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Volume 03, No.6 Pages 1 - 6

1. ハイライト/HIGHLIGHT

SPring-8供用開始1年を振り返って
A Meeting : After a Year from the Start of SPring-8 Research Activities

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司会:「SPring-8供用を開始して、この10月で早や1年になります。そこで本日はSPring-8の各共用ビームライン担当者の皆様にお集まりいただき、この1年を振り返り、担当者としての苦労話や反省点、あるいは利用者(ユーザー)へのご意見など、忌憚のないお話を伺おうということで座談会を開かせていただくこととなりました。」

A氏:「あのー、ひとつ質問があるのですが…」

司会:「おやAさん、何でしょうか? どうぞ。」

A氏:「この座談会に参加させていただいたのは嬉しいのですが、誰が発言したかというような名前が出てしまうのですか?」

司会:「と、言いますと…?」

A氏:「いやー、あまり大きい声では言えないようなこともありますので、そのー…」

司会:「解りました。では、発言者のお名前は匿名と言うことにさせていただきますので、できるだけ生々しいお話をお聞かせ下さい。」
(参加者一同から安堵の声が漏れる)

司会:「では、始めさせていただきましょうか。SPring-8は昨年10月に供用を開始し、本年7月までの間に運転時間として約3,500時間、放射光利用時間(ビームタイム)として約2,500時間、延べにして約370件の利用課題と、延べ1,500名を超えるユーザーの方に利用して頂きました。この間、ビームライン担当者の皆さん方はいろいろな苦労があったと思いますが、その辺りからお話をお聞かせ頂けますでしょうか。」

B氏:「ビームライン担当者としては、もし担当ビームラインに何かあれば真っ先に対処しなければならない訳で、昼間だろうと夜中だろうとユーザーから呼び出されることがあります。これが結構きついですね。」

C氏:「私もハッチの扉が閉まらないということで、夜中というか明け方の4時に呼び出しを受けました。すわ何事ぞ、と必死で駆けつけて見ると、何のことはないマニュアルロックがはずれていただけだったんです。」

A氏:「夜中の呼び出しといえば、ユーザーの利用期間ではなかったのですが、ビームライン冷却系からの水漏れがあり、日曜だったもので気づくのが遅れて実験ホールの床に広範囲に広がってしまったことがありました。その処置と対策に電話で呼び出されましたが、丁度NHKの大河ドラマ、毛利元就を見ていたときだったので『殿、水攻めでございます。ご出陣を!』『ええーい、馬ひけー』とばかりに家を飛び出してきましたよ。」(周囲爆笑)

H氏:「水の他には電気でも苦労しました。電気地絡が何度か発生したのですが、大学などでの研究に慣れているユーザーはあまり地絡を気にしないのです。でも、SPring-8のような大きな装置になると、施設管理部門から注意されます。そして原因を発生させたユーザーに始末書を書いてもらわなければならないんですが、書いてもらうのに文句を言われましたね。」

司会:「ユーザーからの文句は直接ビームライン担当者に行くんですよね。」

A氏:「まー、そうなってはいますけど、基本的には文句は言わせませんね。」

F氏:「Aさん、それはあなたが担当だからですよ。」

E氏:「そうですよ、私なんかは学生時代から大変お世話になっている方がユーザーとして来たりして、もう、ややこしいというか、やりづらいというか大変なんですよ。解っていただけます?」
(一同、大いにうなずく)

司会:「なるほど、装置の様子ばかりでなく、いろいろと人間関係などでもご苦労がお有りのようですね。」

D氏:「装置のトラブルは簡単に直るけれど、人間関係でユーザーと一度トラブルを起こしたら、それは簡単には修復できませんからね。」
(一同、再び大いにうなずく)

司会:「ちょっと話が深刻になってきてしまいましたね。では、文句とまでは言えないけれど、ユーザーからぶつぶつと不満のような話は出ませんか」

H氏:「私が担当しているビームラインは、使用開始前からしばしば『いやーこのビームラインはすごいぞ、とても明るいぞ』と設計者が言いふらしていたものですから、ユーザーが思いっきり期待してしまって…。実際に使ってみるとこれが思っていたほどではない。いや、他の放射光施設に比べれば充分明るいんですが、期待があまりにも大きすぎたのでユーザーが納得してくれず、『もっと明るくならないのか』と不満の声が出たりしました。」

E氏:「私は全く反対ですね。私の担当ビームラインは『まーそれほどでもないから、あんまり期待しないでね』とあらかじめ言っておいたら、ユーザーがSPring-8に来て使ってみると『凄いじゃないか、これはすばらしい!』と驚嘆の声が上がったんです。ですから私もここぞとばかりに『こりゃ世界的な成果だ、いまここでがんばらなきゃ、どこでがんばるんだ!』と、励まして成果を出したことがありますよ」

司会:「担当者の戦略の差といったところですね。SPring-8の装置としての性能というか、調子はどうなのでしょう。」

F氏:「SPring-8は、これだけ大規模な装置にしては非常に安定的に稼働しているのではないでしょうか。ビームタイム中に電子ビームがダウンした時間は、トータルで2%くらいのものですから。」

司会:「でも、たまたまその2%に当たってしまうユーザーがいるわけですよね。そのユーザーから文句は出ませんか?」

I氏:「利用にあたっては、ダウンした時間は保証しないと書いてあるんですけど。」

H氏:「書いてあっても文句がきます。それがユーザーのユーザーたるところですね。」

B氏:「心情的には何とかリカバーしてあげたいのですが、ビームタイムは全く余裕なくユーザーに割り当てられているので、どうしようもないんですよ。」

A氏:「君は甘いな〜。リカバーなんか考えなくてもいいんだよ。加速器の場合ビームが落ちるとかいう問題は、天変地異みたいなもので神の領域の話なんだから。自分の割り当てられた時間にビームがどうなるかなんてことは、神のみぞ知るところなんだよ! 人の力ではどうしようもない。」

G氏:「解るっ!! そうだ、神の領域だ! もはや人智はここに及ばない。」

司会:「Gさん、あまり興奮しないでください。しかしだんだん過激な発言が出て、楽しくなってきましたね〜。ユーザーとの対応で困ったことは何かありますか。」

F氏:「困った訳ではないんですけど、私宛の電子メールで『SPring-8に就職したいんですが、どうしたらいいでしょう?』って。私はビームライン担当者であって、人事担当者ではない!」

H氏:「困ったユーザーとして、ビームシャッターの操作キーをポケットに入れたまま、SPring-8から帰ってしまって、だいぶ高速道路を走った後で気づいて、サービスエリアから『どうしましょう』って電話をかけてきた人がいましたね。」(笑い)

司会:「で、どうしました?」

H氏:「当然、直ちにSPring-8まで戻ってきていただきました。」(笑い)
B氏:「長時間の実験で疲れたのでしょうか、実験ホールに置いてあるリヤカーの中で寝てしまっている人がいました。これも困ったですね。すぐに起こしたんですけど、本人はゆらゆらと船に乗っているようで気持ちよかったと言っていましたよ。」

G氏:「実験ホールにソファーを置いて欲しいという要望がかなりありますが、もし置くとユーザーはそこをねぐらにしかねませんからね。安全管理室からも置いてくれるなと言われています。」

C氏:「実験ホールで寝てはいけないんだけど、気を失っているんじゃないかというようなユーザーもいますね。」(笑い)

司会:「SPring-8のメンバーは、特に利用系やビームライン担当者の皆さんは若いですよね。平均年齢は30歳代前半ではないですか。」

A氏:「私を含め、それだけ優秀な人が多いのでしょうね。」(一同沈黙)

D氏:「いや、私はだまされてSPring-8に来てしまったというか…」(笑い)

司会:「ところでその若い方達が中心になって、SPring-8運転中は中央制御室にビームライン当番と言われる方が交代で詰めていて、加速器の運転員の方などとの連絡を取っていますよね。ビームライン担当者はビームライン当番を免除されるのですか?」
(一斉に「とんでもない」との大合唱とブーイング。司会者に詰め寄る担当者も現れる。)

司会:「しっ、失礼しました。軽率な発言をお許し下さい。いやー、ユーザーの対応もしながらビームライン当番もこなす。ビームライン担当者って本当に大変なんですね。」

A氏:「そうですね、特に中央制御室でのビームライン当番の苦労たるや、並大抵のものではありません。若い人たちにとっては、『人生の学校』といったところでしょうか。」

司会:「いろいろと大変そうですね。ところでユーザーの相手とビームライン当番では、どちらが大変ですか?」

全員:(声を揃えて一斉に)「ユーザーの相手!」

司会:「え〜、そうですか! それほどユーザーの相手は大変なんですか? 特に相手が大変なビームラインはどのあたりですか?」

某氏:「それは、××××…」

某氏:「いや、やっぱり××が××の××…」
(残念ながら、あまりにも内容が恐ろしくて、本誌上でご披露することができない発言が多数の方から次々とありました。ご容赦の上、内容をご想像下さい。)

司会:「いや〜、そうですか。なるほど大変だ。私も今日、認識を新たにしました。
ところでユーザーとの窓口といえば、この『SPring-8利用者情報』を発行している利用業務部ですが、これまでにユーザーとの対応で、なにか、つらい思いをしていませんか?」

I氏:「そんな、つらいだなんて。ユーザーあってのSPring-8ですから、もう皆さんのご要望には最大限対処するよう努力している利用業務部です。」
(周囲から、やんやの喝采)

B氏:「ビームライン担当者も、各運転サイクルが終了するとみんなで集まって問題点などを検討して、次のサイクルやユーザーの要請に生かせるようしています。」

F氏:「各ユーザーが提出する『ビームタイム利用報告書』に書かれた問題点や要請事項のうち、技術的な点はビームライン担当者が、そしてそれ以外の点は利用業務部に検討してもらってます。」

司会:「なるほど。技術的な点よりは、それ以外の方がおもしろそうですね。例えば食う寝るところに住むところ、食堂と研究交流施設(ゲストハウス)についてのユーザーからの要請はどうですか? 食堂の味やメニューについてのユーザーの評判は?」

I氏:「食堂については、皆さん味とかには概ね満足されているようですよ。ただ、食べたいものが早くなくなってしまうという事はあるようです。それと食堂の営業時間延長の希望は強いですね。ただ、要望の実現にはお金が必要で、限られた予算内で私たちも精一杯努力しているということを解っていただきたいです。それからゲストハウスについても、みなさん満足されているようですが、中には風呂で体を洗うためのイスを置いてくれという要望があったりしました。」

司会:「とんでもない要望ですね。」

A氏:「いや〜、解るよ。日本人なら日本式の風呂の入り方をしたいんだよ。」

E氏:「どうしてもそうしたいなら、自分でイスを持ってこいと言ったら?」

I氏:「止めて下さい。冗談だと思わずに本当に持ってくるユーザーが必ずいますから。」

B氏:「三日月町には温泉もありますから、そちらを利用されるといいんじゃないですか」

司会:「扱いにくいユーザーの方って、やっぱりいますか?」

G氏:「書類を出すのが遅いようなユーザーはやっぱりユーザーとしても扱いにくいし、電話の応対が横柄な人は、SPring-8へ来ても横柄だと…」(これをお読みのユーザーの方、あなたのことですよ!)

I氏:「そういうユーザーの方は、利用業務部の秘密ファイルに名前が載っています。」

司会:「是非、拝見させていただきたいものですね。」

I氏:「残念ながら企業秘密になっています。」

H氏:「利用業務部で外国人の方への対応は?」

I氏:「外国人の方はとりあえず何でも要求してみよう、通ればラッキー、という感じで申し込まれる方が多くて。」
司会:「どんな要求がありました?」

I氏:「家族も一緒に行きたいからそのビザも出してくれとか、ベジタリアンだから鍋、釜を持っていきたいとか、長期滞在中の宿泊費を全額出してくれとか、それはもうとんでもない要求があったりしますよ。」

F氏:「学会で日本に行くから、その間にビームタイムを確保しておいてくれ、なんていう要求も平然としてきますね。」

司会:「でも、とりあえず要求してみようと言うのは外国人のユーザーばかりではないんでしょう?」
(「その通り」とあちらこちらで叫ぶ者あり)

司会:「そんなユーザーに、これだけはやめて欲しいといった要望はありますか。」

G氏:「対応が大変だから、もう来ないで欲しい。」(一同、大爆笑)

H氏:「私たちは担当者なのですから、ユーザーの皆さんは正直に何でも言って欲しいですね。モノを壊すなとはいいません。間違いや手違いはいろいろある訳ですから。でも、もし壊したら正直に言って下さい。黙って帰らないで下さい! 次に来たユーザーから『動かないんですけど』と言われて、初めて壊れているのが解ったりしたことがありました。」

F氏:「ゴミは持ち帰って下さい。紙屑みたいなモノはいいんですけど、中には得体の知れないモノがあったりして…。」

司会:「どのようなものですか?」

F氏:「なにか、粘土で作った人形のようなものがビームラインハッチに貼り付けられたままになっていて、外していいものやら、捨てていいものやら解らなくて本当に困りました。おまけにその人形には某氏の名前が書いてあったりするんですよ!」
(「呪いの人形じゃねーか」、との声と笑いが周囲から上がる)

司会:「気味が悪いですね。他には何かありますか。」
D氏:「学会などの発表で『私のビームライン』とか『我々のビームライン』とか言うのは止めていただきたいですね。反感を買います。間違いなく!」

E氏:「実際にはほとんど何もしていない方が、いざ成果が出始めると『俺が作ったビームラインだ』とか言っている人もいますね。」

司会:「皆さんの語気がだんだん荒くなってきたように感じます…」

B氏:「SPring-8は、二重三重に安全対策を行っていますが、強力なX線発生装置だという事を忘れないで下さい。ユーザーの中には慢心から安全に対する認識が薄くなってきている人がいます。」

司会:「そうですね。SPring-8は、建設着工からここまで無事故で来ています。この先も決して事故を起こさないように心がけることは重要ですね。」

A氏:「もし何か事故でもあれば、2ヶ月や3ヶ月は装置が停止してしまいますよ。そんなことになったら、全てのユーザーが困りますね。」

司会:「ではこれまでとは反対に、ユーザーから感謝されたことはありますか?」
(またもや全員一斉に、間髪入れず「ない!」の大合唱)

G氏:「これだけは言わせて下さい。未だかつて、自分の利用時間が終了した後で中央制御室に来て『どうもありがとうございました』って言ってくれたユーザーは一人もいませんよ。いわんやビームライン担当者をや、ですよ!」

H氏:「でも、ビームラインのチャットでは、ありがとうございました、お陰でいいデータが取れましたって書いてあったことがあるよ。」

F氏:「研究者はみんな恥ずかしがりやなんだよ。だから心の中では本当に感謝していても、面と向かっては言えないんだよ。メールとかには書けるけどさ。」

司会:
「ところで、ユーザーの方はSPring-8の利用に満足されているのでしょうか?」

B氏:
「ユーザーは、どうしても某筑波研究所の装置と比較して話をされる方が多いですね。ですから相対的な比較と言うことになるんでしょうけど、いい方向に行っているんじゃないでしょうか。」

E氏:
「そうかな? あっちの方がいいって言ってるユーザーもいるぜ。」

H氏:「うん、SPring-8もいいけど、期待していたほどじゃないって…」

F氏:
「それは、あなたが担当のビームラインの宣伝の問題じゃないの?」

G氏:「そういう人は他の施設へどうぞ。」

I氏:
「SPring-8はSPring-8なのだから、他の施設と比較して云々というのは、そろそろ止めにして欲しいですね。」

司会:「では、これはユーザーのお陰だったとか、助けられたこととかありますか?」

A氏:
「あんまり無いな。」

G氏:「でも、ユーザーが来ないとさみしい…」

F氏:「さっき『大変だから、もうこないで欲しい』っていってたくせに!」(笑い)

D氏:
「いい論文がでてくれば、『有り難う』という気にはなるよね。」
(一同、大いにうなずく)

C氏:
「そうですね、いい成果がでれば新聞やテレビに取り上げられ、担当者の私が新聞に出たりテレビに映る機会があるかもしれないし。」

G氏:
「そうだなあ。君は前回、テレビが取材に来るからって折角メーキャップまでしたのに、胴体しか映らなかったもんな。」(爆笑)

司会:
「では最後に、担当者として今後ビームラインをこうしていきたい、あるいはユーザーにこうして欲しいと言った希望はありますか。」

B氏:「科学者が評価されるのは論文の質と数です。どんどんいい利用をして、いい研究成果を次々と出していって欲しいですね。」

C氏:「女性のユーザーにもっと利用して欲しいです。」

G氏:「君はミス・インターナショナル・日本代表や、ミス・フレッシュ東海といった人が見学に来ると、必ず並んで写真撮ってもらってるじゃないか!」

I氏:「美女と野獣よね。」

C氏:「Iさん、何かおっしゃいました?」

A氏:
「たとえば生物関係分野のように、女性ユーザーの多い分野って、今後伸びてゆきそうな気がするよね。」

H氏:「私は、恩師の言われるがままに、何でもやります。」(笑い)

D氏:「ユーザーを増やしていきたい。」

H氏:「へー、私の担当ビームラインはユーザーを減らして欲しいですよ。SPring-8運転中はほとんど休みを取れずに働いていますからね。」
E氏:「ビームラインを調整する時間が欲しい。利用していただきたいのは山々なのですが、もう少し調整すればもっと利用しやすくなると思います。」

F氏:
「SPring-8では、やる気があれば何でもできます。例えば実験ハッチに入っている装置を全部入れ替えれば、全く違う研究ができるんです。だからユーザーにもっとがんばって欲しいし、やる気のあるユーザーは大歓迎です。」

I氏:「そうですね。利用したら是非いい成果を出して欲しいですね。それから、いろいろな手続は大変かもしれませんが、是非ご協力下さい。申請書を早く出すユーザーは報告書も早く出すという統計がありますから、企業秘密ファイルに名前を記載されないよう気をつけてくださいね。」

G氏:
「ユーザーはビームライン担当者に頼らずに独立して欲しいね。」

H氏:「ビームライン担当者を代わって欲しいです。」(笑い)

A氏:「そう、これだけは言いたい。ビームライン担当者は消耗品です…。」(大爆笑)

司会:
「今日はいろいろご意見を頂き、有り難うございました。今後もSPring-8のため、ビームラインのため、皆さんがんばってください。」
 



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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