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Volume 01, No.1 Pages 3 - 5

2. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

SPring-8研究開発グループの現状

大野 英雄

日本原子力研究所・理化学研究所 大型放射光施設計画推進共同チーム 研究開発グループ

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はじめに

 8 GeVのエネルギ-をもつ電子または陽電子を蓄積し、高いエネルギ-領域まで高輝度・高強度の放射光を発生できる性能をもつ大型放射光施設SPring-8(Super Photon ring-8 GeV)が、日本原子力研究所(原研)と理化学研究所(理研)の共同で、平成9年度の完成を目指し、兵庫県播磨科学公園都市に建設されている。本計画は、昭和63年に本格設計が開始され、施設建設は順調に進展している。大型放射光施設SPring-8の建設は順調に進み、平成7年度補正予算により、平成9年度に全面供用開始する目途がたった。加速器(線型加速器、シンクロトロン、蓄積リング)の製作・据付、ビームライン(共同利用ビームライン、原研・理研ビームライン)の設計・製作、建物・設備(入射系建屋、蓄積リング棟、ユーティリティ他)の建築は、順調に進められている。

 

 

1.加速器系の現状

1.1 線型加速器

 線型加速器では、電子入射部、電磁石部、加速管部、加速用高周波源など、機器の製作ならびに据付けがすべて完了した。電子入射部は原研東海に仮据え付けをし、電子ビームを含む性能試験を行い、その性能は目標値を充分満足していることを確認した。その後、解体して線型加速器棟に搬入した。現在、配線配管工事を進めるとともに、平成8年1月からクライストロンとモジュレータを組合わせての調整試験を開始している。

 

 

1.2 シンクロトロン

 シンクロトロンの機器製作では、同一品を多量に製作するものについては、まず1台を先行製作し、その性能評価を行った後、量産に移行した。平成7年8月から各磁石の据え付けを開始し、粗据付けならびにレーザを用いた精密アライメントを完了した。8台の高周波加速空洞のエージングを終了し、据付けを完了した。電磁石電源の製作、据付けを完了した。

 

 

1.3 蓄積リング

 蓄積リングでは、必要なすべての機器の発注作業は平成7年度でほぼ終了した。電磁石:マシン収納部内への主電磁石(偏向電磁石88台;四極電磁石480台;六極電磁石336台)の搬入、据付けが終了した。共通架台上への四極、六極電磁石の精密据付け(±25 μm)が、全体の75%程度終了し、偏向電磁石のアライメントもほぼ終了した。

真空: 蓄積リングの真空チェンバーの電磁石内への組み込み作業は、全体の約60%程度が終了した。組み込み作業の終了した部分の真空ベーキング作業は、現在13セルが終了し、10-10 torr から10-11 torrの真空度が達成され、システムとしての健全性が確認された。真空チェンバーシステムに使用する機器の単品真空試験は、平成8年3月頃完了する予定である。
高周波: 3ステーション分の高周波システムの製作および据付け作業が進んでいる。
加速空洞: 8台の空洞が完成し、本年度中に全て完成する予定である。本年4月から8台の空洞の大電力試験を実施し、終了後、Dステーション部の収納部内に据付けられる。
ビームモニター: 288セットの電子ビームの位置を測定する位置検出器の電気的中心の校正作業、ならびに、シングルパスモードとCODモードに使用する信号処理回路の製作を進めている。
コントロール: 蓄積リングの各機器をネットワークを通して制御するためのハードおよびソフトの製作が順調に進んでおり、機器制御用ソフトの最初のバージョンが完成しつつある。実機との組合わせ試験を行い、最終バージョンを製作する。
ビーム制御: 加速器の運転に必要なワークステーション上での操作パネルの検討、ならびに電子ビームの制御に必要なソフト開発が、平成9年2月の蓄積リングコミッショニングに向けて進んでいる。

 

 

2.利用系の現状

平成7年度の補正予算により、平成9年度までに共同利用ビームライン10計画を完成することとなった。

 

 

2.1 挿入光源

 平成6年度に発注した6台(標準型真空封止アンジュレータ:4台、軟X 線ヘリカルアンジュレータ:1台、楕円偏光ウイグラー:1台)のうち、標準型真空封止アンジュレータの先行機が納入され、磁場調整を終了した。フーリエ変換によって得られた第七高調波の強度は、理想磁場のそれと比較して70%以上であることが確認された。現在、超高真空達成(2×10-10 torr以下)のために必要な加熱排気(130℃)を行っている。真空度を確認後、真空槽を解体し、高温履歴の磁場精度への影響を調べる予定である。この先行機は2月下旬ごろ完成するが、引続き残りの挿入光源の磁場調整を行う。

 平成7年度には3台の共同利用ビームライン用挿入光源(標準型真空封止アンジュレータ、真空封止ハイブリッドアンジュレータ、八の字アンジュレータ)を発注する。前年度6台を発注したので、計9台の挿入光源を平成9年8月までに建設することとなる。

 

 

2.2 フロントエンド

 平成6年度10基のフロントエンドを発注し、そのうちの1基(X線アンジュレータ用)を先行型として実験ホールにて組立中である。現在、架台の精密据付けを行っており、2月初旬には各真空要素を並べる予定である。SPring-8型フロントエンドの重要なコンセプトは、光源の進化に対応して迅速な要素の交換、再配列が可能となるよう、架台全体を光学レール仕様としたことである。

 平成7年度は、上記挿入光源に対応するフロントエンド3基、フロントエンドの重要 要素であるマスク、アブゾーバー、XYスリットを発注する。なお、挿入光源ビームラインには不可欠な高精度光ビーム位置モニターは、現在R&Dを行っている。検出素子としては、極端条件下の半導体として脚光を浴びている CVDダイヤモンドを採用し、物理現象としては光電導を利用している。平成7年秋に、高エネルギー物理学研究所トリスタンMR放射光ビームラインにて試作型の試験を行い、この種のモニターとしては世界初の動作確認を行った。

 

 

2.3 輸送チャンネル

 共同チームでは、ビームライン検討委員会の答申に基づく併設案に従い、併設各グループの意見を聴きながら、標準的なアンジュレータ及び偏向電磁石X線ビームラインについての輸送チャンネルの概念設計案を作成し、各建設グループに提示、そこでの検討と了解をもとに詳細設計を行った。前年度までに検討が進められていた、標準輸送チャンネルコンポーネント仕様を最終的に確定するとともに、各輸送チャンネルごとの配置を確定した。特殊な輸送チャンネルである、軟X線ビームラインと高エネルギーX線ビームラインに関しては、共同チームと建設グループが協力して個別的な対応がとられた。これらの作業の結果、X線ビームラインコンポーネントに関しては、かねてより計画されていたカタログ化が、高エネルギーX線ビームライン、白色偏向電磁石X線ビームラインのコンポーネントをも含めた形で完了し、今後のビームライン設計作業の高効率化の見通しが立った。輸送チャンネルコンポーネントの発注作業は、大部分がここで完成したカタログに基づいて進められている。これらのコンポーネントのアライメントのための組み立て発注が、平成8年度以降に予定されている。

 

 

2.4 光学系・光学素子

 標準的なX線分光器については、前年度末にアンジュレータ、偏向電磁石用各1台の試作機の発注作業を完了し、平成8年度初頭に納入される予定である。平成7年度補正予算に対応したビームライン分光器は、標準的なビームラインでは、上記試作機を基本とし、また軟X線ビームライン・高エネルギーX線ビームライン用分光器は、個々に製作仕様を作成する方向で発注作業が進められた。これらも、平成8年度から9年度にかけて、順次納入される予定である。

 X線ミラーについては、標準ミラー駆動機構の設計開発を平成7年度前半に進め、年度後半には全ての駆動機構の発注作業を行った。これらは、ビームライン組み立て時期に合わせて納入される予定である。

 光学素子としては、高熱負荷対策として、水冷ピンポスト冷却シリコン、高純度大型ダイヤモンド単結晶の開発研究が進められている。中・低エネルギーX線領域での反射光学素子として、石英、シリコン単結晶全反射ミラーの設計が終了し、発注作業が進んでいる。また、高エネルギーX線領域での反射光学素子として、単一周期及び不均一周期人工多層膜が検討されている。コヒーレント光源へ向けての研究開発としては、ブラッグ・フレネル素子や各種干渉計の開発が検討されている。光学素子の加工・評価のための精密切断装置、精密溝入れ装置、加工評価装置が前年度に発注され、今年度から稼働している。

 

 

 

大野 英雄 OHNO Hideo

昭和18年3月29日生

日本原子力研究所 大型放射光開発研究部長

日本原子力研究所・理化学研究所

大型放射光施設計画推進共同チーム 研究開発グループリーダー

(財)高輝度光科学研究センター 放射光研究所 実験部門 部門長

〒678-12 兵庫県赤穂郡上郡町金出地1503-1

TEL:07915-8-0308  FAX:07915-8-0311

昭和45年京都大学大学院理学研究科博士課程修了、日本原子力研究所材料研究部次長を経て、現在大型放射光開発研究部長並びに共同チーム研究開発グループリーダー、昭和50〜51年アルゴンヌ国立研究所留学、理学博士。イオン性液体(溶融塩)及びガラスのX線並びに中性子線構造解析の研究に従事。

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794