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Volume 03, No.3 Pages 13 - 15

3. 共用ビームライン/PUBLIC BEAMLINE

原研偏向電磁石ビームライン(BL14B1)の現状
Present Status of JAERI Bending Magnet Beamline BL14B1

小西 啓之 KONISHI Hiroyuki

日本原子力研究所 関西研究所 放射光利用研究部 JAERI Kansai Research Establishment Dept. of Synchrotron Radiation Facilities

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1.はじめに
 日本原子力研究所(原研)はSPring-8における放射光利用研究推進のために、3本の専用ビームラインを建設する計画をすすめている。これらのビームラインは物質・材料科学を中心とした広範囲にわたる利用研究を展開するために、光源の種類や利用エネルギー範囲などが相互に異なった仕様になっている(表1)。

表1 原研ビームライン計画の概要

 

 このうち軟X線アンジュレータビームラインBL23については本年2月より挿入光源の試験運転を開始し、ハッチの漏洩検査、光学系の調整を進めて現在順調に立上がってきている。
 X線アンジュレータビームラインBL11は今年度秋の利用開始を目標に設計を進めているところで、本年7月から8月にかけて現地工事が本格化する予定である。偏向電磁石ビームラインBL14B1の建設は3本のなかでは最も早く進んでいる。本稿では前回[本誌Vol.2 No.4 pp.20-23(1997)]に続いて、平成10年4月上旬の時点でのBL14B1の現状を伝える。


2.ビームラインの概要
 BL14B1の仕様について前回の報告と重複する部分もあるが、もう一度簡単に紹介したい。基本仕様はSPring-8 標準単色偏向電磁石ビームライン(BL01B1、BL02B1など)のそれに準じているが、BL14B1では単色X線だけでなく白色X線も利用できることが特徴である。白色X線利用時には分光用結晶、ミラーなどの光学素子をすべて光軸上から移動し、基幹チャンネル終端のベリリウム窓を通過した光をそのまま実験ステーションまで導く。単色X線と白色X線との切替に伴う機器の移動は個別にパルスモータ制御によって行われる。この切替は放射線防護上重要なガンマーストッパーの位置や下流シャッターの取り扱い方の変更を伴うため、白色・単色のいずれを使うかはインターロックシステム上で選択し、それぞれに応じたビームラインの状態監視を行う必要がある。これに加えて一般にタンデムに連結された複数の実験ハッチがある場合、使用するハッチの選択もやはりインターロック・システム上で行われる。BL14B1では実験ハッチは2つあり、このうち上流側の実験ハッチ1のみが放射線遮蔽性能上、白色X線の導入が可能となっている(このため科学技術庁への申請上の正式な呼称は光学ハッチ2となっている)。従ってBL14B1での放射光利用に際しては、以上2種類の切替を合わせてビームラインの運転モードとして定義される次の選択肢の1つをインターロック・システム上で指定することになる。
 ①実験ハッチ1白色モード
 ②実験ハッチ1単色モード
 ③実験ハッチ2単色モード
 単色モードで2結晶分光器の上下流に置いた全反射ミラーを使う場合は、そのglancing angleに応じて下流側の機器の高さを変える必要がある。これBL01B1,BL02B1などと同様、第1ミラー~分光器を迅速に行うために~γストッパー1間(写真1)及び第2ミラー~Be窓1間の機器をそれぞれ共通の傾斜架台、昇降架台の上に設置している。同様に各実験ハッチ内にも昇降架台を設置し、いくつかの機器をこれらの上に乗せている。特に実験ハッチ1内の昇降架台2には下流の実験ハッチ2を利用する際、実験ハッチ1内でのX線の真空パスを確保するための連結管と排気装置が乗せられている。この昇降架台2は実験ハッチ1選択時には実験装置自体と干渉するため、昇降架台全体が床面のレール上を水平方向に移動できるようになっている。すべての傾斜架台・昇降架台はサーボモータ制御によって駆動中でも昇降量の相対差が生じないように連動して動かすことができる。



写真1 結晶分光器、ガンマストッパと傾斜架台(光学ハッチ)


3.ビームライン建設の経過と現状
 BL14B1を含むビームライン建設に係る科技庁への申請に対して建設許可がおりたのが平成9年7月4日であった。この日以降実験ホール側の現地作業が本格化した。また蓄積リング収納部内にある基幹チャンネルの現地工事も、架台設置など一部の作業はそれまでの蓄積リングの運転停止時に進めてはいたが、大部分は7月13日からの夏期運転停止期間中に集中的に実施した。
 実験ホール側の作業と収納部側の作業はほぼ独立に進められた。特にハッチについてはその中に設置する最大の機器である昇降架台・傾斜架台の製作との関連で多少遅れはあったが、8月中旬には3つのハッチともパネルの組み立てをほぼ終了した。その後8月末までにハッチの仕上げとミラーチェンバー、分光器など大型機器の搬入を終え、9月よりその他の機器の据付、配管・配線などのインターロック・制御及びユーティリティ関連の工事を進めた。
 収納部内の作業も順調に進み、8月末までにベーキング及び真空立ち上げを終了した。
 10月の第2週から第3週目にかけてインターロックの現地調整・総合動作試験を行ない、その後いくつかの残作業のあと、10月末にビームライン全体の検収となった。
 そのまま11月中旬に施設内検査を受ける予定であったが、直前になってハッチの自動ドアの電気錠に対するリミットスイッチに調整ミスによる不具合が見つかった。このリミットスイッチは電気錠の施錠・解錠ステータスをインターロック・システムが監視するための放射線安全上重要な部分であるが、この不具合に加えて、機械接触式のものを使っているために電気錠が動く時の衝撃により将来故障が発生することも懸念された。このため安全管理室と協議の上、全自動ドアのリミットスイッチを近接センサーに交換した上で検査を受けることとし、日程を急遽延期した。
 実際に施設内検査が行われたのは12月3日である。機器の製作が申請通りに行われていることの確認、人的安全に係わるインターロック動作試験を行い、すべてについて合格した。
 よって翌4日の蓄積電流1mA時にビームシャッターを開け、初めてビームラインに放射光を導入し、直後に安全管理室立会によるハッチの放射線漏洩検査を行った。通常の単色X線利用のビームラインでは光学ハッチの漏洩検査と実験ハッチの漏洩検査の間に、分光器の調整時間をとらなければならない。しかしBL14B1の場合、実験ハッチ1は白色X線を導入して検査を受ければよい(光学ハッチ漏洩検査時は分光結晶を散乱体とする、すなわち単色X線モードにする必要があるが、必ずしも分光器を調整しておく必要はない)。従って検査の受け方として、先ず光学ハッチと実験ハッチ1に関して、1mA運転時と20mA運転時の漏洩線量サーベイ、20mA運転時のフィルム露光による漏洩検査のそれぞれを先に終了させ、その後で実験ハッチ1単色モードにて分光器を調整してから最後の実験ハッチ2の漏洩検査に臨むのが最も効率的であると判断した。
 以上のスケジュールで漏洩検査を進めたところ、12月8日の20mA運転時サーベイで光学ハッチ、実験ハッチ1の周辺に最大で許容値の数倍程度漏洩線量の大きいところが数箇所見つかった。扉の隙間やハッチパネルと実験ホールの壁・床との接触部分が主で、設計上の問題と言うより現地施工上建てつけ方が不十分な箇所があったと言える。鉛板を張りつけるなどの補修を急遽行い、12月10日の再検査では無事合格した。この後すぐに光学ハッチ、実験ハッチ1のフイルムによる漏洩検査を行い、さらに分光器の調整に入った。
 12月18日の1mA運転時に実験ハッチ2の線量サーベイを行い異常は認められなかった。20mA運転時サーベイは年が明けて平成10年2月27日に実施し、これにも合格した。以上で所定の施設内検査はすべて終了したことになる。
 現状では分光器等の調整、ハッチ内実験装置の調整を進め、一部利用実験を開始している。ただし全反射ミラー本体は別途発注で製作しており、平成10年3月末に納入された。5月にミラーチェンバー内に取り付けて調整する予定である。


4.実験装置の現状
 実験装置の概要についても前回の報告を参照されたい。
 実験ハッチ1で使用する高圧実験用装置の構成のうち、圧力発生装置180トンプレスはすでに平成8年度に完成している。これと組み合わせて用いる回折計部分の製作は平成9年度に開始し、平成10年3月下旬にハッチ内に搬入した(写真2)。現在組み立て調整がほぼ終了しており、4月後半の運転サイクルで光を用いた調整、予備実験を行う予定である。



写真2 高圧実験用回折計(実験ハッチ1)

 実験ハッチ2で使用する多軸回折計は平成8年度に発注し、平成10年2月上旬に搬入した(写真3)。こちらは光を用いた調整試験までほぼ終了し、現在利用実験を開始している。



写真3 多軸回折計(実験ハッチ2)

 これら実験装置の性能評価はまさにこれから始まろうとしているか、または始まったばかりである。それらの結果については別の機会に改めて報告したい。





小西 啓之 KONISHI Hiroyuki
昭和34年4月5日生
日本原子力研究所関西研究所
放射光利用研究部
〒679-5198
兵庫県佐用郡三日月町三原323-3
SPring-8リング棟
TEL:07915-8-2718
FAX:07915-8-2740
略歴:昭和63年3月大阪大学大学院基礎工学研究科後期課程修了。同年日本原子力研究所入所。大型放射光施設(SPring-8)の研究開発に従事し、現在に至る。日本物理学会、日本放射光学会会員。
最近の研究:放射光による金属人工格子の弾性異常の研究。
趣味:登山、旅行。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794