は「特定放射光施設の共用の促進に関する法律(平成6年10月施行)」によって規定された共同利用施設で、この法律に基づいて「放射光利用研究促進機構」に指定されたJASRIは、SPring-8の共同利用を円滑に進め、優れた成果が上がるように努める義務がある。とくに先端的な実験施設であるSPring-8で、実際の研究に使用されるビームラインや実験ステーションの実体が利用者によく理解され、その能力いっぱいの使い方をされることが大事で、ユーザーの希望に添った改良や高度化が普段になされることが必要である。利用者懇談会とJASRIが共催するSPring-8シンポジウムは、このような情報・意見の交換で重要な役割を果たすであろう。
SPring-8シンポジウムの第1回は平成10年3月に開かれた。第2回は去る12月2、3日に行われ、主に施設全体と光源、ビームライン及び実験ステーションに関する現状と共同利用状況、ビームライン建設計画などが報告された。実験研究の内容は主に1月に開催される放射光学会・合同シンポジウムで発表されることになっている。
施設全体の現状を簡単に報告すると、平成9年10月以来SPring-8は順調に稼動しており、既に16本のビームライン(共同利用ビームライン10、原研及び理研ビームライン各2、R&Dビームライン、兵庫県ビームライン)で実験が行われている。さらに夏期シャットダウン以後に3本のビームラインを立ち上げ調整中で、このほか新しいビームラインの建設も順調に進められている。これらは正規の年次予算だけでなく補正予算によって建設を認められたもので、このうち共同利用ビームラインについて言えば既に20本までが建設作業に入っており、ここ1、2年内に全て稼動する予定である。
共同利用ビームライン及び原研、理研、R&Dビームラインを用いた共同利用実験は既に第3期に入っているが、研究課題申込数は期ごとに増加しており平均採択率は7割弱である。平成9年10月から平成10年7月初めまでのマシン運転時間は3,600時間に達し、そのうち約2,500時間がユーザーに提供されたビームタイムである。この間マシンあるいはビームラインのトラブルで生じたビームロス時間は4%弱で、SPring-8が全体として非常に順調に稼動していることが分かる。これまでの利用状況については当日詳細な報告がなされた。
過去1年間の共同利用運営を通していくつかの問題点が生じてきた。当初なるべく多くの実験を最初から行うために多くのビームラインに複数の実験ステーションを相乗りさせた。そのため各ステーションの実験装置は必ずしも当初計画の全てが設置されてはいない。この点を解決するために、ビームライン高度化として実験装置の増強を年次的に行うことにし本年度から予算を計上した。
次に、独断的な言い方をすると、これまで立ち上がったビームラインでの実験では本来第3世代X線光源の持つ特徴を十分に生かし切っていないように思われる。今後なるべく早い時期に、ビームライン関連の研究開発グループの結成やビームタイムの運用の工夫をして、SPring-8の能力を駆使した実験が行えるようにすべきであろう。また、先端的な実験機器の開発や研究手法の開拓を行う優れた研究チームを施設者側(JASRI)に作ることが必要で、半ば専用的に使えるビームラインや研究費を確保することも強く望まれる。
採択課題に対するビームタイムの配分や専用施設、原研、理研ビームラインとの相互利用など、採択された実験課題を効率的にしかもより優れた成果が得られるように運営する方策の検討も必要である。特定のビームラインを対象にして、これまでとは異なった試行的な運営を行ってみることも考慮している。
上坪副理事長によるSPring-8施設報告
産業基盤技術の開発に貢献することもSPring-8に課せられた重要な使命である。産業界には一般的な共同利用とは異なった利用方式を求める声が多い。そのため課題採択の仕組みや分析サービスの提供、産学協力の構築も含めた利用方式を早急に検討することが望ましい。
以上の問題は最終的には諮問委員会の承認を得なければならないが、その前にユーザーとの意見交換が十分に行われることが必要である。
上坪 宏道 KAMITSUBO Hiromichi
(財)高輝度光科学研究センター 副理事長、放射光研究所 所長
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
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