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Volume 03, No.2 Pages 46 - 47

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

「SPring-8利用技術に関するWorkshop」の報告
Report of Workshop on Scientific and Engineering Advancements at SPring-8

坂田 誠  SAKATA Makoto

名古屋大学工学部 Faculty of Engineering, Nagoya University

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 1997年12月1日(月)および2日(火)の両日、先端技術支援センター(CAST)大ホールにおいて「SPring-8利用技術に関するWorkshop」がSPring-8利用者懇談会およびJASRIの共催により開催された。このWorkshopは、1997年10月にSPring-8の供用が開始されてから初めてのWorkshopである。その為に施設側、利用者側の双方から講演者を募り、文字どおり両者が一体となって第三世代放射光源である SPring-8の利用技術全般にわたる幅広い討議が行われた。また、供用開始からあまり日数が経っていないにもかかわらず、幾つかの初期データを公表する場にもなった。このWorkshopは、基本的には国内の利用者を対象として考えられたものであるが、 Workshopの企画段階に訪日中であったNiemann博士に講演をお願い出来ることとなり、多少、国際色を出すことが出来た。Niemann博士は、このWorkshopの為に帰国を延長して下さった。博士ならびに関係者に感謝する次第です。
 Workshopの詳しい内容は、報告書が出版される予定であるので、そちらの方を参照していただきたい。ここでは本報告の最後に、Workshopのプログラムを掲載するに留めることとする。全講演数は22件で、それらを光学系、制御系、測定系、検出系のカテゴリーに分けて講演が行われた。最も講演数の多かったのは測定系で、利用者の熱意が感じられた。供用開始から日が浅く、試行期間と言うこともあって、幾つかの問題点も指摘されたが、本格的利用が開始されるに従い、これらの問題も解決されていくものと考えられる。 測定系として多くの講演がなされた結果として、ほとんどのビームラインにおける活動状況がこのWorkshopで報告されたこととなり、参加者には大きな収穫となった。測定系というカテゴリーの中で、JASRI・加速器部門長の熊谷教孝氏が、蓄積リングに関する講演を行った。蓄積リングの中でも利用者の関心が高い、軌道安定性とシングルバンチに関する講演であった。特に、シングルバンチあるいは数バンチ運転に関する講演は、シングルバンチ・モードでの利用を考えている利用者には、大変興味のある講演であった。
 測定系の次に講演数の多かったカテゴリーは、光学系である。SPring-8における光学系の重要性は今更強調するまでもない。SPring-8の光学系に関しては、色々なアイデアが試みられているようで Workshopでも幾つかの例が報告された。その一例が、ダイヤモンド・トリクロメーターである。放射光の利用者には、白色光である放射光を単色化するためのモノクロメーターは、非常に馴染みのある光学系である。ダイヤモンドは吸収が少なく透過性も良いため、反射した光と透過した光の両方を用いることにより、モノではなくトリクロメーターを作成したという報告である。熱の問題は非常に大きな問題で、まだ、完全に克服されたとは言えず、今後の SPring-8ビームライン高度化の一つの大きな課題になるものと思われる。
 検出系は施設側報告2件、外部ユーザー報告2件であった。放射光の光源が強くなればなるほど、いかにして有効に信号を検出していくかが問題になる。第二世代放射光源であるフォトン・ファクトリーの利用開始と時を同じくしたように、イメージング・プレートが開発され、瞬く間に放射光ユーザーに広がっていったことは記憶に新しい。イメージング・プレートは、患者のX線診断における被爆線量を出来るだけ低く抑えるという、医療目的に開発された高感度X線フィルムであるが、現在では放射光ユーザーには必要不可欠な検出器となった。第三世代放射光源であるSPring-8では、検出器に要求される条件が益々厳しくなり、新しい検出器の出現が待たれている。また、利用者の実験目的に対して、検出器に要求される条件も変わるため、種々の検出器が求められている。本Workshopで報告されたCCDあるいはAPDは、今後SPring-8でも利用されて行くことになろう。SPring-8を利用した実験が、今後多様化するにともない、新たな検出器は、常に求められていくことになり、検出器の開発は、常にSPring-8利用技術の重要な課題に留まるであろう。
 制御系の3件の報告は全て施設側からなされた。それぞれ、ビームライン制御全般、分光器制御、インターロックについての報告があった。今後の Workshopでは、測定器の制御について、利用者側からの報告が増えることであろう。
 以上、Workshop全般について簡単に述べた。短期間で企画し、宣伝期間がほとんどなかったにもかかわらず、120名余りの参加者を得、SPring-8に対する期待の大きさを実感した。本格的利用が開始した後に開かれる、次回Workshopではどの様な報告がなされるのか今から楽しみである。 
 
「SPring-8利用技術に関するWorkshop」のプログラム 
 
1997年12月1日(月) 13:30~17:30
 
光学系:
1.後藤 俊治(JASRI) 「ビームライン全体」
2.竹下 邦和(JASRI) 「分光器、分光結晶」
3.宇留賀朋哉(JASRI) 「SPring-8標準硬X線ミラーシステム」
4.Bastian Niemann(Goettingen大)
「X-ray microscopy, feasibility in transmission imaging mode at sub 1 nm wavelength」
5.山本 雅貴(理研) 「理研ビームライン、ダイヤモンド・トリクロメーター」
6.平野 馨一(物構研) 「X線透過型移相子の基礎と応用」
7.末広 祥二(京大) 「長尺ビームライン用X線屈折レンズとゾーンプレート」
 
制御系:
8.大端 通(JASRI) 「ビームライン制御全般」
9.玉作 賢治(理研) 「分光器制御」
10.松下 智裕(JASRI) 「インターロック」1997年12月2日(火) 9:00~15:00
 
測定系:
11.黒岩 芳弘(千葉大) 「結晶構造解析ビームライン(BL02B1)の現状」
12.河野 能顕(理研) 「生体高分子結晶構造解析ビームライン(BL41XU)の現状」
13.西畑 保雄(原研 関西研) 「XAFSビームライン(BL01B1)の現状」
14.山岡 人志(理研) 「300keVX線ビームの開発技術と評価実験」
15.熊谷 教孝(JASRI) 「蓄積リングの軌道の安定性とシングルバンチ運転について」
16.依田 芳卓(東大) 「BL09XU実験ハッチ制御システム」
17.川村 春樹(姫工大) 「高圧構造物性ビームライン(BL10XU)の現状」
18.早川慎二郎(東大) 「BL39XUにおける微小部での蛍光X線分析・分光の現状」
 
検出器:
19.鈴木 昌世(JASRI) 「検出器全般」
20.豊川 秀訓(JASRI) 「2次元検出器(MicroStrip Gas Chamber)」
21.岸本 俊二(物構研) 「多チャンネルAPD検出器の開発」
22.雨宮 慶幸(東大) 「CCD型X線検出器とIPの性能比較」
 

坂田 誠 SAKATA Makoto
名古屋大学大学院工学研究科応用物理学専攻
TEL:052-789-4453 FAX:052-789-3724
e-mail:a40366a@nucc.cc.nagoya-u.ac.jp



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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