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Volume 02, No.2 Pages 15 - 20

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

実験ホール内輸送チャンネルの建設状況(その3)
Present Construction Status of Transport Channels (No.3)

石川 哲也 ISHIKAWA Tetsuya

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group

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1.はじめに

 播磨では、今年の冬は天候が不順で1月下旬から2月中旬まで雪の降らない週はない。SPring-8に登ってくる道路は4本あるがどれも急坂があり、雪が積もると人・物の運搬に大きな支障がでる。輸送チャンネル建設も佳境にさしかかり、毎日のように物品の搬入が行われているが、雪による納入遅れや作業の遅延が発生しており、ビームライン建設のスケジュール確保に苦労している。

 しかしながら、先行するビームラインでは実験ホール内輸送チャンネルはほぼ完成の域に達しており、1月下旬から、実験ステーション内の測定装置の納入も始まっている。蓄積リングと2本の放射光ビームライン(BL47XU、BL02B1)の運転開始に必要な許可使用に係る変更許可申請が1月初旬に行われ、順調に推移すれば2月下旬の使用前検査、5月下旬の使用時検査を経て、当該ビームラインでは6月から放射光ビームによる輸送チャンネル光学系の調整が開始できる。既に前々号でお知らせした通り、若干の遅れでBL01B1、BL04B1、BL09XU、BL41XU、BL45XUの5本のビームラインで同様な光学系調整が開始できるようなスケジュールで、第2陣の変更許可申請準備が進められている。さらに、9月中にBL08W、BL10XU、BL25SU、BL39XUで光学系調整を開始することを目標として、スケジュール調整が行われている。

 建設状況報告も3回目となったが、前2回行ってきた「定点観測」写真を今回も掲載するので、進捗状況をご確認頂きたい。今回は、ビームライン毎に2月中旬現在での現状を報告する。

 

 

2.建設状況

(a)BL47XU

 標準的なX線アンジュレータビームラインであり、蓄積リング運転と同時に放射線使用施設変更許可申請を行っている2本の内の1本である。従って、2月下旬の使用前検査時までにビームラインとして物理的に完成している必要がある。

 輸送チャンネル本体の組立、各コンポーネントへの配管・結線作業は1月末に終了し、各コンポーネント単体としての動作確認が行われた。また、全体を繋げた状態での真空排気試験が行われた。フロントエンド部分の真空ベーキングのため、一時フロントエンドとの接続部を取り外して作業が進められたが、使用前検査までには元に戻される。インターロックシステムも既に納入され、ロジックチェック及び関連機器との接続作業の後、動作確認試験が行われた。放射線シールドハッチの機械的な組立作業が終了し、自動扉の開閉試験や、インターロック関連のリミットスイッチ類の検査が進められてきた。

 インターロックシステムは、ビームライン系のみならず加速器系、安全管理系等、SPring-8の全系に関わっており、しかも使用前検査の重要対象項目である。このため、2月初旬に安全系インターロックシステムとの接続試験を行い良好な結果を得た。また、インターロック動作および遮蔽に関して、2月中旬に使用前検査に備えた自主検査をビームライン建設グループの立会の元に安全管理グループが実施し、これも良好な結果を得た。

 ビームライン建設グループでは、各コンポーネント、インターロックシステム、ハッチ等の遮蔽に関して検査基準を作成し、自主検査を進めている。ここでの検査要領の一部が、蓄積リング運転開始後の定期検査時に検査要領として用いられる予定である。

 実験ステーション機器に関しては、1月末に2つのステーションに設置される2台の回折計が納入され、実験定盤がステーション内に据付られたが、本格的な機器調整は使用前検査終了後に開始される予定である。

 ビームライン制御システムのハードウェアはかなり以前に揃っているが、ソフトウェアに関しても製作作業が急速に進展している。これは、全ビームラインに共通する事であるから項を改めて述べる。

 

図1 BL47XU

 

(b)BL02B1

 標準的な偏向電磁石X線ビームラインであり、BL47XUと同様に蓄積リング運転と同時に放射線使用施設変更許可申請を行っている2本の内の1本である。輸送チャンネルの建設状況はBL47XUとほぼ同じであり、全ての作業が並行して進められている。2月中旬に実施された自主検査において、いくつかの施工上の不具合が判明したが、直ちに改善措置がとられ再度の自主検査を行って良好な結果を得た。

 

図2 BL02B1

 

(c)BL01B1

 標準的な偏向電磁石X線ビームラインであり、BL02B1と同じ構成となっている。このビームラインは第2陣として変更許可申請を予定している5本の内の1本であり、使用前検査を目前に控えた前述の2本のビームラインに較べると若干の時間的余裕がある。ビームライン建設グループの多数のメンバーが第1陣ビームラインの完成に向けての残作業に従事し、2月下旬の使用前検査終了後に第2陣ビームライン完成へ向けての詰めの作業に入れるのが実態である。

 標準偏向電磁石X線ビームラインでの傾斜架台を含む輸送チャンネル本体の組立、各コンポーネントへの配管・結線作業は1月中に終了し、各コンポーネント単体としての動作確認が行われた。また、全体を繋げた状態での真空排気試験が行われた。放射線シールドハッチでは、構造物の建設は終了したが、2月末に向けて自動扉の調整、水・圧空配管確認、電気錠調整、補強工事等いくつかの残作業が進められる。

 インターロックシステムはロジック上はBL02B1と同一であるが、個別機器の動作試験を2月末に始める予定でスケジュール調整が行われている。

 

図3 BL01B1

 

(d)BL41XU

 標準的なX線アンジュレータビームラインであり、BL47XUにミラーを2台加えた構成となっている。このビームラインも第2陣として変更許可申請を予定している5本の内の1本である。

 輸送チャンネル本体の組立、各コンポーネントへの配管・結線作業は2台のミラーを除いて1月中に終了し、各コンポーネント単体としての動作確認が行われた。また、ミラー設置箇所をダミー管に置き換えた状態での真空排気試験が行われた。放射線シールドハッチでは、構造物の建設は一部の塗装を残しており、自動扉の調整、水・圧空配管確認、電気錠調整等いくつかの残作業が進められていて、2月下旬に最終検査を行う。インターロックシステムでは、各コンポーネントとの結線作業が進められており、2月下旬に個別動作試験及び総合動作試験が予定されている。

 

図4 BL41XU

 

(e)BL09XU

 標準的なX線アンジュレータビームラインであり、BL47XUと同一の構成となっている。このビームラインも第2陣として変更許可申請を予定している5本の内の1本である。

 輸送チャンネル本体の組立、各コンポーネントへの配管・結線作業は1月中に終了し、各コンポーネント単体としての動作確認が行われた。全体を繋いでの真空排気試験でリーク箇所が発見され現在対処している最中である。放射線シールドハッチは、構造物の建設ほぼ終了したが、水・圧空配管確認を初めとしていくつかの残作業が進められている。インターロックシステムでは、各コンポーネントとの結線作業が進められており、3月初旬に個別動作試験及び総合動作試験が予定されている。

 実験ステーション機器に関しては、1月末に2回折計が納入された。本格的な機器調整は輸送チャンネル完成後に開始される予定である。

 

図5 BL09XU

 

(f)BL45XU

 理研ビームラインであり、垂直アンジュレータからの放射光を、ダイヤモンド分光器によって2つの実験ステーションで同時に使用できる特殊な輸送チャンネル構成を持っている。このビームラインも第2陣として変更許可申請を予定している5本の内の1本である。輸送チャンネル本体の組立、各コンポーネントへの配管・結線作業はほぼ終了し、真空排気試験開始を待っている。放射線シールドハッチはほぼ終了した。水配管の流水テスト時に若干の不具合があり改善を計画している。

 

図6 BL45XU

 

(g)BL04B1

 偏向電磁石からの白色X線を利用するビームラインであり、第2陣として変更許可申請を予定している5本の内の1本である。輸送チャンネルは一部のべローズ、単管を残して組立を完了している。放射線シールドハッチは構造物としてはほぼ完成し、ユーティリティ関連の工事が残っている。2月中旬にマルチアンビル高圧回折装置が搬入され、実験ステーション内に設置された。

 

図7 BL04B1

 

(h)BL08W

 楕円マルチポールウィグラービームラインであり、第3陣として変更許可申請を予定している。輸送チャンネルの組立は年度明けに開始される。放射線シールドハッチは構造物としてはほぼ完成し、塗装作業、ハッチ内配電用の通線作業が行われている。

 

図8 BL08W

 

(i)BL25SU

 ツインヘリカルアンジュレータからの円偏光軟X線を利用するビームラインであり、第3陣として変更許可申請を予定している。光学ハッチ建設作業が1月に開始されたので、今回初めて写真を掲載する。回折格子分光器でビームを高く跳ね上げるので、測定チェンバーはデッキ上に設置される。このためのデッキの建設も2月中旬に始まっている。輸送チャンネルの組立は3月から始める予定である。

 

図9 BL25SU

 

(j)BL39XU

 標準的なX線アンジュレータビームラインであり、BL47XUとほぼ同一の構成となっている。第3陣として変更許可申請を予定している。輸送チャンネルの組立は年度明けに開始される。ここでも放射線シールドハッチ建設作業が1月から始まったので今回から現場の写真を掲載する。

 

図10 BL39XU

 

(K)BL44B2

 理研ビームラインであり、白色、単色X線を切り替えて利用可能な輸送チャンネルが建設される。フロントエンドを含めて発注作業が終わっていない所があり、変更許可申請の予定は検討中である。放射線シールドハッチの建設が1月から始まったので今回から現場の写真を掲載する。

 

図11 BL44B2

 

(l)BL10XU

 標準的なX線アンジュレータビームラインであり、BL47XUとほぼ同一の構成となっている。第3陣として変更許可申請を予定している。輸送チャンネルの組立は年度明けに開始される。ここでも放射線シールドハッチ建設作業が2月から始まったので今回から現場の写真を掲載する。

 

図12 BL10XU

 

(m)BL46XU

 アンジュレータR&D用ビームラインであり、標準アンジュレータより周期長の短いものが設置される予定である。輸送チャンネルは今後の発注が待たれているが、とりあえず光学ハッチの建設が2月に開始された。このビームラインも、今回から現場の写真を掲載する。

 

図13 BL46XU

 

 

3.ビームライン制御

 2月中旬までに、輸送チャンネル制御の中心となるBL Master WSの搬入を終了した。標準二結晶分光器、標準4象限スリットのGUI(αバージョン)を作成し、利用系談話室で公開して使い勝手に関する意見を求め、ユーザー用コマンドを確定し、ユーザー用コマンドメッセージのマニュアルを作成した。また、BL Master WS上の挿入光源制御GUIを制作し、第2陣までの7本のビームラインについてのビームライン毎のカーネル設定環境が作成された。その他にも、輸送チャンネル制御に必要なソフトウェア開発を精力的に進めているが、使用前検査終了後に一段と戦力を増強して5月の放射光ビーム使用時には一応の制御環境を確保する。

 輸送チャンネル制御と実験ステーション制御の連携に関しては3月に利用者懇談会主催の研究会が開かれるので、そこでより詳細な資料を提出するとともに、本誌にも制御担当グループから紹介記事を出すことを予定している。

 

 

4.おわりに

 第1期のビームライン建設も既に半ばを越え、終わりの始まりが見えてきたような気がしている。この間多くの方のご協力によってここまで辿り着いたことは感謝の念に堪えない。また、大勢の若い方(自分自身が含まれるか否かは疑問があるが)が、ビームライン建設作業を通して育ってきた感がある。やがて始まるであろう第2期以降のビームライン建設では、この内の何人かが中心的な役割を果たしてくれることを確信しているが、より若い世代にも、このゲームに参加して頂くことを切望してやまない。

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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