Volume 01, No.1 Pages 6 - 8
2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8
SPring-8企画グループの現状
はじめに
SPring-8計画にとっての平成7年は、特に予算面で大きな進捗のあった年となった。平成7年度には2度の補正予算を獲得することができ、これによってSPring-8の完成が1年早まり、平成9年10月から共同利用ビームラインの利用が開始されることになった。また、平成10年度以降に計画していた将来施設計画のいくつかが前倒しされ、いずれも平成9年度に完成することになった。
平成7年の主な出来事は前頁の表のとおりである。それらの概要を以下の項目に分けて記す。
- 計画の進捗状況
- 補正予算による将来計画施設の建設
- SPring-8計画推進体制の整備
1.計画の進捗状況
1.1 予算面
SPring-8計画(第Ⅰ期)の総予算は、1,089億円である。これは、計画当初に昭和62年〜平成10年の12ヵ年に要する建設費として見積もられたものであるが、平成7年度の2度の補正予算により、第Ⅰ期計画は平成9年度に完了することとなった。現在のSPring-8の予算計画は次のとおりである。
現金ベース(%) | 契約ベース(%) | ||
---|---|---|---|
平成7年度 | (当初) | 64.3 | 85.3 |
(第1次補正後) | 76.9 | 99.3 | |
(第2次補正後) | 79.9 | 99.4 | |
平成8年度 | (政府案) | 90.9 | 99.8 |
平成9年度 | (予定) | 100 | 100 |
1.2 進捗状況
SPring-8諸施設建設の進捗状況(平成7年12月末現在)は、以下のとおりである。
全体% | 装置% | 建屋% | |
---|---|---|---|
線型加速器 | 89.4 | 85.3 | 100 |
シンクロトロン | 78.0 | 72.8 | 100 |
蓄積リング | 70.2 | 67.6 | 72.2 |
ビームライン | 20.9 | 20.9 | ー |
共通施設* | 9.1 | ー | 9.1 |
*中央管理棟、食堂、及びマシン実験棟
今後の主な予定は、以下のとおりである。
・平成8年8月 | 線型加速器のコミッショニング |
10月 | シンクロトロン のコミッショニング |
12月 | 蓄積リング棟完成 ビームライン据付開始 |
・平成9年2月 | 蓄積リングのコミッショニング |
5月 | ビームラインのコミッショニング |
10月 | ビームラインの供用開始 |
2.補正予算による将来計画施設の建設
平成7年度の補正予算によって、SPring-8の第Ⅱ期計画として予定していた、研究交流施設、組立調整実験棟及び医学利用実験施設の建設が、新たに認められた。これらの施設はいずれも平成9年度に完成する。
一方、兵庫県立姫路工業大学は、SPring-8の線型加速器を利用する1.5 GeVの真空紫外・軟X線蓄積リング(ニュースバル計画)の建設計画に平成8年から着手する予定であり、共同チーム加速器系グループからの協力を得て、JASRIがニュースバルの設計調査を兵庫県から受託し実施している。これらの施設を含む SPring-8サイトの施設配置計画は、図1のとおりである。
図1 SPring-8サイトの施設配置計画
2.1 研究交流施設
SPring-8の共同利用ビームラインを利用する研究者が、仮眠、実験待機するための施設。全体で4棟、各棟60室、合計240室を整備する。これらのうち、1棟は平成8年度から運用を始め、共同利用ビームラインの建設に参加する研究者等のために利用される。
2.2 組立調整実験棟
共同チーム及び JASRIの加速器系、利用系グループの研究者や技術者が、加速器及びビームライン要素技術の研究開発に利用する実験施設。線型加速器の電子ビームを利用する SASEの研究開発も行い得るよう計画している。
2.3 医学利用実験施設
バイオメディカルイメージングの研究開発を実施する実験施設。中尺(200 m以上)ビームライン3本を格納し、基礎実験及び臨床実験のいずれにも対応出来るよう計画している。建屋の建設を先行させ、ビームラインの製作は平成9年以降に着手する予定である。
3.SPring-8計画推進体制の整備
共同チームによる SPring-8の建設段階で獲得される知識と技術を、 JASRIによる運営段階に円滑に移行させるため、平成7年9月から SPring-8計画の推進体制を次 頁のように変更した。これによって、共同チームと JASRIが一体となって SPring-8計画を推進するための環境が整備されたことになる。平成7年12月末現在、共同チーム:200名、JASRI:70名、合計:270名が、SPring-8計画の推進に直接関係している。
共同チームの母体である原研及び理研とJASRIとは、三者の間でSPring-8の運営に関する調整を行うため、「SPring-8運営調整会議」を設置している。また、JASRIはSPring-8における放射光利用研究を促進するため、「諮問委員会」及びその下部委員会として「利用課題選定委員会」及び「専用施設計画検討委員会」を設置している。SPring-8計画の推進体制における各種委員会の位置付けについては、図2に示した。
図2 SPring-8推進体制における委員会など
斎藤 茂和 SAITOU Shigekazu
昭和25年12月24日生
日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 企画グループ
〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町金出地1503-1
TEL:07915-8-0308 FAX:07915-8-0311
昭和50年静岡大学大学院工学研究科修士課程修了、理化学研究所ライフサイエンス推進部、国際フロンティア研究推進部、海洋科学技術センター深海環境プログラム推進室等を経て、平成3年から理化学研究所大型放射光施設計画推進部、職業病はすいしんすること。