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Volume 03, No.3 Pages 45 - 46

7. ユーザー便り/A LETTER FROM SPring-8 USERS

ユーザーの声−BL01B1立ち上げ実験記−
Short Note on Starting of BL01B1 Experimental Station

久保園 芳博 KUBOZONO Yoshihiro

岡山大学 自然科学研究科 Natural Science and Technology, Okayama University

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 BL01B1は、XAFS専用として設計されたビームラインで、一組のSi分光結晶の(111)、(311)および(511)面を切り替えて用いることにより、4.5keVから97keVまでの広いエネルギー領域にわたってXAFS測定が可能な世界的に例をみないビームラインである。建設サブグループは広エネルギーXAFSサブグループで、代表は大阪大産業科学研究所の江村修一先生である。ビームライン担当者は宇留賀朋哉博士である。立ち上げに参加したグループは京都大工学部の田中庸裕先生のグループ、大阪大理学部の渡辺巌先生のグループ、大阪大産業科学研究所の江村先生、高橋昌男博士のグループ、日本原子力研究所の西畑保雄博士、日本電気基礎研の木村英和氏と岡山大自然科学研究科―理学部のグループである。また、日本原子力研究所の米田安宏博士、理化学研究所の谷田肇博士をはじめとする共同チームスタッフに多大の援助を頂いている。
 1997年10月の供用開始以降、最初にCu K-edgeのエネルギー付近(9keV)でのビーム安定性をチェックするとともに、MoフォイルやInO2などのXAFSデータを測定し、過去にPFで測定したデータとの比較を行なった。その際に、分光結晶をfull tuningした場合とdetuningした場合でのスペクトルの比較を行なって、高調波が実際にスペクトルに与える影響についても調べた。次に、高エネルギー領域での測定例として、Dyフォイルを使ってDy K-edge(53keV)の測定を行なった。その結果、高エネルギー領域では分光結晶のロッキングカーブ幅が狭くなるため、XAFSスペクトル測定開始位置で分光結晶をtuneしても、およそ1500eVにわたるXAFS測定範囲で徐々に平行度にずれが生じ、X線強度が大幅に減少することなどがわかった。現在この対策として、平行度にずれが生じた時点で、ピエゾ素子を用いて分光器第一結晶の角度補正を行いながらスペクトルを得る方式に改良した。また、高エネルギー側でのXAFSのトップデータをねらうべく、Pt K-edge(78keV)とPb K-edge(88keV)の測定を試み、Pt の分解能の良いXAFS信号を観測することに成功した。
 11月以降は、実際にScienceとしても興味深い物質のXFAS測定を行い、それと並行してビームラインの立ち上げを続けた。低エネルギー側でのミラーを用いた高調波除去の評価は11月以降に開始したが、ミラーを挿入(6mrad)してEuC60の、Eu LIII-edgeXAFSを測定を行なって、Eu金属のC60内部への内包を確認することができた。本ビームラインは、透過法でのXAFS測定以外に、蛍光法や電子収量法などによるXAFS測定も可能となるように設計されているが、ライトルディテクターの立ち上げについても京大・田中グループを中心に進められた。12月以降は、低温XAFS測定用クライオスタット(8 K~300K)などの周辺機器の立ち上げを行なった。データ解析ソフトは現在、谷田氏の作成したLabVIEWによる測定プログラムを使用させていただいているが、将来、大阪大・渡辺グループの原田誠氏が中心になって開発中の測定プログラムに移行の予定である。立ち上げの中間報告は、1月に関西XAFS研究会と東日本XAFS勉強会の合同シンポジウムで行なわれ、今後の整備等についてDiscussionが行なわれた。
 XAFS研究は、この20年で、ほぼ一般的な測定ならびに解析技術は確立し、構造情報を得るための有用な研究手段として普及してきた。しかし、XAFSを使った研究報告は増えても、研究の中身が進歩しているかどうかという点については疑問符がついてしまう。SPring-8という世界最高の放射光施設の中にXAFSビームラインが起動し始めたことを契機に、XAFS研究の中身を問い直す必要があると感じているのは、多くのXAFS研究者の共通の想いであろう。このビームラインが、これまでにない工夫を凝らした新しいXAFS研究、さらには新しい科学を発信する拠点になることを建設グループとして願っている。またそうあらねばならないと考えている。
 

 
 
XAFS BL01B1実験ハッチ内機器の調整



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794