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Volume 02, No.6 Pages 32 - 34

5. 談話室/OPEN HOUSE

理化学研究所播磨研究所の発足について
Establishment of RIKEN Harima Institute

船田 孝司 FUNADA Takashi

理化学研究所 播磨研究所 管理事務所 企画調整室 RIKEN Harima Institute, Administration Office, Planning Section

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 理化学研究所播磨研究所は、理化学研究所が大型放射光施設(SPring-8)の利用を中心とした研究分野を展開するため、本年10月1日に発足させた新たな組織です。

 理化学研究所は、「科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する試験研究を総合的に行い、その成果を普及することを目的」(理化学研究所法第1条)とし、昭和33年10月創設され、本所を埼玉県和光市に置くほか、支所として、茨城県つくば市に「ライフサイエンス筑波研究センター」(昭和59年10月開設)を置き、基礎研究から応用研究まで多様な研究活動を展開しています。

 播磨研究所は、「ライフサイエンス筑波研究センター」に次いで、理化学研究所の2番目の支所ということになります。

 これにより平成9年6月に竣工した構造生物学研究棟(本誌1997年1月号Vol.2 No.1に紹介)を活動場所の中心として、平成5年度から開発研究を開始した理研ビームラインI(本誌1996年9月号Vol.1 No.4に紹介)及び平成7年度から開発研究を開始した理研ビームラインII(本誌1996年11月号Vol.1 No.5に紹介)を利用した構造生物学研究を実施するとともに、平成8年度から開発研究を開始した理研ビームラインIIIを活用した物理科学研究を実施することにより、理化学研究所の関西地域の研究拠点としても幅広い研究活動を展開していくこととなります。

 

構造生物学研究棟(平成9年8月撮影)

 

 

1.研究所発足の経緯

 理化学研究所は、平成2年度からSPring-8を日本原子力研究所と共同して建設してきましたが、その建設にあわせてSPring-8を利用した独自の研究を進めるため、平成5年度から順次理化学研究所が製作・利用するビームラインである理研ビームラインの開発研究を開始しました。

 このような流れの中で、理研ビームラインを利用した研究計画等を明確にするため、SPring-8を中心とした播磨地区における研究体制「播磨研究所(仮称)」のあり方等の構想を検討する「「播磨理研」構想検討委員会」(委員長:長柄喜一郎副理事長(当時))を平成6年2月に設置しました。その検討の結果、平成6年12月に研究体制、施設等の整備に関する基本的な項目をまとめた「播磨研究所(仮称)基本構想中間報告」及び年次計画を含めた施設の全体計画・配置計画等の概略をまとめた「播磨研究所(仮称)における施設整備計画」を作成しました。

 その後、平成7年度第2次補正予算において上記施設整備計画における最初の研究施設である構造生物学研究棟の建設が3カ年による計画で認可されたことに伴い、上記「播磨研究所(仮称)基本構想中間報告」の見直しと施設全体計画のとりまとめ及び構造生物学研究棟の設計を進めるため、平成7年10月に「播磨研究所計画推進委員会」(雨村博光副理事長)を設置し、その作業組織として「播磨研究所計画推進室」(室長:上坪理事)を設置しました。このような体制の下で計画の再検討、組織等の準備作業等の結果、構造生物学研究棟は、平成8年3月に建設が開始されることとなり、また平成8年4月には「播磨研究所(仮称)基本計画」が策定されました。

 これをもとにして、理研播磨研究所の設置を平成9年度予算に要求し、平成9年10月発足の認可を受けることとなりました。

 

 

2.播磨研究所の体制について

 播磨研究所の体制については、平成9年10月の発足時点で図1のようになっています。

 

図1 播磨研究所の組織

 

 研究所の所長は、SPring-8計画推進共同チームのリーダーである上坪宏道理事が務めます。

 構造生物学研究関係においては、和光本所に設置されていた2研究室を播磨に移転し、構造生物化学研究室(井上頼直主任研究員)及び構造生物物理研究室(植木龍夫主任研究員)を設置しました。また、新たに認可された理論構造生物学研究室(飯塚哲太郎主任研究員)を含めて3研究室の体制で当面研究を実施することとなっています。また、和光本所における構造生物学関連研究との連携を図るため、2研究室の分室を設置しています。これらにより、幅広い研究対象の確保、研究手法の導入が期待されています。

 また、物理科学研究については、まだX線干渉光学研究室(石川哲也主任研究員)のみ1研究室の設置から研究を開始することとなっていますが、理研ビームラインIIIの開発研究の進展等に伴い、平成10年度予算においてさらに2研究室の設置を要求しています。

 さらに播磨研究所においては、従来まで進めてきたSPring-8の整備についても当面継続することとしており、そのための研究組織として大型放射光研究開発グループ(植木龍夫総括主幹)を設置しています。また、上記の研究室における研究活動及びSPring-8の運営等に関する業務を行う事務組織として管理事務所(天野徹事務所長)を設置しています。

 

理研ビームラインI(平成9年9月撮影)

 

 

3.播磨研究所における研究内容について

 播磨研究所においては、構造生物学研究及び物理科学研究の2分野の研究を実施することとしています。

(1)構造生物学研究

 構造生物学研究とは、生命現象の仕組みを生体内に存在するタンパク質等の巨大生体高分子の高次構造に基づいて解明し、生体機能の解明や医薬品開発等に応用しようとする科学です。

 タンパク質は、その構成要素であるアミノ酸が鎖のように配列(一次構造、二次構造)されていますが、それだけでは、タンパク質のもっている優れた機能を理解することはできません。タンパク質は、その鎖が折り畳まれて特定の立体的な配置(三次構造)をとったときに機能を発現するため、その機能を理解するには、立体構造とその微妙な動きを原子レベルで解明することが重要です。

 播磨研究所における構造生物学研究は、SPring-8の高輝度・高強度の放射光を用いたタンパク質の高次構造の解明を目指して、生体に微量にしか存在しない生体高分子を大量に発現・精製し、結晶化するための研究を行うとともに、従来の構造解析手法の高度化及び新たな構造解析手法の研究開発を行います。

 

(2)物理科学研究

 SPring-8は高い干渉性を有する放射光を発生する次世代放射光源としての潜在的能力を有しています。

 播磨研究所における物理科学研究は、この能力を顕在化させ、放射光利用分野での新たな可能性を産み出すため、「可干渉(コヒーレント)X線」の発生と利用技術に関する研究開発を行います。

 「可干渉X線」は、X線ホログラフィーによる原子レベルでの3次元結像や、その運動物体への応用などにより、材料分野、生物・医学分野等でインパクトのある成果をもたらすと期待されています。

 研究所開設時の担当研究室はX線干渉光学研究室の1研究室で、普通長直線部を用いた物理科学研究用の理研ビームラインIII(高コヒーレントX線ビームライン)の開発研究を行い、順次研究室の増強を図りつつ、上記研究を推進していく計画です。

 

 

4.施設計画の概要

 播磨研究所の施設計画については、上記の施設整備計画をもとに構造生物学研究棟の設計の際に、播磨研究所全体の施設配置計画をまとめました。

 SPring-8の敷地においては、加速器施設が建設されている北東のエリアがSPring-8の放射光を利用する研究開発と放射光と相補的な実験技術を用いる研究開発を行うエリアとして位置づけられていますので、播磨研究所の施設もその場所に展開することとしました。さらに、その最初の建物として建設する構造生物学研究棟の建設場所は、SPring-8関係またはそれ以外の将来施設の整備計画に対して、土地利用上の自由度を最大限に確保することを考慮して、敷地境界側(北側)の周回道路付近としました。

 今後、平成10年度予算においては、2番目の研究施設として物理科学研究棟の建設を予算要求しており、今後研究活動の発展に伴って、順次特殊実験棟等の建設を進める計画です。

 

 

 

船田 孝司 FUNADA Takashi

昭和30年11月23日生

理化学研究所 播磨研究所

管理事務所 企画調整室長

TEL:07915-8-0900 FAX:07915-8-0800

e-mail:funada@sp8sun.spring8.or.jp

(兼務)日本原子力研究所・理化学研究所

大型放射光施設計画推進共同チーム

企画・管理グループ 企画グループ

略歴:昭和53年東京理科大学理学部応用化学科卒業、同年理化学研究所に入所、企画部企画課に所属、科学技術庁振興局管理課に派遣の後、企画室、国際フロンティア研究推進部企画管理課、高速外環状道路関係移転建設推進室、施設管理部建設課等を経て平成9年10月から現職。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794