Volume 03, No.3 Pages 38 - 39
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第1回SPring-8シンポジウムに参加して
Report of the 1st SPring-8 Symposium
世界一の強度を誇る放射光を用いた研究成果と施設の現状を報告する第1回SPring-8シンポジウムが多くの関係者の参加を得て去る3月17日(火)から19日(木)にかけて兵庫県立先端科学技術支援センターで京都教育大の村田隆紀先生を実行委員長として(財)高輝度光科学研究センターとSPring-8利用者懇談会の主催のもと盛大に開催された。
記念すべき第1回のシンポジウムに合わせるかのように高温構造物性ビームラインでの地球深部マントル不連続面対応の高温高圧X線観察実験の成果が「地球のおなかが見えちゃった」などのタイトルで華々しく新聞報道されシンポジウムの盛り上がりを煽っていた。
3日間の会期は、施設の現状報告、利用実験成果報告およびビームライン計画と課題選定についての報告と盛り沢山の講演があった。また、ユーザーが最も聞きたい各課題の成果報告はポスターセッションとして用意されていた。
初日は午後から始まり、村田先生の司会のもと、はじめにSPring-8利用者懇談会から菊田惺志先生、(財)高輝度光科学研究センターから大野英雄先生がそれぞれ歓迎のご挨拶を行い、さっそく加速器の現状報告があった。加速器については近々full稼働に入ることができるだろうとの報告があり、施設の整備が予定以上に進行している印象を受けた。ビームラインの現状報告では挿入光源の状況、ビームライン立ち上げ調整、インターロックなどについて詳しい報告があった。夕方にはSPring-8食堂で懇親会が和やかに開催された。
翌日は朝から夕方まで各ビームラインの利用実験成果報告が始まった。ユーザーがもっとも知りたいところであり、各ビームラインの責任者を中心に装置の現状と将来について詳細な報告があった。報告した責任者の中にはラインあるいは装置の立ち上げの問題点とその対策を具体的に指摘され、責任者グループが並々ならぬ苦労をされていることがよく分かった。これらのラインをこれから利用するユーザーは何らかのお手伝いをする必要がありそうである。
各ラインで得られた具体的な成果についてはポスターセッションでデータや解析結果が報告された。いくつかのラインでは、ラインあるいは装置上の問題点を克服しつつ、みごとな成果を出しつつあり、整備が進み、full powerによる稼働状況になった場合には驚嘆すべき成果が見られそうだとの印象を受けた。なお、夜には立ち上げ途上ビームラインの報告もあり、盛り沢山な内容のある充実した一日となった。
最終日はビームライン計画と課題選定についの報告があった。ビームライン計画の報告では将来建設予定のビームライン、あるいは建設を希望するビームラインの申請のための説明があった。一方、課題選定の報告ではユーザーがもっとも知りたい課題選定の審査経過と選定方針について詳しい説明があった。どの放射光利用でも求められているがなぜSPring-8を利用するのかを明確に申請書に書く必要がありそうである。さらにユーザー支援体制についても分かりやすい説明とそれに対する質疑応答があり、利用にあたってユーザーがいかに取り組めばよいのかが理解できた。本シンポジウムの締めくくりには(財)高輝度光科学研究センターの上坪宏道先生から、今後同センターがSPring-8運営の中心になること等のご挨拶があり、いよいよ本施設も本格的稼動に進むことを実感させられた。
全体的な印象としてはすばらしい成果と世界一が目白押しの装置群を目の前にして久しぶりに研究意欲をかきたてられた。これは高エネルギー物理学研究所放射光実験施設の立ち上げのとき以来であり、ここの装置を用いる実験を本格的に考える時期が到来した印象を受けた。最近は各種の情報ネットワークが整備され、さらに本プロジェクト執行部のおかげでユーザーの末端に至るまで本組織の運営や建設の現状と将来についての情報公開がなされていることは地方にいるものにとってありがたいことである。今後それぞれの装置を実際に利用するユーザーにとってはより一層の情報公開が望まれる。私の属するサブグループでは気鋭の責任者達が高エネ研のmailシステムを用いて常にラインと装置の現状報告や運転上の連絡を流したり、意見の交換を行ったりしている。
参加者の多くの方々が宿泊所として割り当てられた宿舎は聞きしにまさるすばらしいものであった。また、従来まではなはだ悪かった足周りも4月からは相生発のバスの多くがSPring-8に乗り入れるとのことで利用者にとって喜ばしいことである。
今回はニュースバルシンポジウムが16日(月)17日(火)に兵庫県立姫路工業大学高度産業科学技術研究所の主催で開催され、また、第2回広島放射光国際シンポジウムが17日(火)から18日(水)に広島大学放射光科学研究センターで開催された。とくに広島のシンポジウムが本シンポジウムと日程上重なったことにより軟X線関係の研究者の参加が少なくならざるを得なかったのは残念なことであった。
最後に提案がある。第2回以降は実際の成果報告が増えていくと思われるがポスターセッションの利点、欠点は「SPring-8利用者情報」のVol.3、No.2に掲載されている竹村さんの意見に代表される。そこで各ポスター講演に3分位の口頭発表を行っていただくようにしたらどうだろうか。質問無しにすれば今回程度の発表件数(20数件)ならば1時間半位で全ての発表が終わる。質疑などは全体会議の合間にやれば全ての講演を参加者全員が視聴できることになり、かつ、時間の節約になるのではないだろうか。
全体的には本シンポジウムは大成功であったと思う。短期間で本シンポジウムを組織し、充実した運営をされた村田先生をはじめとする実行委員会に感謝し、本稿を終わりたい。