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Volume 02, No.3 Pages 11 - 14

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

SPring-8の施設管理について
Facility Management at SPring-8

市原 正弘 ICHIHARA Masahiro

(財)高輝度光科学研究センター 施設管理部門 Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI) Facility Management Division

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1.はじめに

 施設管理部門はSPring-8における電気、水の供給から排水処理に到る全ての一般ユーティリティーと、入射系及び蓄積リング系のマシン電源及びマシン冷却設備といった研究支援施設の大元を管理し、その運用管理を行っている部門であります。平成9年10月の供用開始を迎えるにあたり、これら施設の維持管理に万全を期すと共に、研究支援業務の安定達成を目標に努力しているところです。

 理解を深めていただく上で、SPring-8サイト内にある施設管理部門に係わる諸施設を紹介しておきますが、建家のあるところそれは全て管轄となり守備範囲は相当な広さとなっておりますので、紙面の都合上今回は一般ユーティリティーの代表例とマシン直結のユーティリティーについてご紹介することにいたします。特に一般ユーティリティーでは、実験に使用出来る薬品とその処理装置、マシン直結のユーティリティーに関しては、実験及びSPring-8全体そのものの性能に直接関与するところが多く、この部分に関して設計者の立場から紹介の重点をおいてみたいと思います。

 

施設管理部門 維持管理施設

 

 

2.施設の概要

(1)電源設備

 一般ユーティリティーである電源設備は、77 kV特別高圧受電設備としてSPring-8サイト内全域の全負荷電力を賄う設備として設けられている。

 

①特別高圧開閉所

 関西電力㈱テクノポリス変電所から77 kVを2回線で受電し、特別高圧第1変電所(蓄積リング系用変電所)と特別高圧第2変電所(入射系用変電所)にそれぞれ77kVで給電する箇所がこの開閉である。

 

②特別高圧第1変電所

 77 kVを6.6 kVに変圧し蓄積リングマシン系給電用に20 MVA 2系統を給電し、蓄積リング建家及び給水施設棟などに6.6 kV/20 MVA 1系統で給電している。特に重要な設備としては、後述の蓄積リング用高調波フィルタ設備をこの変電所に併設してある。

 

③特別高圧第2変電所

 77 kVを6.6 kVに変圧し線型加速器電源用に6.6 kV/5 MVA 1系統を給電し、シンクロトロン電源として6.6 kV/25 MVA 1系統を給電している。更に、入射系建家のほか排水処理棟等の電源用としては6.6 kV/5 MVA 1系統を給電している。

 また、入射系加速器系には直接給電ではなく、線型加速器・シンクロトロンに対してそれぞれ二次変電設備を設けマシン特有のニーズに対応した設備としている。それらは、以下の④〜⑥であり、特有の対応対策は⑦〜⑧である。

 

④線型加速器二次変電設備

 6.6 kVで受電したものを高圧変圧器4台で100 V〜400 Vの所要電圧に降圧し、低圧配電盤から線型加速器用マシン電源及び制御電源として給電している。また、この低圧配電盤からは、線型加速器冷却設備用電源も給電している。

 

⑤シンクロトロン二次変電設備

 6.6 kVで受電したものを、低圧マシン電源、冷却設備電源用及び制御電源用に分け給電している。低圧マシン電源、冷却設備電源用は高圧変圧器4台で200 V〜400 Vの所要電圧に降圧し、低圧配電盤から給電し、制御電源用としては、高圧変圧器2台で100 V〜200 Vの所要電圧に降圧し、低圧配電盤から給電している。

 

⑥SSBT⑵二次変電設備

 蓄積リングD変電設備から6.6 kVで受電したものを、高圧変圧器1台と低圧変圧器1台で100 V〜200 Vの所要電圧に降圧し、低圧配電盤からSSBT⑵マシン及びその制御電源用として給電している。

 

⑦高調波抑制対策

 SPring-8マシン系から発生する高調波電流発生量を抑制し、SPring-8施設以外への流出量を抑えることが必要であり、この対策を講じている。この対策は、「契約電力単位kWあたり電流流出抑制目標値」(電気協同研究第46巻第2号)に基づき設計したものである。

 

⑧無効電力補償装置

 この装置は特にシンクロトロン電磁石電源(B,Q)系統から約1秒周期で発生する最大約12,000 KVarもの膨大な無効電力を抑制し有効利用化するため、無効電力補償装置(SVC)を設置したものである。本装置については、シンクロトロンの試験調整運転中にも数回の精密調整を行い、初期設計以上の性能にグレードアップしたものとなっている。

 

(2)排水処理施設

 SPring-8全体から発生する排水を処理するものであり、排水規定放流水質に処理するが処理能力は最大250 m3/日(8時間/日稼働)である。排水処理施設棟には、SPring-8サイト内で種々発生する排水の適正処理を行うため①〜⑤の装置を設置し、その処理対応を行っている。

 

①原水・調整装置   : 大きな挟雑物及び油分除去

②凝縮沈澱水処理装置 : シアンや重金属類等の除去

③砂濾過・活性炭装置 : SS分や有機物除去

④汚泥処理装置    : 処理過程に於ける発生汚泥の処理装置

⑤水質自動分析装置  : 放流前の調整水質を計測しそのデータ取得と記録

 

 このような装置で処理した上で初めて「上下水道企業団」の許可を得て「同企業団」へ放流し、さらに総合調整(科学公園都市全体)されて「千種川」へと放流される。実験者の皆様にあってはこのような事情をご配慮の上取扱いに注意を要する物質とその排水につきましては、「SPring-8における安全の手引」を参照の上で実験をおこなっていただきたいと思います(原則として、実験終了後の試薬および2次洗浄水までの濃厚廃液は各自責任をもって持ち帰り下さい)。

 参考までに、平成10年迄に使用できる化学薬品は以下のものです。

 「カドミウム及びその化合物」「鉛及びその化合物」「銅及びその化合物」「亜鉛及びその化合物」「鉄及びその化合物」「セレン及びその化合物」「マンガン及びその化合物」「フッ素化合物」「ヒ素及びその化合物」「フェノール類」「トリクロロエチレン」「テトラクロロエチレン」「ジクロロメタン」「四塩化炭素」「1,2ジクロロエタン」「1,1ジクロロエチレン」「シス-1,2ジクロロエチレン」「1,1,1トリクロロエタン」「1,1,2トリクロロエタン」「1,3ジクロロプロペン」「ベンゼン」

 

(3)RI廃液処理装置

 RI(放射性同位元素)を用いた実験を行う場合、放射線による外部被爆もさることながら放射性物質による汚染や内部被爆に、より重点をおいた管理が必要となる。このため、その実験に供するRI実験棟が設置されている。

 棟内の実験エリアは放射線管理区域とし、物理的にも他のエリアと区画されているだけでなく、空調・排気・排水の各系統も他から独立させて汚染の拡大を防ぐよう配慮されたものとなっている。その管理区域内から発生する排水は、予めその放射能濃度を測定し排水基準を満たすような処理を講じなければSPring-8施設の外へ放流出来ない。当初はRI実験棟内で発生する廃液のみに限定して設計をしたが、その後SPring-8施設内全体の放射性廃液の処理をも処理可能なものに設計変更した。その処理能力は、ドレン水系で90 m3/年(8時間/日稼働)・実験水系で32.4 m3/年(8時間/日稼働)と小規模である。なお、その処理水濃度は、おおよそ10万分の1に低減され、一方濃縮液については100倍の濃度に濃縮される設計である。

 

(4)マシン冷却設備

 このマシン冷却設備は、熱負荷機器の熱除去と電気的な絶縁を兼ねて一次冷却水に純水を用いた設備であり、マシン直結のものである。

 

①精密温度制御部(線型加速器冷却設備)

 この精密温度制御部とは、SPring-8の入射系マシンに属する線型加速器の熱負荷機器を冷却する設備の総称であり、その要求される温度制御レベルの違いにより、精密温調系と非温調系の2系に大別される。

 精密温調系とは、線型加速器の加速管本体を冷却する系統であり、温度制御精度についてその設定温度の±0.1℃(27.5℃〜30.5℃の任意の温度において)という精度が要求されるものでありこの名称がある。冷凍機及び電気ヒータの容量制御を応用し、27台の加速管を15グループに分けて各々個別に温度管理をしている。個別電気ヒータの制御方式は、ヒータ入口側の温度検出器で得た情報でヒータ上昇温度の予測を行うと同時に出口側の温度検出器で得た情報も用いて演算を行っており、フィードフォワード制御である。この温度検出センサーについては常温付近での精度を±0.03℃とする製品をメーカーと共同で開発しこれを使用した。また急激な温度負荷変動に対し設定温度精度の安定化対策としては、クッションタンクを設置しその温度変動を平滑化させた。尚、これらの精密温度制御方式により温度安定達成時間の大幅な短縮が出来た。このことにより、1日2回の出射タイミング以外の線型加速器の多目的利用(例=ニュースバル計画、加速器・ビームラインR&D実験)の際に時間的余裕を持って対応することができる。

 非温調系とは、温度制御精度が汎用技術の範囲であり、取り立てて目新しさはない標準的冷却設備である。

 

②シンクロトロン冷却設備

 この冷却設備は、シンクロトロン電磁石・電磁石電源・高周波加速空洞・SSBT電磁石の各系統を直接冷却する系統とクライストロン冷却系・クライストロンコレクタ部冷却系を間接的に冷却する系統に分けて構成されている。

 この冷却設備は、温度制御精度が汎用技術の範囲であり、特筆するものはない。但し、周長約400 mと長くて曲率を持った配管の熱膨張収縮対策としてビクトリックジョイントと呼ばれる内圧利用の自己シールジョイントを採用しており、工法及び使用機器としては目新しいものである。この結果、従来使用のエキスパンションジョイント以上の効能が認められた。これによりスペースの削減と曲率対応が簡便に出来、配管を直管のまま使用できるという結果が得られた。尚、この冷却設備の温度制御精度は、35℃±5℃と比較的楽なマシンニーズであり完全に満足されている。

 

 

3.あとがき

 守備範囲の広範にわたる施設管理部門でありますが、担当者一同研究支援という責務を認識し、24時間体制で管理運営を行っております。

 今後は、ユーザーサービスも計画をしておりますので、供用開始後には尚一層の協力体制をと心掛けております。

 

 

 

市原 正弘 ICHIHARA Masahiro

昭和16年1月21日生

JASRI施設管理部門

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町 SPring-8リング棟B1 施設管理部門

TEL:07915-8-0813

FAX:07915-8-0876

略歴:昭和35年県立水戸工業高校機械科卒、日本原子力研究所研究炉管理部研究用原子炉の建設プロジェクト、運転維持管理とその改造計画に25年従事。原子炉の共同利用等協力に5年、原子力船「むつ」の原子炉立ち上げを希望しその機能試験に従事、完成後原研大型放射光施設開発部にて共通設備の設計とその施工管理に従事。共同チーム施設管理グループリーダーを経て、現JASRI施設管理部門次長。趣味:空を飛ぶ事とその機体製作。奇人変人の一人

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794