Volume 27, No.4 Page 386
4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
2015年度指定パートナーユーザー事後評価報告 – 2 –
Post-Project Review of Partner Users Designated in FY2015 -2-
パートナーユーザー制度は、SPring-8の共同利用ビームラインの更なる高度化および優れた成果の創出を推進するために、2014A期から2021A期まで運用され、パートナーユーザー(以下「PU」という)は、公募・審査を経て指定されました。
PUの事後評価は、PU審査委員会において、あらかじめ提出されたPU活動終了報告書に基づいたPUによる発表と質疑応答により行われました。事後評価の着目点は、PUとしての(1)目標達成度、(2)活動成果(装置整備・高度化への協力、科学技術的価値および波及効果、ユーザー開拓および支援、情報発信)です。今回は、2015年度指定のPU1名(指定期間:2015年4月1日から2020年3月31日まで)について、事後評価(2021年6月16日開催)を行いました。
以下にPU審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」にPUによる紹介記事を掲載しています。
1. 戸田 裕之(九州大学)
(1)実施内容
研究テーマ:構造材料の高エネルギー4Dイメージング技術の完成およびそのX線回折との連成
高度化:マイクロCTの多元イメージング化並びにマルチスケール化
利用研究支援:当該装置を用いた利用実験の支援
(2)ビームライン:BL20XU
(3)評価コメント
本PU課題は、SPring-8の高エネルギーX線マイクロCT技術とX線集光技術を活用することにより、当初4年間は新型材料試験機を用いた引張試験・疲労試験中の4D-CT、X線CTと細束X線ビームを併用したXRD-CT、画像データの定量解析技術の開発などを中心に、多面的かつ戦略的な研究を行った。鉄鋼、チタン、アルミニウムなど各種合金の疲労破壊のその場観察、鉄鋼やアルミニウム合金における3D結晶方位分布の決定などの金属材料分野における重要な研究成果があがっている。
課題再延長期間の1年間では、中尺ビームラインの長さを生かしたCTのマルチスケール化、およびX線ビームの1ミクロン程度への細束化と輝度の上昇が行われた。高エネルギーCTでのコントラストに問題を残しているが、大方の目標は達成されており、実用材料組織への対応と計測の高速化を目指している。これらが達成され、成果を広く利用者にアピールすれば、本ビームラインの大幅な利用拡大が期待できる。
5年の実施期間を通して、本PUがビームラインの高度化目標を提示しJASRIスタッフが技術的課題を解決する形でうまく協調が行われ、BL20XUの実験技術は大きく進展した。本PUは高度化の成果を生かした実験技術と解析ソフトウェアの開発を行い、その結果、質的にも量的にも優れた利用研究の成果が得られている。本PUらが開発した材料試験機やソフトウェアは一般利用者にも提供され、本PUのグループが実験や解析のサポートも行っている。学会等におけるユーザー開拓も行われ、本PUによるX線CTに関する著書もあり、十分なユーザー支援が行われている。総じてこれらの実績から、利用支援を含めたPUの役割は十分に果たされていると判断できる。