Volume 01, No.4 Pages 45 - 46
5. 談話室/OPEN HOUSE
インドによるSPring-8利用と専用ビームライン建設
Utilization of SPring-8 beamlines and construction of contract beamline by Indian Scientists
日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 利用系グループ JAERI-RIKEN SPring-8 Project Team Experimental Group
7月2日と3日にインド・ボンベイ(Mumbai)のBARC(Bhabha Atomic Research Centre)において、"Meeting on SPring-8 - India Collaboration"と題するワークショップが行われた。これは、インドールにあるCAT(Centre for Advanced Technology)所長であるD. D. Bhawalkar博士が中心となって企画したものである。
「インド・日本ビームライン計画」は、東京工業大学の橋爪教授を通して、カルカッタのSaha Institute of Nuclear Physics(SINP)のB. Sinha教授からインド・ビームライン建設計画(インド専用ビームライン建設計画)に対して、SPring-8に支援要請があったことから始められた。この計画は、橋爪教授の共同研究者であるSINPのM. Sanyal教授の理研(和光)訪問および2月のSPring-8上坪リーダーと植木のSINP訪問とインド科学技術庁における協議を通して進められた。さらに、6月に東京で開催された第4回日印科学技術合同委員会では、インドから「主要研究設備の共同利用」の協力テーマの1課題としてSPring-8に関する協力が提案され、その協力を進めることで合意している。
ワークショップは、Bhawalkar博士による歓迎の辞に引き続いて、インド原子力庁長官R. Chidambaram博士、インド科学技術庁長官V. S. Ramamurthy博士およびSPring-8共同チームの上坪リーダーによる挨拶で始められた。第一日のプログラムは、前日にもたれたインド国内の放射光関係の研究者による会合をうけて、SPring-8およびインド側の参加者による発表が行われた。
SPring-8側からは、
SPring-8 Project | H. Kamitsubo(上坪) |
Status of Construction of SPring-8 | H. Ohno(大野) |
Beamline Programme of SPring-8 | T. Ueki(植木) |
Insertion Devices of SPring-8 | H. Kitamura(北村) |
Beamline and Optics Development at SPring-8 | T. Ishikawa(石川) |
Topics of Research Programme at SPring-8 | J. Mizuki(水木) |
インド側からは、
Application of SRS to Surface Studies | H. Hashizume(TIT) |
Protein Crystallography | V. Kumar(BARC) |
High Pressure Diffraction | M. S. Somayazulu(BARC) |
Magnetic Compton Scattering | B. K. Sharma(Rajasthan U.) |
EXAFS | V. B. Sapre(Nagpur U.) |
Surface Scattering | M. Sanyal(SINP) |
Diffuse Scattering | V. S. Sastry(IGCAR) |
といったビームラインの設計および利用の現状報告があった。この他、インドの研究者によるSPring-8での専用ビームライン建設計画案の紹介があり、討論が行われた。
二日目には、インドとSPring-8側代表団の間でSPring-8に係わる協力について議論が行われ、覚え書きに署名がなされた。この日印協力の目的は、
① | SPring-8施設・共用ビームラインへのインドの研究者の利用研究参加 |
② | SPring-8サイトにインドによって提案される多目的ビームライン建設のためにインド側とSPring-8研究者との交流 |
を促進する事である。
具体的には、
① | インドの大学、国立研究所などの研究者が、SPring-8の共用ビームラインを使用していくつかの分野での共同利用実験に参加する。 |
② | インドの研究者の提案するビームラインは、材料科学と回折実験を行う二つの実験ステーションを持つ。そのビームタイムの一部は他の利用にも供する。 |
② | 光源はSPring-8の標準アンジュレーターで、エネルギー範囲は5-50 keVである。 |
このワークショップの際に、本年11月にインドにおいて放射光利用研究に関するスクールを開催したい旨の要望があった。このスクールは、インドの研究者が推進しようとするいくつかの放射光利用研究分野に関して、SPring-8の共用ビームライン建設に参加している研究者が講義し、インドの研究者の利用を促進することを目的とする。スクールの詳細は、日本側はSPring-8の大野氏が、インド側はB. A. Dasannacharya氏(Director, Inter University Consortium)が担当して計画される*。このスクールについては、SPring-8での実験ステーションを建設している研究者の参加が求められているので、SPring-8利用者懇談会のサブグループに属する外部研究者にお願いすることになると考えられる。大野氏からの参加依頼があった場合にはご協力をお願いしたい。
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* 大野氏とDasannacharya氏との相談の結果、このスクールは11月25日から27日にかけてインドールにおいて行われることとなった。対象となる分野は、結晶構造解析、高エネルギー非弾性散乱、核共鳴散乱、極端条件(高圧)および軟X線固体分光のビームライン計画と利用である。なお、生体高分子結晶構造解析にかかわるセッションは、上記の5つの分野に関するスクールと並行して計画される由である。