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Volume 02, No.5 Pages 44 - 45

5. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SRI ’97報告 −ビームライン−
Report on SRI ’97 -Beamlines-

後藤 俊治 GOTO Shunji

(財)高輝度光科学研究センター 実験部門 JASRI Experimental Research Division

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 一言にビームライン関係といっても、フロントエンド要素技術、光学系から実験ステーション利用技術などさまざまな発表が含まれている。フロントエンド、光学系についてはそれぞれ別途報告があるので、ここで、どのあたりに照準を絞って報告したら良いのかいささか迷っている。文字どおりBeamline techniqueのカテゴリに限ってしまうと主に初日(8月4日)に講演、ポスターセッションともにおこなわれ、また、7日に一部講演がおこなわれた。ここでは初日のBeamline techniqueの講演を中心に報告したい。

 まず、招待講演としてSPring-8のM. Yamamotoにより理研専用の蛋白質結晶構造解析ビームラインBL45XUの状況が報告された。このビームラインの特徴はトリクロメータにより3波長を時分割で取り出し多波長異常分散法による構造解析が可能であることである。このトリクロマティックコンセプトは既に前回のSRI'94において紹介されているが、今回は7月の上旬にトリクロメータにより3波長の取り出しに成功した初期の結果が加えられた。この秋以降には実験ステーションに光が導かれ本格的に成果がでるものと期待される。

 ESRFからはA. Kvickが材料科学ビームラインBL2の現状について報告した。ウィグラーまたはアンジュレータからの放射光のうち2枚のPtコートSiミラーと液体窒素冷却の二結晶分光器により40〜100 keVの単色光が取り出される。分光器における熱負荷は最大10 kWまで対応できる。集光系としては、コリメータミラーにより縦方向にビームを平行化し分光器におけるエネルギー分解能を高め、分光器の第二結晶により横方向にサジタルフォーカシングし、さらにリフォーカシングミラーにより縦方向に集光する構成となっている。このタイプの光学系は今回他の発表でもいくつか見られ、標準的なものとして定着してきた感がある。

 SPring-8からもう一件、N. Kamiyaにより生体高分子結晶構造解析ビームラインBL41XUとその実験ステーションの概要について報告された。これも SRI'94の続編であり、この7月に光学ハッチまで光が導かれたこと、実験ステーション機器が具体的に整備されてきたことが前回からの進展である。

 H. AmenitschによりELETTRAにおける小角散乱ビームラインの状況が報告された。ウィグラーからの放射光を非対称カットのモノクロメータで分光後分割トロイダルミラーにより試料位置で二次元的に集光している。フォトンエネルギーは5.4、8、および16 keVに特化しているが、筋肉繊維の様に光学的に薄い試料から合金やセラミックスの様に厚い材料までに幅広く対応できる。5 × 1012 photons/s(フォトンエネルギー8 keV、リング2 GeV、250 mA時)のフォトン数が見込まれている。

 また、Compact SRの利用の一例として三菱電機のY. Ueharaにより自社の小型リングに建設されたビームラインが紹介された。このビームラインはリソグラフィー以外への応用を目指しSi、Al等軽元素の吸収スペクトル測定をターゲットにしている。0.6 GeVのリングとはいえ3.5 Tの高磁場により臨界エネルギーを高めているので1〜5 keV程度のエネルギー領域は実用上問題なく利用できそうである。遮蔽壁内にトロイダルミラーを設置し効果的にビームを集光させるように光学系が組まれ、試料位置で計算上1010 p/sのフォトン数が見込まれている。

 一方、ポスターセッションは初日ということもあってか8件の発表がキャンセルされたが、会場の狭さと暑さも手伝ってにぎわいを見せていたように思える。逆に、じっくりと見て回る余裕がなかったのが残念である。この中でSPring-8のY. Asanoによるビームラインの遮蔽に関する発表は異色のものであった。電子のエネルギーおよび利用しようとするフォトンエネルギーが高くなればなるほどビームラインの設計において遮蔽の問題が深刻になってくる。この後もこの種の研究が着実に進められることが望まれる。その他、全体としてビームラインのデザインレポート、もしくは建設完了レポートの色合いの濃いものが多く見受けられ、実験的なビームラインの評価まで含めた報告が少ないような印象を受けた。総合的な成果をみることができるのは別の機会まで持ち越しなのであろうか。次回のSRIでは遠すぎる気もするが。発表件数も前回のSRIの1/2程度であり、個人的には今一歩という印象であった。

 

熱気に満ちあふれたPoster Session会場

 

企業展示会場にて

 

 

 

後藤 俊治 GOTO Shunji

(Vol.2, No.4, P10)

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794