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Volume 02, No.6 Pages 1 - 4

1. ハイライト/HIGHLIGHT

輸送チャンネル・光学系の試験調整運転(その2)
Commissioning Report on Transport Channels and Optics (No.2)

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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1.はじめに

 7月に、短期間で行われた第二陣ビームラインの試験調整運転により、多数の改良点が見いだされた。本誌前号で詳しい報告のあったSRI'97を挟んで、第二陣ビームラインでの問題点を個々にフィックスしていく作業と、第三陣ビームラインの建設作業が並行して夏に進められた。7月の試験調整運転概要は既に前号で報告したが、蓄積リング・ビームラインとも完璧な調整が終了したわけではなく、9月の調整期間に多数の宿題を残していた。特に、アンジュレータ用結晶分光器の調整手順は再検討が必要と思われたし、ミラー調整は全数について9月以降の課題として残っていた。

 利用系では、夏期シャットダウン中に新たな挿入光源(BL10XU、BL39XU、BL08W)とフロントエンドの設置作業を進め、10月の供用開始に向けての最終調整段階に入った。本稿では、7月および9月に行われた試験調整運転の概要を紹介し、併せて最近の実験ホール内の変化を紹介する。

 

 

2.7月の試験調整運転

 本誌前号に概略を示したように、夏期シャットダウン前の輸送チャンネル・光学系試験調整運転は、7月7日から12日の間の6日間で行われた。ここでは、それ以前に試験調整運転が終了していたBL02B1、BL47XUの2本のビームラインに加えて、BL01B1、BL04B1、BL09XU、BL41XU、BL45XUの5本のビームラインの立上運転が行われた。非常に限られた時間での調整運転であったため、ミラー系の調整は秋の課題として残し、結晶分光器のみの調整を行った。

 7月の試験調整運転では、蓄積リングの電子ビーム軌道が動いた場合に、強力なアンジュレータ光が十分に冷却されていない機器を直撃することを防ぐためのインターロックが全アンジュレータに対しては間に合わなかったので、アンジュレータのギャップ操作は蓄積電流1mA以下で行うことに制限された。偏向電磁石単色ビームライン(BL01B1)では、二結晶分光器調整開始直後に分光器からの単色光が実験ハッチに導入され、サジタルフォーカス用ベンダーのテストが行われた。偏向電磁石単色ビームラインでの結晶分光器第一結晶として、Si(311)のピンポスト冷却結晶が用いられたが、アンジュレータ用結晶に比べ接合歪みが大きいことが判り、夏期シャットダウン中にフィンクーリング第一結晶を準備することにした。白色偏向電磁石ビームラインであるBL04B1では、順調に調整が進み、高圧実験が開始された。ダイアモンド単結晶を分光結晶とするBL45XUでは、小角散乱用二結晶分光器、構造解析用トリクロメータともに分光器からの光が確認されたが、安定性等に問題があり、夏期シャットダウン中に結晶ホルダーの改良を行うことになった。単色アンジュレータビームラインBL41XUでは、二結晶分光器の調整は比較的速やかに終了し、反射光が確認されたが、エネルギースペクトルが奇妙であり夏期シャットダウン中に原因を追及することになった。BL09XUでは、二結晶分光器の反射がなかなか見つからず、最終日前日に第二結晶の天地を入れ換えて始めて反射を見つけることができた。しかしながら、BL41XUと同様にエネルギースペクトルが奇妙であり、これも夏休みの宿題として残った。

 

 

3.夏期シャットダウン中の準備作業

 夏期シャットダウン中に、9月から調整を開始する3本の輸送チャンネルの据付・調整作業、通線作業、インターロック機器の繋ぎ込みが行われた。BL08Wについては、フロントエンド要素の遅れから、9月中旬にフロントエンドを完成させることになった。また、これらのビームラインの制御系の整備が進められた。既に調整運転を開始したビームラインについても、7月までの運転で見いだされた不具合な点を改良する作業が進められた。蓄積リングの軌道変化時に対応する機器保護上のインターロックが整備され、9月以降大電流蓄積時に挿入光源のギャップ操作が可能となった。偏向電磁石ビームライン用のフィンクーリング第一結晶が準備された。また、BL41XUとBL09XUで用いられた分光結晶のオフライン検査が行われ、納入時に結晶方位が誤って記されていたために正しい方向と逆に取りつけて調整作業を進めていたことが判明した。9月から新たに調整作業を開始するビームラインでの光学素子が準備され、また夏以前には取りつけていなかった各ビームラインの全反射ミラーが取りつけられた。

 

 

4.9月の試験調整運転

 蓄積リングの運転再開に先立ち、9月3、4日の両日、BL10XU、BL39XUの2本のビームラインについて使用前検査がJASRI安全管理室によって行われ、良好な結果を得た。8日に蓄積リングの調整運転が再開されたが(第6サイクル)、翌9日に新たに設置されたリング収納壁貫通部に関する放射線漏洩試験が行われ、全てについて良好な結果を得た。10日から14日の蓄積リング調整運転の後、15日からビームラインの試験調整運転を再開した。15日には、夏以前に設置されていた挿入光源の再調整と、機器保護用インターロックのウィンドウ設定作業を行った。これは、挿入光源の上下流にある電子軌道モニターでビーム位置を検出し、軌道が大きく変化して挿入光源からの大強度放射光が予定外の箇所に当たる恐れのある場合に、RFを落としてビームをアボートするものである。偏向電磁石ビームラインではこの日から輸送系・光学系の調整作業が始められた。16日には、夏前に調整運転を開始した7本のビームラインの内、BL45XUを除く6本で再調整作業が開始された。夏前に大電流時の光学ハッチ漏洩検査が行われていなかったBL09XU、BL41XUの検査が17日に行われ、その後もビームライン調整が進められて19日に第6サイクルを終了した。

 20日から23日の間にBL08Wでのフロントエンド作業を行い、24日使用前検査が行われた。25日に第7サイクルの加速器運転が始まり、リング調整運転の後、28日朝、新たに挿入光源を使用するBL08W、BL10XU、BL39XUでの収納壁放射線サーベイによって問題がないことを確認した後、挿入光源の調整作業に入った。これらのビームラインでは28日夜に放射光が光学ハッチに導入され、光軸確認作業、分光結晶取り付け作業が行われた。一方で、夏前に調整を開始したビームラインの内で再開が遅れていたBL45XUでの調整作業もこの日に始まった。28日深夜の実験ホール内の作業風景および中央制御室(各挿入光源のギャップ操作は、現在のところ中央制御室から行われている)の様子を図1の写真に示す。翌29日には、第二陣までのビームラインでは殆どの調整作業を概成し、第三陣のBL39XU、BL10XUでも実験ハッチまで光が届いて調整の最終段階に入った。BL08Wでは300 keVという今まで経験のない高エネルギー光を取り出すため、かなり手間取ったが、調整運転終了前日の10月2日になって、それらしい反射が確認され、さらに確認作業を続けている間に最終日を迎えた。

 

(a)BL10XUでの可視光ユニットによる光軸確認。モニター画面中央に光っているのがアンジュレータ光。フランジは、ICF70。

 

(b)BL10XU

 

(c)BL09XU

 

(d)BL08W

 

(e)BL08W光学ハッチでの安全管理室による放射線サーベイ

 

(f)BL41XU

 

(g)BL39XU

 

(h)BL45XU

 

(i)BL47XU

 

(j)中央制御室

図1 試験調整運転時の実験ホール風景(a〜j)

 

 

5.ちょっと足を延ばしてみると・・・・・

 現在調整運転を行っているビームラインは、蓄積リング棟D1扉からAゾーンを抜けてB1扉の間に集中しているが、その先に足を延ばすと、11月から調整を開始する予定の原研ビームライン(BL14B1)、冬期シャットダウン以降に調整を開始する予定の、原研軟X線ビームライン(BL23SU)、共用軟X線ビームライン(BL25SU)の建設が着々と進んでいる(図2)。また、共用軟X線ビームラインBL27SUも建設資材が整い始めている。

 

(k)BL14B1

 

(l)BL23SU

 

(m)BL25SU

図2 建設中のビームライン(k〜m)

 

 

6.おわりに

 10月3日に試験調整運転を終了し、ついに供用開始を迎えるに至った。ビームラインは一応供用に耐えるレベルまでの調整は行われたが、今後とも利用者の皆様の要望を取り入れて高度化を図っていく必要がある。今回、かなりのスピードで多数のビームラインが立ち上がったことは、共同チームが進めてきた標準化の成果といえるが、今後ビームライン毎の個性が出てくる時に、標準化と個性化をどこで折り合いをつけるかが大きな問題になってくることが予想される。

 

 

 

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya

(Vol.2, No.2, P20)

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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