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Volume 04, No.1 Pages 26 - 29

4. その他のビームライン/OTHER BEAMLINES

原研軟X線BL23SUの現状
Current Status of JAERI Soft X-ray BL23SU

横谷 明徳 YOKOYA Akinari[1]、寺岡 有殿 TERAOKA Yuden[1]、斎藤 祐児 SAITO Yuji[1]、中谷  健 NAKATANI Takeshi[1]、岡根 哲夫 OKANE Tetsuo[1]、島田 太平 SHIMADA Taihei[2]、平松 洋一 HIRAMATSU Yoichi[2]、宮原 義一 MIYAHARA Yoshikazu[2]

[1]日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部 Dept. of Synchrotron Radiation Facilities, JAERI Kansai Research Establishment、[2](財)高輝度光科学研究センター 加速器部門 JASRI Accelerator Division

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1.はじめに
 原研軟X線BL23SUは、可変偏光型アンジュレータを光源とし、直線偏光・円偏光のどちらも利用しながら各種の分光実験を行うためのビームラインである。実験ステーションでは、電子分光、表面光化学、生物応用の3つの大きな利用分野において軟X線領域での実験が予定されている。また本ビームラインの特記すべき特徴は、最下流の実験ステーションが非密封RIが取り扱える専用の建屋(RI棟)に設置される点であり、ここではウラン、トリウム等のアクチナイド化合物の電子状態の研究が行われる。1998年の1月には、挿入光源、ビームラインの各コンポーネントの設置が終了し、同年の2月末に初めてフロントエンドの蛍光スクリーンで直線偏光、円偏光が確認された。挿入光源の磁石列の位相を少しづつシフトするに従って、目前のモニター上の水平偏光の横長の光の像が、徐々に綺麗な円形の像(円偏光)へ、さらには縦長の垂直偏光へと変わって行く様子を初めて見た時の興奮は、今でもつい昨日のことのように思い出される。この後MBSを開けて光学ハッチの放射線漏洩検査を受けた後、挿入光源とビームラインの本格的な調整が開始された。本稿では、1998年11月現在の挿入光源を含めたビームラインの立ち上げ調整の現状を報告する。

2.挿入光源の現状
 BL23SUの可変偏光型アンジュレータ(APPLE Ⅱ型、図1)は、周期長12cm、周期数16で、上下各2列の磁石列の位相を変えることで水平・垂直偏光、円偏光、楕円偏光など任意の偏光を取り出すことができる。真空チェンバーの厚みによる制限から、最小gap値は36mm(水平偏光モードで約280eV)である。この挿入光源は、光源磁石の誤差磁場による電子ビームの軌道への影響および放射光のビーム軸への影響を補正するため、2つのロングコイル及び4つの四極電磁石を持つ。ロングコイルに対する各gap、位相における補正テーブルの作成はほぼ終了し、リングへの影響を最小限に抑えながら直線、円偏光が得られるようになった。 
 
 
 
図1 SPring-8蓄積リングにインストールされた可変偏光型アンジュレータ 
 
 またこの挿入光源は、任意の位相駆動パターンで(最大0.5Hz)左右の円偏光を連続して切り換えることができる。1998年の11月に、リング電流は1mAではあったが連続的な位相のパターン駆動の試験を行った。図2は、0.5Hzでパターン駆動を行った時の、蛍光スクリーン上で観察された光の連続写真である。円偏光から水平偏光を経て、逆位相での円偏光に変化して行く様子がわかる。今後さらに、残りの4台の補正電磁石も用いて、放射光ビームへの光軸調整を含めた試験を続ける予定である。 
 
 
 
図2 0.5Hzで挿入光源を連続パターン駆動を行った際に、Alのフィルターを通した後に蛍光スクリーン上で観測された光の連続写真。円偏光(1)の円形のパワー分布から水平偏光(5)の直線的なパワー分布を経て、逆位相での円偏光(9)に変化して行く様子がわかる。写真(1)から(9)まで変化するのに要する時間は、1秒である。 
 
3.ビームラインの現状
 BL23SUの大きな特徴は、ビームラインが実験ホールとRI棟の二つの建屋にまたがって設置されていることであり、光源から最下流の実験ステーションまでの距離は100mを越える。光学ハッチ、実験ホール内コンポーネント、リング棟RI棟の連結部、RI棟内コンポーネントの各構成部の様子を図3〜図6に示した。これらの機器の内には、RI試料の飛散防止対策のためのいくつかの特殊な機器がある。これらの詳細については既に本誌で紹介されているので、そちらを参照されたい(SPring-8利用者情報、Vol.2,No1,p30)。これまで行ってきた調整試験で判明した、フロントエンド部のアブソーバの動作不良、基準線のずれなどの問題点は、1998年の夏の長期シャットダウンを利用して改良を行った。 
 
 
 
図3 光学ハッチ。2枚の前置集光鏡のチェンバーが設置されている。 
 
 
 
図4 BL23SU(実験ホール側)の全体図。回折格子分光器は、写真のほぼ中央にある。 
 
 
 
図5 蓄積リング建屋とRI棟建屋をつなぐビームパイプ。内部に衝撃波遅延のためのディスクが設置されている。 
 
 
 
図6 RI棟内のビームライン終端。この下流に電子分光関係の実験ステーションが設置される予定。 
 
 本ビームラインでは、分光光学機器としてSPring-8の共用軟X線BL25SUで開発された不等刻線間隔平面回折格子分光器を採用している(図7)。縦方向に関する前置集光については、サージタル集光方法とした。現在、これらの分光系の調整を進めており、エネルギー分解能の測定や光子束の絶対強度評価試験等を行う予定である。 
 
 
 

図7 不等刻線間隔平面回折格子と球面鏡を納めるチェンバー。利用する光子エネルギーに応じて、複数枚の回折格子と球面鏡を使い分けて用いる。 
 
4.実験ステーション
 BL23SUに設置される実験ステーション機器は、上流から表面化学用分光装置、生物応用EPR装置、磁気円偏光二色性装置、光電子分光装置であり、最初のふたつが実験ホール内に、後のふたつがRI棟内に設置される。これらの装置は、1999年の初春頃に搬入され、実験に向けての整備が行われる予定である。
 RI棟ホールは、1998年の7月に安全管理室により放射線管理区域の設定がなされた。ここへの入退室は、実験ホールと同様にIDカードによる。またウラン、トリウムを含む化合物試料がRI棟内で利用できるよう、科学技術庁に対し国際規制物資の取扱いに関する申請を行うための準備が進められている。RI棟内の実験準備室の利用形態についても、安全管理室と協議を進めてきた。将来ここに引き込まれる残りの2本のビームラインも考慮し、RI試料準備室と通常試料を扱う準備室及び機器調整室という区分にし、これらの部屋は3本のビームラインで共通に使用することで、RI試料を用いた実験の安全性を確保して行く予定である。

5.むすび
 BL23SUは、原研の専用ビームラインとして建設・立ち上げが行われている。しかし、JASRI、理研、原研の組織を超えた大勢のSPring-8のスタッフのサポートなしでは、決して存在し得ないビームラインであることをここで特に申し上げたい。1998年の第1サイクルで初めて光を取り出すことができたのは、土壇場でIDの制御を強力にサポートして下さった制御グループのスタッフのお陰である。彼らの協力なしでは、我々は未だに光を出せないでいたかも知れない。アブソーバの改良と基準線の引き直しに伴う機器の調整作業では、フロントエンドグループが知恵を絞り、また夏の停止期間で長期にわたり作業して下さった。RI棟を含めたビームラインの監督官庁への申請は、安全管理室のスタッフが細心の注意を払って行ったため、スムーズに使用許可が得られた。他にもこの紙面ではとうてい書き尽くせないほど、未熟な担当者をフォローして下さった大勢のスタッフのサポートがあった。これらの方々に深く感謝したい。


横谷 明徳 YOKOYA  Akinari
日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0884 FAX:07915-8-0830
e-mail:yokoya@spring8.or.jp


寺岡 有殿 TERAOKA  Yuden

日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0884 FAX:07915-8-0830
e-mail:yteraoka@spring8.or.jp


斎藤 祐児 SAITO  Yuji
日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0839 FAX:07915-8-0830
e-mail:ysaitoh@spring8.or.jp


中谷 健 NAKATANI  Takeshi
日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-2719 FAX:07915-8-0830
e-mail:nakatani@spring8.or.jp


岡根 哲夫 OKANE  Tetsuo
日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0838 FAX:07915-8-0830
e-mail:okanet@spring8.or.jp


島田 太平 SHIMADA  Taihei

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0886 FAX:07915-8-0850
e-mail:shimada@sp8sun.spring8.or.jp


平松 洋一 HIRAMATSU  Yoichi

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 加速器部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0899 FAX:07915-8-0850
e-mail:yoichi@spring8.or.jp


宮原 義一 MIYAHARA  Yoshikazu
(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0872 FAX:07915-8-0850
e-mail:miyahara@sp8sun.spring8.or.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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