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Volume 02, No.4 Pages 11 - 14

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

「SPring-8 安全の手引」について
An Outline of SPring-8 Safety Handbook

(財)高輝度光科学研究センター 安全管理室 JASRI Safety Office

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 SPring-8では、施設や設備の安全対策には最大限の努力を払っているが、事故や災害を未然に防止するために利用者自身の安全に対する認識が重要であることは、改めて強調するまでもない。共同利用施設であるSPring-8では、利用者は、利用者本人やその実験グループばかりでなく、周辺の実験グループの安全にも責任を負わねばならない。また、昨今の社会情勢では、利用者の不注意による小さなトラブルが、SPring-8そのものの運転を長期に亙り停止させる可能性があることも忘れてはならない。

 近く刊行される「SPring-8安全の手引」は、大型放射光施設の利用者の安全に係わる具体的な事項を取り纏めたもので、「放射線安全の手引」と「一般安全の手引」の2部から構成されている。以下にそれぞれの概要を説明する。

 

 

I.放射線安全

1.「放射線安全の手引」の構成

「放射線安全の手引」は、以下の項目から構成されている。

  1. 放射線安全管理の考え方
  2. SPring-8の放射線安全体制
  3. SPring-8の放射線管理区域
  4. SPring-8の放射線業務従事者登録と個人被曝測定
  5. SPring-8の放射線安全設備
  6. 放射線管理区域の入退と管理区域内の遵守事項
  7. 異常時の措置

 

2.放射線管理区域と放射線業務従事者の意味

 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)の第1条(目的)には、「この法律は、・・・(中略)・・・取扱を規制することにより、これらによる放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とする。」と記されている。つまり、法律は「放射線は人に危害を及ぼし得る危険なものである」との認識に立ち、放射線源という“危険要素”の取扱を“制限”することにより、作業者や公衆の安全を確保するという立場をとっている。これは、自動車を“危険要素”として、その取扱の制限により安全の確保を目指す道路交通法と類似した考え方である。放射線障害防止法における“取扱の制限”は、①取扱場所の制限、②取扱者の制限、および③取扱方法の制限からなる。

 取扱場所の制限とは、放射線源は公衆から隔離され、遮蔽その他の適切な安全措置を施した場所でのみ、取り扱えるとするもので、その区画された場所を放射線管理区域と言う。放射線管理区域は、許可申請により設定される。現在の法令では、一旦設定された放射線管理区域は、加速器が運転休止状態になろうとも解除することは出来ない。

 取扱者の制限とは、予め放射線源の取扱や放射線安全に関して教育訓練を受け、充分な知識・技能を有するもので、適切な被曝管理等を受けている者だけに、取扱業務を認めるというもので、その許可を受けたものを“放射線業務従事者”という。放射線管理区域内で行う作業は、直接放射線を取り扱う作業以外でも、法令上“放射線業務”であるとみなされるので、管理区域内で行う作業に従事するものは、総て放射線業務従事者の登録が必要である。

 但し、物品の搬入などのために一時的に管理区域に立入るものや見学者は、“一時立入り者”として放射線業務従事者の立会の下に放射線管理区域に立入ることが出来る。

 SPring-8の放射線管理区域のうち、加速器を収納するマシン収納部は機器の放射化が生じる区域なので、安全管理室では、原則的に一時立入り者の立入りを認めないことにしている。なお、例外的な事情で、これ等の区域への一時立入り者の立入りが必要となった場合には、安全管理室員の立会が条件となる。

 

3.放射線業務従事者の登録

 SPring-8の放射線業務従事者として登録されるためには、予め、①所定の電離放射線健康診断を受診し、②法令で定められた教育訓練(法令、予防規程、放射線の人体影響、取扱)を受けねばならない。しかし、既に他の施設で放射線業務従事者として登録されている者は、電離放射線健康診断で異常の報告がなく、法定の教育訓練も適切に受講していることと、被曝の記録とを、その事業所の放射線取扱主任者またはそれに準じる者が証明する書類を用意すれば、SPring-8の予防規程と管理区域入退手順などに関する短時間の教育を受けるだけで、登録することが可能である。安全管理室では、10月の供用開始を目標に、教育用のビデオを製作すべく準備中である。

 更に、供用開始以後は、海外からの研究者を放射線業務従事者として円滑に受け入れる制度を整備する必要がある。国によっては、放射線安全関係法令の規定がわが国のそれと必ずしも接続性を持つとは限らないので、その説明を含めた英語版の「手引き」やビデオの製作を検討中である。

 

4.チェッキングソースなど

 放射能量が定義量(3.7 MBq)未満のチェッキングソースは、放射性同位元素として法規制の対象にはならないが、SPring-8では、それ等の線源に関しても管理を行うこととしている。即ち、総てのチェッキングソースは、購入その他の方法でSPring-8に持ち込まれる時点で、安全管理室の台帳に登録し、その使用に当たっては安全管理室からの貸出という形式をとる。貸出期間は最長6ヵ月で、線源の所在確認を経て何度でも継続することができる。これ等の措置は、共同利用者がSPring-8に持ち込む線源に対しても、同様に適用され、共同利用者が実験を終了し線源を持ち帰るときまで継続する。こうした措置は、いささか厳しすぎると感じる向きもあろうが、たとえ定義量未満のチェッキングソースといえども、万一紛失その他のトラブルがあれば、SPring-8 の運転が止まる可能性があることを思い起こして欲しい。

 一方、安全管理室では、実験ホールで放射性のサンプルを使用することについて、それが定義量(3.7 MBq)未満で密封状態にある場合に限り認めることの可能性を検討中である。現在検討中の案では、そのようなサンプルは、上記の定義量未満のチェッキングソースと同じ管理方法が適用される。また、サンプルは、実験後必ず持ち帰り、SPring-8での廃棄は行わないこととする。そして、サンプルの“密封性”の判定や、その使用の際の付帯条件の設定は、個々のサンプル毎に安全管理室が行うものとする。なお、放射能量が定義量を超えるサンプルや、“密封性”に問題のあるサンプルは、実験ホール内で使用することは認めない。

 

 

II.一般安全

1.はじめに

 本手引きは、SPring-8を利用して実験を行う利用者の安全を確保するための基本的な考え方及び遵守事項等をまとめたものである。

 利用者は、本手引きによる一般的事項の教育のほか、実験ステーション等における設備、装置の操作手順、安全対策等の特別な教育、講習を受け、実験の特徴と施設内の安全設備等を十分に理解するとともに、取り扱う装置類の運転要領等を十分熟知して、実験を安全に進めなければならない。従って、実験を開始する前に教育、講習の日程も組み込んでおく必要がある。

 一般安全の手引きの構成を以下に示す。

  1. はじめに
  2. 基本的な注意
  3. 異常時、非常時の対応措置
  4. 救急措置
  5. 化学薬品及び有害物質の安全取扱い
  6. 電気装置の安全取扱い
  7. レーザーの安全取扱い
  8. 高圧ガス装置・ガスの安全取扱い
  9. ボイラー及び圧力容器の安全取扱い
  10. 高温・低温装置の安全取扱い
  11. 放射光ビームラインの安全対策
  12. 災害に対する予防策(火災、爆発、地震、落雷、停電)

 

2.基本的な注意

 実験作業は危険を伴うものであり、どんなに小さな実験にも油断をしてはならない。事故、災害は物的な損害や身体的な被害とともに精神的な打撃が大きい。自分を傷つけ、他人まで巻き込むことを考えると、事故、災害を起こさないためのどんな努力も怠ってはならない。

①実験責任者もしくはビームライン担当者(以下「実験責任者等」という)が行う安全に関する教育訓練を受講するとともに、「実験責任者等」の指示に従って実験を行うこと。無理なスケジュールや不備な装置による実験は事故、災害のもとであるので、周到な準備をして実験を行うこと。また、原則として、夜間、休日の単独実験は行なってはならない。

②使用する装置などの点検は勿論のこと、身支度にも実験に応じた準備が必要である。必要に応じて、安全帽、手袋、保護用眼鏡、防護マスクなどの保護具を着用すること。

③事故、災害は予知できないが、危険度は予知できるので、未知の実験でも危険度を推測して対策をたてること。とくに、火災と有害ガスの発生、苛酷な反応条件(高温、高圧など)には、万全の注意が必要である。

④事故、災害発生時の対策をたててから実験を始めること。元栓、スイッチ、消火器等、避難口及び通路の位置並びに操作方法及び緊急連絡の方法、手段を事前に確認すること。

 

3.異常時、非常時の対応措置

3.1 一般的措置

 事故あるいは災害が発生しまたは発生する恐れがあるときは、次の原則に基づき措置を講じること。

①安全保持:人命及び身体の安全を第一とする。

②通報:異常事態を発見した場合は、直ちに、付近にいる者及び「実験責任者等」に通報すること。

③事故の拡大防止:火災など初期活動が重要な異常事態が発生した場合には、付近にいる者と協力して、安全保持の原則を保ちつつ拡大防止に努めること。

④過大評価:事故の危険性は、過大に評価することがあっても、過小に評価することがないようにすること。

 

3.2 事故の通報要領

 放射線、火災、人身事故等の緊急事態を発見した場合は、次の要領により緊急電話、ページング等により関係箇所に的確迅速に通報すること。

①いつ

②どこで

③どんな事故が(放射線事故、火災、人身事故、その他)

④その内容は(発生状況、拡大性の有無、負傷者の有無、その他)

⑤通報者の所属・氏名、連絡先(電話番号)

 

3.3 火災の場合の措置

 火災が発生したときは、もよりの火災報知器のボタンを押し、かつ通報の要領に従い通報すること。また、直ちに初期消火と延焼防止に努めること。

 

3.4 地震の場合の措置

①地震が発生したときは、自分の身体の安全確保をしつつ、出火防止のための措置等を講じること。

②地震が収まり設備等の運転を再開するときは、点検等決められた措置を講じること。

 

 

4.化学薬品及び有害物質の安全取扱い

 SPring-8ユーザーガイドにも記述してあるが、平成9年10月のSPring-8の供用開始時には、実験試料の調製設備及び濃厚な実験排液の処理設備は用意されていないため、利用者は調製済の実験試料を持ち込み、実験を行うことを原則とする。やむを得ず試薬等を持ち込んで実験試料の調製等を行う必要がある場合は、「化学薬品、生物試料等持込み承認申請書」をJASRI利用業務部に事前に提出して、安全管理室の承認を得る必要がある。

 また、「承認申請書」には、当該化学薬品等の「化学物質等安全データシート」(平成4年7月1日労働省告示第60号「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」で、化学物質等の危険性又は有害性を表示することにより、その理解を深め、適切な取扱を促進することにより労働災害の防止をはかることを目的として制定されたもの。一般に、該薬品の製造業者・取扱い業者が準備している。表示する事項は、①名称、②成分及びその含有量、③物理化学的性質、④危険有害性の種類、⑤危険有害性の内容及び程度、⑥貯蔵又は取扱上の注意、⑦事故時等における応急処置、その他である)を添付すること。

 実験試料の調製等を行う場合は、指定された場所で行い、実験終了後の試料、試薬ならびに2次洗浄水までの濃厚排液は各自責任を持って所属機関まで持ち帰ること。

 また、実験排液は絶対に「流し」に捨てないこと。これを守れない場合は実験の中止を要請することになる。規制物質が排出口で規制値を超えた場合には、貯留槽内の処理水の除去が必要になり、他のビームラインの運転停止にもつながるおそれがあるためである。

(SPring-8の排水処理施設の概要については、本利用者情報誌Vol.2 No.3 P12〜13に記載しているので、そちらも参照ください。)

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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