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Volume 02, No.4 Pages 15 - 17

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

SPring-8ビームライン制御システムについて
SPring-8 Beamline Control System

大端 通 OHATA Toru

(財)高輝度光科学研究センター 利用促進部門 JASRI Experimental Facilities Division

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概 要

 本年10月の供用開始を控え、ビームライン建設も最終段階を迎えている。現在、先行するビームラインでは、ビームライン機器の調整および試験運転が行われている。この調整運転には、ビームライン制御システムの試験運転も含まれており、これまでのところ、ビームライン制御システムは順調に機能している。ビームライン制御システムは、大別すると、

1)光学系の精密ハンドリングを主体とした制御やそれらのデータ収集系をふくんだ機器制御、および、

2)ビームラインの運転に伴う人的保護および機器保護のためのインターロック、により構成される。

本稿では1)の機器制御のためのシステム設計およびその開発の概要を示すとともに、供用開始に向けた整備計画について述べる。

 

 

1.基本設計

 SPring-8におけるビームライン制御システムは、挿入光源、基幹チャンネル、輸送チャンネルおよび光学ハッチの各種コンポーネントを制御対象としている。これらは加速器制御とユーザ実験の制御対象と複雑かつ密接に関連しており、システムの安定性、信頼性およびセキュリティの維持が重要である。

 我々は、ビームライン制御システムの構築にあたって、これまでユーザが分光器をコントロールしてきたのと同様の容易さで、挿入光源やミラー、ビームシャッター等を制御することを目標とした。そのために、全ビームラインにわたるネットワークシステムを採用し、蓄積リング制御ネットワーク(マシン系LAN)やインターロック(監視系LAN)との統合を行った。ビームラインの制御はこれまでの1台又はシリアルケーブルで結ばれた数台のコンピュータによる制御から、ネットワークで結ばれた多数のコンピュータによる制御へ変革を遂げた。

 ビームライン制御システムのソフトウェアを設計するにあたり、拡張性・保守性および柔軟性の確保についての検討を行った。その結果、SPring-8における制御システムの規格化・標準化に重点を置き、リング制御グループで開発されたソフトウェアフレームワーク1)を採用した。最終的にはリング制御グループとの統合を目指しており、長期にわたるビームライン建設において予想される、システムの維持・管理また拡張を考慮した。

 

 

2.システム構成

 ビームライン制御システムはビームライン機器を制御するためのコンピュータシステムおよびネットワークにより構成され、情報の集中と機能の分散を考慮したシステム設計を行った。

 

1)コンピュータシステム

 ビームライン制御用コンピュータシステムの概念図を図1に示す。個々のビームラインでは、ネットワーク上に分散したBL-WS(HP9000 712)とBLVME, ID-VME(HP743rt/64)により、クライアント/サーバ型のシステムを構築している。ユーザインターフェースとして、ワークステーションに接続されたX端末を用意しており、簡便な機器制御が可能となっている。バックボーンには、光Ethernet(10BASE-FX)を用いた。このネットワークはリング制御用のネットワークシステム(FDDI)にルータを介して相互に乗り入れを行っており、中央制御室におけるデータベースサーバ上でリング蓄積電流等、各種ステータス情報の集中管理システムを構築した。また、PLCを統括するBL-MASTER-WS (HP9000 715)を導入することにより、ビームラインにおけるインターロック情報の集中的な管理を行っている。これにより各ビームラインのアボート情報やディスターブ情報が一括して管理できる。

 

図1 ビームライン制御におけるネットワークコンピュータシステムの概念図

 

 

 データベースシステムとして、保守性と再利用性の観点から、既にリング制御用として運用されているリレーショナルデータベースシステム(Sybase)上への情報集中を行っている。これにより、挿入光源におけるギャップ値やステアリングマグネットの設定値、および機器保護に関わるインターロックステータス等、リング運転と密接に関わるビームライン情報の比較・検討が容易になると考えられる。

 

2)ソフトウェア

 ビームライン制御用ソフトウェアシステムを構築するにあたり、ソフトウェアの自由な拡張性を重視した設計を行った。同時に、誤操作などからの機器保護やセキュリティについても考慮した。ソフトウェアシーケンスの概要を図2に示す。上位のリクエストサーバは、実験ステーションからビームライン機器の操作を受け付け、ユーザのコンピュータシステムからのオンラインによる制御を可能にしている。標準型モノクロメータ操作リクエスト用メッセージを表1に示す。表の左側は操作リクエストのための送りメッセージである。メッセージの書式はソフトウェアフレームワークの書式規定に乗っ取って、S/V/O/Cの形態を取っている。この書式は送りメッセージ、戻りメッセージとも同様である。表の右側は操作リクエストに対する戻りメッセージのC の部分である。このことから分かるように、ユーザコンピュータ上のソフトウェアの構築により、ほぼ全てのビームライン機器の制御をオンライン化することが可能であり、実験ステーションにおける様々な制御内容に柔軟に対応していくことが可能となっている。現在、上述のシーケンスを利用したアプリケーション開発も行われており、R&Dビームライン等において、試験調整が行われている。

 

図2 ビームライン制御におけるソフトウェアシーケンスの概念図

 

表1 標準型モノクロメータ操作リクエスト用メッセージ

メッセージ(送り) (戻 り)
put/bl_47xu_stmono_energy/%fkev ok / fail
put/bl_47xu_stmono_wavelength/%fangstrome ok / fail
put/bl_47xu_stmono_angle/%fdegree ok / fail
get/bl_47xu_stmono_energy/current %fkev / broken(a) / fail
get/bl_47xu_stmono_wavelength/current %fangstrome / broken(a) / fail
get/bl_47xu_stmono_angle/current %fdegree / broken(a) / fail
get/bl_47xu_stmono/query ok / theta / y1 / phi1 / phi2 /
put/bl_47xu_stmono/stop ok / fail
put/bl_47xu_stmono/emstop ok / fail

 

 サポートするリクエストサーバへの通信手段としては、セキュリティ確保のため、シリアル通信のみとした。通信規約は以下の通りである。

通信速度9,600〜115,200 Baud
データビット8 bit
ストップビット1 bit
パリティーNone
デリミタ0x0d

 

 同時に、ビームライン機器を操作するための簡便な制御経路として、BL-WSへ接続されたX端末を用意している。ここでは、あらかじめ準備されたGUI パネルを使用して、各ビームライン機器の操作を可能としている。標準型モノクロメータ制御用のユーザインターフェースを図3に示した。

 

図3 標準型モノクロメータ操作パネル

 

 

3.おわりに

 ビームライン制御システムは10月からの供用開始を控え、様々な調整運転に対応できるシステムとして一応の完成を見た。ただし、現在のシステム構成は、機器の安定動作を保護のため、2段のクライアント/サーバの形態を取り、冗長なシステム設計となっている。これはパフォーマンスの低下の要因となっており、今後改良の余地が残されるところである。

 ビームライン制御システムに関するユーザサポートとして、機器操作パネルのマニュアル類の整備を急いでいる。同時に、操作リクエストメッセージのマニュアル化も進行中である。また、リクエストサーバへのアクセス用ソフトウェアとして、LabVIEW 用のライブラリソフトウェアの配布を検討している。

 最後に、本稿で示したリクエストサーバ用メッセージは今後改良されることが予想されるため、近く公開するマニュアルを参照していただきたい。

 

 

 

Reference

1) R. Tanaka et al., "Control System of the SPring-8 Storage Ring" Proc. Int. Conf. On Accelerator and Large Experimental Physics Control System, Chicago, Oct. 30 - Nov. 3,1995.

 

 

 

 

大端 通 OHATA Toru

昭和42年3月19日生

高輝度光科学研究センター利用促進部門

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町SPring-8リング棟

TEL:07915-8-1858 FAX:07915-8-0830

E-mail:ohata@sp8sun.spring8.or.jp

略歴:平成6年東京大学大学院博士課程金属工学研究科修了。日本物理学会、日本金属学会、日本放射光学会会員。最近の研究:固体の電子相関、制御システムの設計・開発。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794