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Volume 03, No.6 Pages 52 - 54

6. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

国際ワークショップ「高フラックスX線検出器」
International Workshop on High-flux X-ray Detectors

八木 直人 YAGI Naoto

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 JASRI Research Sector

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 「高フラックスX線検出器に関する国際ワークショップ」は、1998年8月24日から26日に、SPring-8中央管理棟講堂で開かれた。本ワークショップの目的は、高輝度放射光の高フラックスX線の計測に適したX線検出器の開発の現状を調査することにあった。主としてイメージングタイプの二次元検出器に焦点が当てられた。

 講演者とその講演タイトルは次のとおりである。
菊田 惺志(SPring-8/JASRI)
 Introduction to the SPring-8 Facility           
八木 直人(SPring-8/JASRI)
 High Flux Beamlines and X-ray Detectors at SPring-8
鈴木 昌世(SPring-8/JASRI)
 Development of a Multiple CCD X-ray Detector at SPring-8                
越智 敦彦(Tokyo Institute of Technology)
 Development of MicroStrip Gas Chamber for Novel X-ray Imaging Research
佐藤 一道(SPring-8/理研)
 The Behaviour of Ionization Chambers under the Injection of High Flux X-ray Beam                            
R. Lewis(CLRC Daresbury Laboratory, England)
 RAPID X-ray Detector                    
中山 博史 (名古屋大学)
 Micro-Gap Wire Chamber                  
B. Tolochko(Institute of Solid State Chemistry, Novosibirsk, Russia)
 Gas Detectors at SSRC                   
G. Rossi(Cornell University, USA)
 A Pixel Array Detector for Time-Resolved X-ray Diffraction
P. Datte(University of California, San Diego, USA)
An Overview of the Digital Pixel Array Detector (DPAD)
岸本 俊二(高エネルギー加速器研究機構 物質構造研究所)
 Fast X-ray Detectors using Multi-element APDs
黒田 啓一(CERN, Switzerland)
 Digital Radiation Imager
大柳 宏之(電子技術総合研究所)
 Detector Development for Rapid and Sensitive XAFS using High Brilliance Photon Sources
雨宮 慶幸(東京大学)
 X-ray Area Detectors coupled with Image Intensifier for Diffraction Experiments
M. Thoms(University of Erlagen, Germany)
 Fast Image Plate Reader                 
R. Hamlin(Area Detector Systems Corporation, USA)
 A Mosaic CCD for Protein Crystallography

 ワークショップの最後に、それぞれの検出器について特長や放射光実験での利用法についてのまとめを行った。下にその要約を記すので、放射光利用者には是非参考にしていただきたい。特に開発途中の検出器の場合には、放射光利用者と開発者とのコミュニケーションが必要な場合が多く、利用者側からの希望の有無が検出器開発の将来を左右すると思われる。

1.CCD検出器

 CCDは画像検出器として多くの用途に広く使われている。CCDを大きく分けると冷却して高いS/Nを実現したものと、高速読み出し可能なものの二種類がある。CCDを利用したX線検出器にはいくつか種類があるが、本ワークショップで取り上げられた主なものとして、以下の二つがあった。

1)テーパード光ファイバーを接続したCCDから構成されたアレイ型検出器[鈴木、雨宮、Hamlin]
 蛍光体でX線が発生した光をテーパード光ファイバーを用いてCCDに伝えるタイプの検出器で、検出面を広くするために四角い光ファイバーを縦横に並べてアレイとして使用することが多い。この種の検出器は、SPring-8では理研ビームライン(BL45XU PX)向けに4×4のアレイが開発されている[鈴木]ほか、フォトンファクトリーでも2×2のものが開発されている[雨宮]。これまでに商品化されている中では、もっとも普及しているのはADSC社のものである[Hamlin]が、Oxford Instruments社やBruker社からも製品が出ている。また、アレイ型でなくCCD一つのものとしてはMAR社のものがあり、普及度は高い。
 CCD検出器には、取り込みが速いという特長があり、数100万から1000万以上のピクセルを数秒で取り込める。検出面の大きさは10から20㎝角が普通である。また、製品として販売されているものはもっぱらタンパク質結晶構造解析に用途を絞っているため、ソフトウェアを含めて完成度が高いという特長を持っている[Hamlin]。もちろん、粉末回折や小角散乱実験、イメージング実験等でも利用できる。

(2)X線イメージインテンシファイアと組み合わせたCCD検出器[八木、雨宮]
 X線イメージインテンシファイア(X−II)は、入射面のX線強度分布を増幅して可視光に変換して出力するので、それをCCDで観察するのがこのタイプの検出器である。増幅機能のおかげで、高いDQE(detective quantum efficiency)を持っている。そのため、弱い反射の観察や、ミリ秒オーダーの時分割実験が可能であるほか、X−IIのゲート機能を利用したマイクロ秒の実験も可能である。
 X−IIの入力面は直径15〜25㎝であるが、湾曲しているために斜め入射の影響が大きく、小角散乱のようにビームが平行に近い角度で入射する実験に最も適している。これまでのところ、筋肉・溶液散乱などの生物系の時分割実験[八木]や高分子の散乱・回折実験[雨宮]に用いられている。
 これらの他に、SPring-8で開発・使用されている蛍光板とCCDをレンズで組み合わせた検出器も紹介された[八木]。20ミクロン程度の分解能を持っており、主としてビーム診断やイメージング実験に使用されている。 
 
2.イメージングプレート[Thoms]
 イメージングプレートは現在最も広く使用されている二次元X線検出器で、SPring-8でもリガク社のRAXIS−IVが多数使用されているほか、大型イメージングプレートの自動読み取り機も開発中である(BL41XU)。大きなプレートを使用すれば大検出面が得られるという特長があり、BL41XUでは40×80㎝のプレートが使用されている。SPring-8には、リガク社のオフラインの読み取り装置も3台あり、ビームライン共通機器として使用できる。
 イメージングプレートの最大の欠点は読み取りに時間がかかることであるが、本ワークショップではポリゴンミラーを用いた、毎秒150万ピクセルという超高速読み取り機の紹介があった[Thoms]。25×30㎝のプレートを80ミクロン分解能で、9秒で読めてしまうという。イメージングプレートは画像を読み出した後に再使用するには可視光を照射して消去を行う必要があるが、それも強力なランプを使用して3秒で済ましてしまう。この読み取り機はESRFのID30に設置されて安定した性能を示しているというが、商業ベースでの販売は無い。

3.ガス検出器[越智、Lewis、中山、Tolochko]
 ガス検出器は一つ一つのX線フォトンを数えるので、放射光のような強いX線に使用するには一般に難があり、CCDやイメージングプレートのような積分型の検出器(X線フォトンをアナログ信号として蓄積して一括して読み出すタイプの検出器)のほうが高フラックスの放射光実験には適していると考えられる。しかし、本ワークショップではマイクロギャップ型[Lewis、中山]とマイクロストリップ型[越智]という高速計数の可能なガス検出器の紹介があった。特に英国のマイクロギャップ型[Lewis]では毎秒1000万を越すフォトンを処理できる。X線フォトンをひとつひとつ計測するsingle photon countingタイプの検出器であるため、原理的に時間分解能はマイクロ秒以上に達する。また、デジタル的にフォトンを計数するのでノイズがなく、測定を何度も繰り返して結果を加算する場合には最適である。入力面も20㎝角まで広げたものがあり[Lewis]、斜め入射による空間分解能の低下も一次元の検出器であれば湾曲させることによって解決できる[Tolochko]。回折実験一般、特に小角散乱などの時分割実験に最適であると考えられる。これらの高性能ガス検出器は、放射光や高エネルギー実験での開発プロジェクトとして作られたため商業的なものではないが、企業を通して購入できるものもある。マイクロストリップ型検出器は、BL45XUの小角散乱実験を目標として開発された。
 また、ノボシビルスクで開発した一次元のイオンチェンバーの紹介もあった[Tolochko]。これは積分型の検出器なので、非常に強いX線の計測が高い時間分解能で行える。医療用の検出器として数100台製作されているという。

4.ピクセルアレイ検出器[Rossi、Datte]
 ピクセルアレイ検出器(PAD)は、150ミクロン角程度の小さな半導体検出器を敷き詰めた新しいタイプのX線画像検出器である。数年前から研究が始まり、現在は100×100素子程度のものまで開発が進んでいる[Rossi]。各素子が独立に動作するので、検出器全体として計測できるフォトン数は非常に高い。また時間分解能も高い。
 読み出しには二つの方式がある。一つはデジタル方式(DPAD)で、各X線フォトンを独立のパルスとして計測する[Datte]。原理的にはパルスの高さを測定してエネルギー分解能を持たせることも可能である。この方式の検出器は、タンパク質結晶解析用の検出器として開発が英米で進んでいる。
 もう一つの方式はアナログ的に電流としてX線強度を読む方式で、高い時間分解能で強いX線を計測する実験に適しており、現在はタンパク質結晶の白色ラウエ回折実験でテストされている[Rossi]。
 PADはまだ開発途中であり、一般の放射光利用者が使用できるようになるにはまだ数年はかかりそうである。

5.アバランシェフォトダイオード[岸本]
 アバランシェフォトダイオード(APD)は、パルスカウンティング型の検出器としてはもっとも多くのフォトン(毎秒1億フォトン以上)を計測できる。これは高い時間分解能(ナノ秒)を持っていることを意味し、そのため核共鳴散乱の実験に使われている(BL09XU)。一つの素子の厚みは120ミクロンほどで検出効率が低いため、4つの素子を重ねた検出器が開発されている。さらにAPD素子を16×2に並べた32素子検出器も開発されているが、増幅器の小型化が難しいため素子数をこれ以上多くするのは現状では困難である。
 APDは明確な特長を持った検出器であり、それを生かした回折実験なども考えられる。現在日本で使われているAPDは浜松ホトニクス社製である。

6.ファイバーイメージング検出器[黒田]
 これは本ワークショップで初めて紹介されたX線検出器である。蛍光体を、直角方向に並べた二組のシンチレーションファイバーで上下から挟んだ構造をしている。X線が蛍光体で発した光を、その上下のシンチレーションファイバーで受けてファイバーの端のフォトマルで検出する。各ファイバーが独立したシンチレーションカウンタとして動作するので、大量のX線フォトンを計測することが可能なため、時間分解能も高い。検出面もファイバーの数を増やせば大きくできる。空間分解能はファイバーの太さで決まるが、0.2㎜まで上げられると考えられる。
 ファイバーが蛍光体の入射面側にもあるため、低エネルギーのX線では吸収が生じて計数効率が下がるが、30keV以上のX線に対しては効率が高く、高いエネルギーのX線を用いた回折実験などに適していると考えられる。
 本検出器は現在開発途中であるが、放射光利用者からの要望があって予算的裏付けが可能ならば、20㎝角程度の大きさのものを1年半以内に開発可能である。

7.半導体検出器[大柳]
 本ワークショップでは、BL10XU向けに開発された100素子の半導体検出器の現状が報告された。Ge素子を用いてエネルギー分解能212eV(@5.9keV)が達成されており、もうすぐ実験に使用される。素子数が多いので多くのフォトンを計測でき、従来よりも効率の良いデータ収集が行える。
 開発の用途は希薄濃度の試料を対象としたXAFSやDAFSであるが、蛍光X線分析などスペクトルの測定を要する実験では広く利用できるであろう。この検出器は商業ベースで扱われている。



八木 直人 YAGI   Naoto

(Vol.3,No.5,P23)



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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