Volume 03, No.3 Page 36
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第1回SPring-8シンポジウムに参加して
An Impression of the 1st SPring-8 Symposium
ここのところ、産業界のビームラインを建設する準備として、SPring-8を訪れる機会が増えてきました。このシンポジウムの3日間の会期中にも、ビームライン部門の石川先生や安全管理室の多田室長さんに時間をとっていただいて、打ち合わせをさせていただきました。お忙しいところ、ありがとうございました。といった事情もあって、シンポジウムの方は、すべてを聴講させていただくわけにもいきませんでしたし、当面の関心事が、利用実験成果報告よりはむしろ、施設の現状報告(ビームライン)、ビームライン計画と課題選定、ユーザー支援体制といった面にありましたので、そちらに関する印象記とさせていただきます。
長年に亘って建設に携わってこられた方々の努力の結果、昨年10月にSPring-8が供用開始となり、そこで得られた実験データが、本シンポジウムで発表されるのを聞かせていただくと、大型放射光施設での実験が本当に身近に迫ってきたと感じられるようになりました。はじめのあいさつで、菊田先生が「汗して井戸を掘った人の努力に報いるには、世界に誇れる研究成果をユーザーが出すことだ」と言われたことは、胆に銘じておくべきことだと思います。
産業界の研究機関に所属する者にとっても、SPring-8利用の道は、共用ビームラインと専用ビームラインという2つの機会を与えていただいています。例えば、共用のXAFSビームラインでは、産業界の方も大学の先生方と一緒に、実験装置の立ち上げをやっておられますし、私自身も利用者懇談会のトポグラフSGには当初から参加させていただいています。白色光ビームライン(トポ実験等)の建設がビームライン検討委員会で認められたという報告があり、大型放射光施設におけるトポグラフ実験も、いよいよ視野に入ってきたと、嬉しく思うと同時に、建設・立ち上げには協力せねばならないと気を引き締めています。また、本年4月~10月期の利用研究課題選定でも、産業界からのテーマ採択数が増えたという報告があり、学術的な側面でも、多少なりとも貢献できるよう努力したいと思います。また、そういう成果を出されることを願っています。
さて、専用ビームラインの方ですが、建設にはやるべきことが多く、施設の先生方のご指導を賜わって進めております。本シンポジウムでは、多くの貴重な情報を得ることができました。モノクロメータの現状と見通し、ミラーの調整法といった技術的な面に加えて、安全対策についても分かり良い説明があり、大変参考になりました。特に、インターロックシステムについては、施設側より提供いただいた基本設計書を読んでも、なかなかイメージ出来なかったユーザーのなすべき手順が、明快にOHPで示されました。参考にさせていただいて、産業界のビームラインにおける具体的な入退室マニュアルを作らねばと思った次第です。
下村先生より、ユーティリティとして、リング棟に化学試料準備室を作る計画があるとのお話があり、実際に実験を行うときにどうしたものかと、大変気になっていたことが解決されそうで喜んでおります。これからも、是非とも施設の充実を進めていただき、共用、専用ビームラインを含めた全体ユーザーの利便を図っていただくようお願いします。大変有意義なシンポジウムでした。関係者の皆さんに感謝します。