Volume 03, No.3 Pages 31 - 32
5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
ビームライン検討委員会の検討状況
Activities of the Public Beamline Committee
1.まえがき
SPring-8 の共用ビームラインは、全体で30本以上整備することが予定されており、既に10本が建設され共同利用に供されている。ビームライン検討委員会(委員長:佐藤繁)では原研・理研・JASRIの三者で構成する「特定放射光施設運営調整会議」の諮問に応じ、供用開始後2〜3年の間にSPring-8に整備するのが適当な第11〜20番目までの新たな共用ビームライン計画を選定するため、平成8年度から検討を進めている。
ビームライン計画の選定は、最初の10本の共用ビームライン選定の際と同様、広く国内の利用者から「計画趣意書(Letter of Intent)」及び「計画提案書(Proposal)」の2段階の提案を受け、その計画内容を検討評価する方式を採用している。
第11番目以降の共用ビームラインとして整備するのが適当な計画のうち、緊急性の高い6計画(表1)を平成9年6月に答申(その1)として取りまとめた[1]。この内の1計画は平成9年度から、又2計画は平成10年度からそれぞれ建設されることになる。残りの3計画についても平成11年度以降に予算要求し整備が進められる予定である。
表1 答申(その1)の共用ビームライン(6計画)
ビームラインの名称 | 光源の型 | 整 備 計 画 | |
1 | 高輝度ビームライン | 真空封止ヘリカル アンジュレータ |
平成10年度から整備 |
2 | 赤外物性ビームライン | 偏向電磁石 | 平成11年度以降に予算要求 |
3 | 高エネルギー分解能 ビームライン |
真空封止標準アン ジュレータ |
平成10年度から整備 |
4 | 粉末回折ビームライン | 偏向電磁石 | 平成11年度以降に予算要求 |
5 | 表面界面構造解析 ビームライン |
真空封止標準アン ジュレータ |
平成11年度以降に予算要求 |
6 | 医学利用中尺R&D ビームライン |
偏向電磁石 | 平成9年度からの2年計画で 整備中 |
平成8年度に引きつづき平成9年度も新たに共用ビームライン計画趣意書及び計画提案書を募集し、SPring-8に整備するのが適当な共用ビームライン3計画を選定した。現在、その結果を答申(その2)として取りまとめており、本年6月頃に答申する予定である。
2.共用ビームライン計画の検討評価
2.1 平成9年度追加募集
平成9年度に新たに実施した「計画趣意書」の追加募集[2、3]に基づいて提案された7件と、平成8年度に提案された「計画趣意書」のうち継続して検討することとしていた4件の合計11件について検討評価を行い、この中の6件に対して「計画提案書」の提出を依頼した。提出のあった6件の計画提案書について国内外レビュアー18名から計画のオリジナリティー、将来性等に関する意見を聴取し、それらの意見も参考に検討評価を行った結果、SPring-8に整備するのが適当な共用ビームラインとして単色光ビームライン及び白色光ビームラインの2計画(いずれも偏向電磁石光源)を選定した。
今回の追加募集においては、表面・界面磁気散乱装置のように、ビームライン計画ではなく、実験ステーションの増設計画も新しい提案の形として検討評価の対象とした。
2.2 共用ビームラインとして推進するのが適当な2計画の概要
(1)単色光ビームライン(偏向電磁石)
提案されたX線小角散乱実験を含め汎用の単色光ビームラインとして整備する
(2)白色光ビームライン(偏向電磁石)
提案された白色高速トポグラフ実験を含め汎用の白色光ビームラインとして整備する
3.医学利用実験施設に整備するビームライン計画
機構に医療機関関係者等で構成するSPring-8医学利用研究懇談会(座長:阿部光幸)を組織してSPring-8における医学利用研究の推進について検討した結果、以下のような結論を得ている。
(1)SPring-8を利用する新しいイメージング技術の創出と兵庫県粒子線治療センターとの連携等を医学利用研究の基本的枠組みとする。
(2)医学利用研究推進委員会(仮称)等を組織し、目的指向的研究計画、SPring-8における医学利用実験施設の整備計画等について検討する。
(3)SPring-8側が主体となり、医学利用研究者と共同で、基本的枠組みを満足する放射光の発生と医学利用実験施設への導入技術について検討する。
ビームライン検討委員会は、これらの結果を聴取し、生体機能のイメージング等を目標とする医学利用中尺IDビームライン計画をSPring-8側で検討することを了承した。その計画内容は、今回答申する第3番目のビームライン計画となる。
4.今後の検討課題
(1)以上の検討結果に基づき、今回答申(その2)として取りまとめる表2の3計画を含め、全体9計画の光源の内訳は、挿入光源4計画、偏向電磁石光源5計画である。今後、限られたビームライン設置可能数の一層の有効利用が必要なことから、ビームラインの全体像(共用、専用等)及び科学技術分野の特徴とバランスへの配慮、実験ステーション増設計画提案への対応等が必要である。
表2 答申(その2)として取りまとめる共用ビームライン(3計画)
ビームラインの名称 | 光源の型 | 備 考 | |
1 | 単色光ビームライン | 偏向電磁石 | 小角散乱実験等 |
2 | 白色光ビームライン | 偏向電磁石 | トポグラフ実験等 |
3 | 医学利用中尺挿入光源 ビームライン |
挿入光源 | 生体機能のイメージング実験等 |
(2)共用ビームライン計画の作成、選定は、従来方式(提案された計画の中から選定)に加え、重要な研究分野等を推進するために必要なビームライン計画をSPring-8側と当該研究分野の専門家が共同して計画を策定する方法等を採用することが重要である。
平成10年度は引き続き、答申(その2)の取りまとめ作業を実施する。併せて、共用ビームライン計画作成・選定の新たな方式及び実験ステーション増設計画提案への対応等について検討する予定である。
参考文献
[1]「大型放射光施設に整備する共用ビームラインに係る技術的重要事項の検討評価について」(平成8年5月1日付け諮問)に対する答申(その1)、平成9年6月6日
[2]SPring-8利用者情報Vol.2,No.5(1997)54
[3]光彩、1997年9月