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Volume 02, No.4 Pages 7 - 10

1. ハイライト/HIGHLIGHT

輸送チャンネル・光学系試験調整運転
Commissioning Report on Transport Channels and Optics

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya[1]、竹下 邦和 TAKESHITA Kunikazu[2]、後藤 俊治 GOTO Shunji[3]、木村 洋昭 KIMURA Hiroaki[3] 

[1]日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team、[2](財)高輝度光科学研究センター 利用促進部門 JASRI Experimental Facilities Division、[3](財)高輝度光科学研究センター 実験部門 JASRI Experimental Research Division

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1.はじめに

 3月下旬の蓄積リングの試験調整運転開始以来、加速器の調整は順調に推移し、5月12日の週より第1陣ビームライン2本(BL02B1、BL47XU)の試験調整運転を始めることになった。本号では、ビームライン試験調整運転の状況を収納部内の挿入光源・基幹部に関しては北村英男氏が、実験ホール側の輸送チャンネル・光学系に関しては我々が取り纏めて報告するが、2週間強の短期間に行われた作業はSPring-8ビームライン建設チームの総力を結集して行われたものであり、著者等はたまたまレポーターの役割を務めているのにすぎない。今回の試験調整運転の最低到達目標は、6月中旬に予定されていた使用時施設検査に合格する水準までの調整を行うことであり、具体的には定格出力近くでの実験ステーションへのビーム導入と、その時に光学ハッチ・実験ハッチが放射線安全上の遮蔽性能を持っていることの確認であった。

 事前の計画作成段階において、(a)5月12日からの週には、アンジュレータビームライン(47XU)では、挿入光源調整、ビームポジションモニター試験等収納部内の調整作業を中心に実施し、一方偏向電磁石ビームライン(02B1)の分光器調整を並行して実施し、この週の内に両者とも最終段階まで持ち込むこと、(b)引き続き5月19日からの週で、アンジュレータビームラインでの分光器調整を実施し、実験ハッチまで単色放射光を導入すること、(c)放射光導入調整の各段階に於て、安全管理グループによる放射線サーベイを実施し、安全を確認した後に次のステップに進むこと、の3点を確認した上で試験調整運転に入った。以下では、2つのビームラインに分けて、時系列的に試験調整運転状況を報告する。

 

 

2.BL02B1の試験調整運転

 5月14日(水)にBL02B1でビームシャッターを開き、放射光ビームが初めてマシン収納部から実験ホール光学ハッチに導入された。最初は、蓄積電流0.14 mAで、光学ハッチ内のフロントエンドBe窓下流で蛍光板を用いて光軸を確認した。次に、二結晶分光器真空槽内の第一結晶台上にマウントされた水冷銅ブロック上で、ビーム位置を確認し、これを用いて分光器の位置調整を行った。この銅ブロックを散乱体とした光学ハッチ周囲の放射線レベル測定が安全管理グループによって蓄積電流0.14 mAおよび1 mA時に行われた。この後、銅ブロックを撤去し、第一結晶、第二結晶の取付を行った。試験調整運転時に用いられた結晶は、ピンポスト水冷のSi(311)である。オフラインでの結晶位置調整、角度調整、結晶冷却ブロックへの水冷配管を行った後、冷却水循環試験、冷却配管の振動抑制対策を行い、真空排気を始めて次の日に備えた。撤去された水冷銅ブロックは、BL47XUの二結晶分光器に取り付けられた。夜間は、蓄積電流15 mA程度でビームシャッター上流のアブソーバーの光焼出しを行った。

 5月15日(木)には、蓄積電流1.6 mAで二結晶分光器の調整を開始した。実験ハッチ内に置かれたNaIシンチレーションカウンターで、散乱X線測定を行うことにより、調整開始後程なく実験ハッチに単色放射光が導入された。この段階で、安全管理グループにより、実験ハッチ周囲の放射線レベルの測定が行われ、漏洩の無いことが確認された。単色放射光を実験ハッチに導入した状態で、スリット等の輸送チャンネル機器の調整作業が行われ、最大水平開き角の放射光ビームが実験ハッチまで通るように輸送チャンネル機器の再調整が行われた。

 5月16日(金)は、分光器の細かい調整作業を開始し、入射角度による出射位置変動、ブラッグ角変化とスペクトル移動の関係等の測定が行われ、二結晶分光器がほぼ設計通り機能していることを確認した。また、広い水平角度幅の単色放射光ビームを実験ハッチに導入した状態での放射線レベル測定が安全管理グループによって蓄積電流1.1 mA時に行われ、漏洩の無いことが確認された。

 5月17、18両日の加速器運転停止、5月19日の加速器立ち上げ、5月20日の蓄積リングマシンスタディを経て、5月21日(水)に、輸送チャンネル・光学系の試験調整運転を再開した。

 5月21日は、ほぼ全スタッフがBL47XUでの作業に集中したため、BL02B1での作業は小休止状態となった。5月22日(木)には、蓄積電流15 mAで実験ハッチまで放射光を通し、光学ハッチ、実験ハッチ周囲での放射線レベル測定が安全管理グループによって行われた。5月23日の加速器マシンスタディをはさんで、5月24、25の両日、いくつかの吸収端測定による角度の絶対値較正、定位置出射調整が行われ、第一結晶の完全性に問題はあるものの使用時検査に対応し、且つユーザー実験にもある程度対応できるレベルでの調整作業が終了した。

 使用時検査終了後に、第一結晶水冷ホルダーを交換し、可変傾斜配置でのエネルギー走査試験を行い、また、第二結晶湾曲機構を取り付けて、可変湾曲定位置出射サジタルフォーカシング試験を行うことを予定している。

 

 

3.BL47XUの試験調整運転

 アンジュレータビームラインBL47XUでの試験調整運転時の最低達成目標は、現状の変更申請に於ける定格である8 GeV、20 mA、アンジュレータ最小ギャップ8 mmにできるだけ近いレベルでの実験ハッチまでのビーム導入と、遮蔽性能試験であった。

 5月21日(水)には、蓄積電流1 mA、アンジュレータギャップ20 mmでビームシャッターを開き、アンジュレータビームが初めて実験ホールの光学ハッチ内に導入された。先に、BL02B1より47XU二結晶分光器第一結晶台に移設されていた水冷銅ブロック上で光軸の確認を行い、分光器の位置調整を行うとともに、この銅ブロックを散乱体とした光学ハッチ周囲の放射線レベル測定が安全管理グループによって蓄積電流1 mA/アンジュレータギャップ20 mm時および3.5 mA/8 mm時に行われた。この後、銅ブロックを撤去し、第一結晶、第二結晶を取り付けた。ここでの第一結晶は、傾斜配置の水冷ピンポストSi111結晶であり、第二結晶は間接冷却されている。オートレベル等でのオフライン位置調整・角度調整後、真空排気を開始し、未明から結晶調整作業に入ったが、開始直後に実験ハッチに単色アンジュレータ光が導入され、この日の作業はここまでとした。

 5月22日(木)には、最小ギャップ8 mm、蓄積電流15 mAでのビームシャッター閉状態での収納部周辺放射線レベルの測定が安全管理グループによって行われ、問題が無いことを確認した。蓄積電流が12 mA程度に落ちた時に、分光器の第一結晶を退避させて分光器内の銅製水冷ビームキャッチャーにビームが当たる状態で、光学ハッチ周囲の放射線レベル測定が安全管理グループによって行われ、問題がないように対処した。その後、アンジュレータギャップを20 mmに開いて、二結晶分光器の再調整を進め、実験ハッチ周囲の放射線レベルの測定が安全管理グループによって行われ、問題が無いことを確認した。調整中に、インターロックロジックの一部が、過剰に安全側に寄っていることが判明したが、この部分の再検討を進め夏期シャットダウン時に対処することとした。深夜は、蓄積電流18 mA、アンジュレータギャップ8 mmでフロントエンド機器の放射光焼出しが行われた。

 5月23日の加速器マシンスタディを挟んで、5月24日(土)、25日(日)の両日に、蓄積電流14 mA、アンジュレータギャップ20 mmで二結晶分光器の細かい調整作業が行われた。赤外カメラによる第一結晶表面ビーム照射部の温度測定を行ったが、ビームオン/オフでの温度変化は観測されなかった。測定限界が0.1℃であることから、現在想定されている最大出力に外挿しても結晶の温度上昇は高々数℃であることが見積もられ、ピンポスト冷却が予想通りの性能を発揮していることが確認された。しかしながら、結晶内の水路に起因すると思われるパターンがビームイメージ上に観測され、また接合歪みによると思われるロッキングカーブ幅の増加が観測されている。これらへの対処は今後の課題となる。数種類の金属箔の吸収端測定により、分光器の機械的な角度原点と結晶照射角の角度原点の間のオフセットを測定し、これを補正する作業を行った。この後、二結晶分光器を10 keVから36 keVまでスキャンして得られたアンジュレータスペクトルを、図1に示す。この測定は、実験ハッチ内のビームパス上の空気からの弾性散乱X線をNaIシンチレーションカウンタ空気の散乱能、分光結晶の回折角度幅に対するエネルギー補正は一切行っていない。また、分光器スキャン時に二つの結晶の角度チューニングも行っていない。ここでのエネルギー範囲に対応するブラッグ角範囲は3.2゜〜11゜であり、この間では平行配置のチューニングをしなくても反射は外れない。これは、BL02B1の偏向電磁石ビームライン用二結晶分光器でも同様であった。

 

図1 BL47XUで測定されたアンジュレータスペクトル。アンジュレータギャップ:20 mm

 

 5月27日(火)に蓄積リングで真空トラブルが発生し、6月2日(月)の復旧までに1週間を要した。このため、アンジュレータビームラインでの最低達成目標である最小ギャップ(8 mm)、大電流での分光器調整は、6月3日(火)夜から始められた。蓄積電流18 mA、アンジュレータギャップ8 mmで、アンジュレータ光の芯を中心として1 mm角のスリットで切り取って結晶に入射した場合の赤外測定でビームオン/オフによる照射面の温度変化は確認されなかった。分光器を約1週間放置してあったので、二結晶間の角度の若干の調整を必要としたが、すぐに終了し、8 mmギャップでのスペクトル測定が行われた(図2)。測定方法は図1のスペクトル測定時と同様である。6月4日(水)には、ギャップ8 mm、蓄積電流18 mAで、分光器をアンジュレータ3次光のピークに固定して光学ハッチ、実験ハッチの放射線漏洩検査が安全管理グループによって行われ、漏洩のないことが確認された。6月5日(木)には、インターロック動作試験が行われ、所定の性能をもつことが確認された。

 

図2 BL47XUで測定されたアンジュレータスペクトル。アンジュレータギャップ:8 mm

 

 

4.おわりに

 ビームラインの試験調整運転は、順調に進んでいる。夏のシャットダウン前に、更に5本のビームラインで調整を終了し、シャットダウン中に5本のビームラインの挿入光源・フロントエンド設置作業を行って9月に試験調整運転をおこない、10月の供用開始に臨むべくスケジュール調整が進められている。

 

 

 

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya

(Vol.2, No.1, P12)

 

 

竹下 邦和 TAKESHITA Kunikazu

昭和36年8月26日生

(財)高輝度光科学研究センター

放射光研究所利用促進部門 研究員

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町1503-1

TEL:07915-8-1847 FAX:07915-8-0830

略歴:平成2年東北大学大学院理学研究科博士課程(原子核理学専攻)修了、同年文部省高エネルギー物理学研究所放射光実験施設測定器研究系助手、8年高輝度光科学研究センター利用促進部門研究員、理学博士、日本物理学会、応用物理学会、日本放射光学会会員。趣味:スキー、ゴルフ。

 

 

後藤 俊治 GOTO Shunji

昭和37年1月5日生

(財)高輝度光科学研究センター

放射光研究所実験部門 副主幹研究員

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町 SPring-8リング棟

TEL:07915-8-0831 FAX:07915-8-0830

略歴:昭和61年東京大学工学系研究科物理工学専門課程修士課程修了、同年富士通株式会社に入社、放射光X線リソグラフィーの研究に従事、平成7年5月より(財)高輝度光科学研究センター放射光研究所研究員、日本放射光学会、日本結晶学会、応用物理学会会員。最近の研究:ビームラインの開発など。趣味:’70〜’80年代のCD収集。

 

 

木村 洋昭 KIMURA Hiroaki

昭和38年12月10日生

(財)高輝度光科学研究センター

放射光研究所実験部門 副主幹研究員

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町

TEL:07915-8-0831 FAX:07915-8-0830

E-mail:kimura@spring8.or.jp

略歴:平成5年総合研究大学院大学数物科学研究科放射光科学専攻博士課程修了、同年理化学研究所SR研究協力員、平成7年から(財)高輝度光科学研究センター。理学博士。応用物理学会、日本放射光学会会員。最近の研究:X線多層膜光学素子、軟X線領域の偏光測定。

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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