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Volume 03, No.2 Page 54

7. ユーザー便り/A LETTER FROM SPring-8 USERS

出会いの場としての
SPring-8 SPring-8 as a Meeting Place

入舩 徹男  IRIFUNE Tetsuo

愛媛大学 理学部 Faculty of Science, Ehime University 

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 SPring-8関連合同シンポに招かれ、今回初めて放射光学会に参加させていただきました。放射光実験施設のエンドユーザーである私にとって、放射光学会では耳慣れぬ言葉も多く、正直なところ十分な理解が得られる講演はあまり多くありませんでした。
 それでもいくつかの新たな研究手法の開発等の発表には大変興味を覚え、私自身の主要な研究分野である地球科学に応用できないかあれこれ考えたり、何人かの発表者と話をする機会を得ることができたのは大きな収穫でした。 
 SPring-8関連シンポは、プログラム最終日の最後に配されていたにもかかわらず多くの参加者があり、各ビームラインにおける最初の成果が、ある種の興奮の中で語られたように思います。我々のグループも、高温構造ビームラインにおける高温高圧下でのX線その場観察実験で予想以上の成果を短期間に上げることができ、その一部を披露する機会を得ました。日頃、他のビームラインでなにをやっているのかなかなか知る機会がない我々利用者にとって、今回のようなシンポは大変貴重であると思います。しかし私自身も含め、専門外の人向けに話すという点ではまだまだ不十分であったような気もします。今後はこの点により留意が払われ、このような機会を通じて、SPring-8を利用する異分野間の研究者の相互理解の場、出会いの場が拡大することを希望します。 
 話は変わりますが、同シンポのあと、数日間シカゴのAPSを訪れる機会がありました。APSは施設のスペックとしてはSPring-8の強力なライバルであることは間違いないですが、利用者支援、特にゲストハウスの宿泊費や利用者への旅費の支給などの面ではSPring-8のほうに軍配があがりそうです。利用者にとってはこれらの点は研究をすすめる上で重要な要因であり、この点でのSPring-8利用業務部はじめ関係者のご努力には大変感謝したいと思います。利用が始まってから半年もたたぬうちに上記のような成果が出はじめたのは、ハード関係の優秀さとともに、利用支援体制がスムーズに機能していることも見逃せない要因だと改めて感じました。 
 ただAPSとの一つの違いとして、SPring-8では各ビームラインがそれぞれ少し孤立しているように見えます。この点はまだ立ち上げ段階であるということで仕方ない面もありますが、向こうではCAT(Collaborative Access Teams)といういくつかのビームラインを包括する組織が運営にあたっており、それぞれのCATではかなり多様な分野の専門家が集まっているように見えました。このような組織にも一長一短があるとは思いますが、SPring-8が先端科学技術の推進とともに、異分野間の交流の場として機能し、新たな研究分野の創造の場としての役割を果たしていくには、さらに何らかの方策が必要でしょう。  
 21世紀初頭には文部省と科学技術庁の統合も予定され、大学関係者と理研・原研等科技庁関係者との人的交流も一層進むものと予想されます。このような状況のなか、一地方大学に属す者としてSPring-8 の今後の発展におおいに期待しています。大学でも最近は旧帝大を中心にCOEばやりですが、真のcenter of excellenceの名に値するものは少ないように見えます。これはこのような大学における人事面および研究面での閉鎖性に一因があるように思います。SPring-8では既成の組織や分野の枠にとらわれず、真のCOEとしての役割を果たしていただきたいところです。そのためには我々のような地方のユーザーも協力を惜しまないし、またその力を十分生かせるような条件づくりをお願いしたいと思います。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794