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Volume 03, No.5 Pages 27 - 29

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第12回ロシア放射光会議に出席して
On Participating in the 12th Russia Synchrotron Radiation Conference

菊田 惺志 KIKUTA Seishi、原 雅弘 HARA Masahiro

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 JASRI Research Sector

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 7月13日から18日までロシアのノボシビルスクで第12回ロシア放射光会議が開かれ、SPring-8から私たち二人が招待されて出席した。この会議は1975年にノボシビルスクで第1回が開かれて以来、2年毎に開かれてきた放射光に関するロシア国内の会議であり、今回はその25周年の記念すべき会議であり、かつシベリア放射光センター(SSRC)が設置されたブドカー研究所(Budker Institute of Nuclear Physics, BINP)で放射光が用いられてから25年にあたる記念大会ともなる。
 会議は招待講演と一般講演があり、口頭発表とポスター発表とに分けて発表された。プログラムは以下のように分類されていた。
 1. 各放射光施設での現状報告、レビュー
 2. 放射光光源と自由電子レーザー
 3. 放射光の応用(物理、化学、触媒、生態学、生物学、医学、地質学、その他)
 4. 放射光の応用(マイクロリソグラフィー、マイクロメカニクス)
 5. X線光学とX線検出器
 6. 放射光装置技術
このほかに最終日7月18日には「高出力自由電子レーザーとその応用(High-power free electron lasers and their application)」と「放射光を用いた低速高強度陽電子ビームの生成(Generation of intense beams of slow positrons with the help of SR)」のサテライト会議が開かれた。参加者は206人で、うち外国からの参加者は14人であり、68の口頭発表、130のポスター発表がなされた。日本からはSPring-8からの2人の他に原研から峰原氏、阪大から磯山氏、川崎重工から岩田氏、奥氏の4人が参加した。他には韓国、ドイツ(BESSYII, ANKA)、フランス(ESRF)、イタリア(ELETTRA)、米国(IBM, Duke)からの参加者があり、国内の会議にしては外国からの参加者が比較的多いように思えた。
 
 
 
写真1 開会式で挨拶をするBINP 所長Skrinsky 氏。写真左側はKulipanov氏。 
 
 月曜の午後から会議が始まり、講演はロシア語と英語で行われ、同時通訳がなされた。Kulipanov氏 (BINP)の「ロシアにおける放射光(過去、現在、未来)」が最初の講演であった。この後、V.F.Pindyurin(BINP)「BINP のX線リソグラフィーにおけるアクティビティ」、A.N.Artemiev(Kurchatov)「Kurchatov放射光源の現状」、D.Einfeld(Karlsruhe)「放射光光源 ANKA」、M.Hara(SPring-8)「SPring-8 蓄積リングの現状」、M.V.Kovalchuk(I. Crystallography)「放射光—X線結晶学発展の基礎」、S.Kikuta(SPring-8)「SPring-8における最初の成果」、D.Richter(Bessy II)「BESSYIIの現状」と発表が行われて初日の講演は終わり、その後食堂で歓迎会が開かれた。
 引き続き会議が1週間開かれた。ロシアでの放射光関連の研究は、BINPの蓄積リングVEPP-2M、VEPP-3とVEPP-4の利用によって行われており、初期の先駆的な研究以来、その歴史は長く、今回の会議の講演も質・量ともにかなりのレベルにあるようである。BINPのSSRCはG.N.Kulipanov 氏の強いリーダーシップのもとで、とくに機器開発で新機軸を出そうとしているのが印象的であった。 
 
 
  
写真2 BINP の蓄積リングVEPP-3の偏向電磁石。ここの加速器は常識に反して(?)天井に取り付けてあり下からの加速器への Accessibility がよい。 
  
 会議の合間にBINPの見学をした。ロシアにおける加速器の製作を一手に引き受け、最近ではモスクワのクルチャトフ研究所(Kurchatov Institute)のKSRSリングを建設している。諸外国の放射光施設から加速器関連機器の製作を多数依頼されているということであった。高エネルギー物理の検出器グループは巨大なシダー(杉)と呼ばれる検出器を製作中であったが、一方でその力量を生かして放射光用検出器にも協力していた。高性能の1次元および2次元の比例計数管方式の検出器が専門の技術者によって所内で製作されており、そのポテンシャルの深さを感じた。また超電導ウイグラーについてその試験的な運転や製作場所、磁場測定などを見学した。超電導技術もロシアは進んでいるように見えた。鉱物学・岩石学研究所、(Institute of Mineralogy and Petrography)も訪ね、ダイヤモンド結晶の育成装置を見学した。二重のアンビルと油圧で圧力を発生させ、温度勾配のもとで 2.5カラットまでのダイヤモンドを育成している。X線分光結晶としては若干小さめであるが、かなり良質である。 
 
 

 写真3 ダイヤモンドの結晶を成長させる高圧の育成装置。内部を見るために上部のフタを開けたところ。 
 
 なお会議に参加していたモスクワの結晶学研究所(Institute of Crystallography)の所長 M.V.Kovalchuk氏と研究協力について話し合った。クルチャトフ研究所の放射光リング利用の主要な部分を結晶学研究所が面倒を見るので、今後ロシアにおける放射光利用研究の一方の旗頭としての役割を果たすと思われ、効果的な協力関係が期待できる。マイクロエレクトロニクス技術・高純度物質研究所(Institute of Microelectronics Technology and High Purity Materials)の所長 V.V.Aristov氏とはX線光学素子の開発についての協力の具体的な進め方を話し合った。この研究所はブラッグ・フレネル素子を始めとする各種の微細加工を施した素子の作成に優れた技術を持っており、レベルの高い協同研究が実施できると思われる。
 最後の日の2つのサテライト会議では、ロシア、日本、米国の自由電子レーザーの現状についての報告がいくつかなされた。陽電子の生成については陽電子ビームの利用についての研究のレビュー、理研・ブドカーの共同研究によるプロジェクトの話、マルチワイヤーを用いた陽電子減速器の設計の話が報告された。
 このあと、食堂でバンケットが開かれ、食事やダンス、ロシア民謡などを楽しんだ。
 連日暑い日が続き、もともと冷房施設のない研究所での会議は、疲労気味であったが、内容的には実りが多かったと思う。 
 

 
 

写真4 バンケットにおけるロシア民謡で場の雰囲気が大いに盛り上がった。 
 

原 雅弘 HARA  Masahiro
(Vol.3,No.5,P26)


菊田 惺志 KIKUTA  Seishi
(財)高輝度光科学研究センター 理事
放射光研究所 副所長
〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
TEL:07915-8-0454 FAX:07915-8-0830



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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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