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Volume 01, No.2 Pages 2 - 5

1. ハイライト/HIGHLIGHT

「大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営のあり方について」 (諮問第20号)に対する答申について

科学技術庁大型放射光施設利用推進室

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Ⅰ.はじめに

 日本原子力研究所及び理化学研究所が共同して建設を進めているSPring-8については、平成9年度の供用開始が予定されています。この世界最高性能の放射光施設であるSPring-8の能力が最大限に活用され、優れた利用研究成果があがることに対する期待は極めて高く、そのためにはまず、SPring-8の利用・運営のあり方が極めて重要であるといえます。このような背景から、科学技術庁長官の諮問機関である航空・電子等技術審議会(会長:佐田登志夫豊田工業大学副学長)において、大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営のあり方について審議が進められてきました。


 航空・電子等技術審議会は、航空技術、電子技術その他科学技術に関し多数部門の協力が必要とされる総合的試験研究を要する技術に関する重要事項について審議することをその所掌事務としている審議会で、昭和62年7月には、諮問第11号「光科学技術の高度化に関する総合的な研究開発の推進について」に対する答申において、大型放射光施設の整備の必要性を指摘しております。


 本件諮問第20号については、平成5年9月30日に科学技術庁長官から航空・電子等技術審議会会長に諮問されて以来、実質的には、電子技術部会の下に設置された大型放射光施設分科会(主査:高良和武東京大学名誉教授)において調査審議が行われました。平成6年3月18日には電子技術部会として「大型放射光施設(SPring-8)の効果的な利用・運営のあり方についての調査審議中間とりまとめ」がとりまとめられており、その内容が「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」に反映されています。大型放射光施設分科会及び電子技術部会においては、その後も検討が進められて最終的な答申案がとりまとめられ、平成8年3月29日に開催された航空・電子等技術審議会総会において審議、了承され、佐田登志夫航空・電子等技術審議会会長から中川秀直科学技術庁長官に答申されました。


Ⅱ.答申の概要

 とりまとめられた答申の概要は以下のとおりです。


1.SPring-8の利用及び運営に関する基本的考え方
(1)SPring-8の利用に関する基本的考え方
①利用者本位の体制の確立

SPring-8については、国内の産学官の研究者はもとより、海外の研究者にも広く開かれた施設として最大限活用されるよう配慮するものとし、利用者本位の考え方を原則とした体制を整備することが必要である。具体的には、課題募集等に係る情報を広く公表する、利用手続き等を簡素化する、利用課題の選定に係る専門的かつ総合的な審査・評価体制を確立する、公平な利用機会の提供等が可能な体制を構築することが必要である。

②利用拡大のための措置

 利用者のニーズ等を踏まえつつ、共用ビームラインの改良、更新、増設等を計画的に推進するとともに、SPring-8の加速器等の高度化を図ることが重要である。また、SPring-8側より、放射光利用に関する情報の提供、技術的な支援を十分に実施することが必要である。


③他の放射光研究施設との協力
既存の(又は計画中の)放射光研究施設との有機的な連携を図ることが望まれる。

(2)SPring-8の運営に関する基本的考え方
①管理・運営組織のあり方

 SPring-8は、日本原子力研究所と理化学研究所が共同してその建設を進めているが、SPring-8の管理・運営等は一つの組織体において一体的かつ効率的に実施されることが必要である。


②管理・運営組織の研究開発に係る活動と能力

 SPring-8の管理・運営の一環として不断の研究開発を行い、技術的課題等を克服し、施設の性能向上や利用の高度化を図ることが極めて重要である。管理・運営の任にあたる組織に優秀な研究者、技術者を確保することが必要であり、自らが放射光研究の高いポテンシャルを獲得することが重要である。


③中核的研究拠点を目指した運営

 SPring-8を中心に一大リサーチコンプレックス(研究機能の複合体)が形成され、世界のCOE(センター・オブ・エクセレンス:中核的研究拠点)の一つとなることを目指す。


(3)一元的に管理及び運営を担う組織

 「特定放射光施設の共用の促進に関する法律」に基づき「放射光利用研究促進機構」(以下「機構」という。)に指定された財団法人高輝度光科学研究センターは、その役割を的確に果たしていくことが必要である。機構はSPring-8の利用及び運営の要となる組織であり、日本原子力研究所及び理化学研究所との間で良好なパートナーシップを確立し、役割と業務を的確に遂行することが極めて重要である。


(4)国として配慮すべき事項

 国は、「特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方針」に従い、具体的な施策を着実に実施していくことが必要であり、特に機構の業務が円滑かつ的確に実施されるよう、格段の配慮を払うことが重要である。


2.放射光利用研究促進機構の業務推進のあり方
(1)供用業務

①利用研究課題の適切な選定

 幅広い分野の研究者を対象に積極的に利用課題の募集を行う。それらの提案を、専門的かつ総合的に評価するため、利用研究課題選定のための委員会を設け、そこに課題の選定を委ねる。


②利用研究課題選定の基準及び緊急課題への対応

 共同施設の利用研究課題の選定に当たっては、

ア. 科学技術的妥当性(研究課題の先端性及び発展性、基礎的研究分野・基盤的技術開発分野への貢献、産業基盤技術としての重要性及び発展性、社会的意義・社会経済への寄与度)、
イ. SPring-8利用の必要性、
ウ. 技術的な実施可能性、
エ.実験内容の安全性といった基準に沿って検討評価を行う。
なお、緊急課題については、随時受け付け、簡素化した迅速な審査を行う。

③専用施設の設置及び利用への取組み並びに海外からの提案への対応

 上記ア.~エ.に加え、専用とする必要性及び施設の建設・維持管理能力等についても検討評価を行う。また、専用施設の審査にあたっては、2段階に分けて審査するような段階的手続きを採る。専用施設についても、委員会に選定の審査を委ねる。海外からの提案については、国際協力の観点に配慮した適切な対応をとる。なお、建設された専用施設のついては、機構がその利用状況を定期的に評価することにより、必要に応じて、専用施設の改善、更新、撤去等を勧告することができるよう措置する。


(2)共用促進のための支援業務

 利用研究の実施に必要とされる内外の情報を積極的に利用者等に提供するとともに、利用者への技術支援を行う。また、内外の動向の調査、分析を行うとともに啓発活動を積極的に実施する。


(3)管理・運営業務
①日本原子力研究所及び理化学研究所の協力

 SPring-8の管理・運営に当たっては、日本原子力研究所及び理化学研究所と機構との間で相互信頼に基づくパートナーシップを確立し、機構において、一元的、効率的な体制を整備、確立する。


②「研究所」としての機構の運営

 機構は、内外から優秀な研究者・技術者を十分確保し、「研究所」として、卓抜な研究リーダーによって統括・指導されるような管理・運営を行う。


③外部機関等との連携・協力

 欧米の大型放射光施設との連携・協力関係を構築するとともに、高エネルギー物理学研究所放射光実験施設(PF)等の国内の放射光施設との交流を進める。


(4)研究開発業務

 機構は、世界最先端の施設の運営維持及び共用促進の観点から、自ら積極的に研究開発を実施していく。まず、SPring-8の高度化のための研究開発を行うとともに、高輝度放射光の優れた特長を活かした先導的な実験手法の研究開発等を実施する。放射光利用研究の実施に関しては、SPring-8の特色を活かした研究課題に、流動的なシステムで重点的に取り組む。これらのため、SPring-8のビームタイムの一定割合を、機構の研究開発等のために確保する。


(5)その他の業務等
①海外研究者の招へい、②快適な研究環境等の整備、③中長期的観点からの業務の検討を実施する。


3.研究成果の取扱い及び利用経費負担のあり方
(1)研究成果の取扱い
①成果公表促進のための措置

 SPring-8を利用して得られた研究成果については、知的公共財として積極的に公表されるべきものであり、利用者自らが積極的に公表していくことが期待されるとともに、公表が促進されるような方策を講じていく。


②特許権等の取扱い

 SPring-8を利用した研究の成果として特許権等の工業所有権が生ずるような場合の取扱いについては、SPring-8側の寄与が事前に十分確認できることを前提とする適切な規定等を定める。


③研究成果に係る情報提供

 SPring-8を利用した研究成果は、機構において、シンポジウムの開催等も含め、適切に提供されるように配慮する。


④研究成果の評価

 機構は、施設の利用状況及び研究成果の評価を実施する。


(2)利用経費負担のあり方
①利用経費の検討にあたっての留意事項

ア. 利用者本位の考え方をとり、積極的に共用の促進を図ること
イ. 積極的に成果の公開を促進すること
ウ. 欧米の代表的な放射光施設との整合性が図られていること

②利用経費設定の考え方

 SPring-8の利用経費の負担に関しては、利用者の所属機関が内外又は産学官であるかを問わず、同一の基準が適用されるべきであり、欧米と同様に、利用者が成果を専有せず公開するような利用研究については利用者からビーム使用料を徴収しないことが適当である。利用者が成果を専有するような利用研究については、ビーム使用料を徴収すべきである。


③試行期間における利用経費

 直ちに所期のビーム性能を出すことが技術的に困難な場合には、ビームが所期の性能を出すまで、そのビーム使用料を減免するような試行期間を設定することは妥当である。


4.放射光利用研究及び産業利用の促進方策
(1)放射光利用研究の促進方策
①国による研究支援等

 SPring-8は内外に開かれた共同利用施設であり、同施設における利用研究をはじめとして、放射光利用研究全体は、国の科学技術政策上、戦略的視点からより一層重要性が増大している分野である。したがって、国は、積極的に放射光利用研究を促進していくことが必要である。


②利用研究の裾野の拡大

 機構は、放射光利用経験の少ない研究者等にとっても、支障なく有効にSPring-8が利用できるような支援体制を整備する。


③分析・解析技術の提供

 機構は、簡便な手段・手続きで、放射光を用いた分析・解析技術を提供できるような仕組みを構築していく。


(2)産業利用の促進方策
①共用ビームラインの利用と産業界の専用ビームラインの設置

 産業界による共用ビームラインの利用を促すとともに、産業界による専用ビームラインの設置が進められることが期待され、財団法人高輝度光科学研究センターが産業界の活動を支援することが効果的である。


②税制・金融上の支援措置

 民間企業の放射光研究一般を支援するような、税制・金融上の支援措置についてその充実を図っていく。


5.リサーチコンプレックス形成のための方策
(1)周辺研究機関等との連携・協力・交流

 播磨科学公園都市の周辺研究機関等との間で、共同研究、研究者交流、相互施設利用、連携大学院、情報交流、研修といった多様な形態による連携・協力・交流を推進することによりSPring-8を中心としたリサーチコンプレックスの形成を目指す。また、SPring-8の電子ビームを活用した放射光研究や放射光以外の研究についても協力を行う。


(2)他の放射光利用研究機関及び利用研究者との連携

 機構は、研究者の流動性を確保しつつ、施設の高度化や新しい放射光の利用技術の開発を含めて、研究機能の強化を進めながら関係研究機関等との協力・交流を図っていく。


(3)地方公共団体等の協力を得た周辺研究環境整備

 優れた研究者がSPring-8周辺に定着するよう地方公共団体等により、生活環境の整備が推進されることが期待される。また、SPring-8に係る普及啓発のための施設の整備について積極的に検討を進め、その実現を図る。


6.国際交流・国際協力の推進
(1)諸外国の研究者による利用の促進

 SPring-8の利用にあたっては、国内の研究者と同様に海外の研究者も広く施設を利用できる体制を整え、海外の研究者を積極的に受け入れるための方策を講ずる。また、SPring-8に関連する情報を、広く世界に向けて発信していくことにより、国際的な科学技術の発展にも積極的に寄与していく。


(2)欧米の大型放射光施設等との協力

 SPring-8と同じ第三世代の大型放射光施設に分類されている欧州のESRF及び米国のAPSとの連携・協力を進める。


(3)アジア太平洋地域の大型放射光研究センターとしての役割

 アジア太平洋地域における唯一の第三世代の大型放射光施設であるSPring-8については、この地域の大型放射光研究センターとして、同地域の研究者に開放し、その利用を促進する。


Ⅲ.おわりに

 科学技術庁としては、今後、本答申で指摘された事項にしたがって、SPring-8の共用の促進に取り組んで参りたいと考えておりますので、関係者の皆様方におかれましても放射光利用研究に積極的に取り組んでいただくとともに、SPring-8に対する、ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。



名称変更のお知らせ
科学技術庁科学技術振興局大型放射光施設整備推進室は、平成8年5月11日付で大型放射光施設利用推進室に名称が変更されました。


Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794