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Volume 27, No.2 Pages 109 - 115

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SPRUC第4回BLsアップグレード検討ワークショップ報告
Brief Report of SPRUC 4th Workshop on BLs Upgrade

西堀 英治 NISHIBORI Eiji

SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)行事幹事/筑波大学 数理物質系 Faculty of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba

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SPring-8 SACLA

 

1. 概要
 SPRUC第4回BLsアップグレード検討ワークショップが、2022年3月14日にSPring-8放射光普及棟大講堂における講演とWebex Eventsを利用したオンラインとのハイブリッドにて開催されました。本ワークショップ(WS)の目的は、第3回までのWSやSPring-8シンポジウム2019、2020、2021での議論を踏まえ、それ以降の技術開発動向やビームライン(BL)アップグレードの具体的なプラン、更には、検討事項を共有するとともに、今後の継続的なBLアップグレードに向けた議論を行うことです。344名(施設関係131名、SPRUC会員他213名)の参加登録があり、320名以上が参加しました。ちょうど新型コロナウイルス感染症の第6波と重なったため、ほとんどのユーザーがオンライン参加となりました。

 

 

2. オープニングと概要セッション
 最初に、SPRUC 木村昭夫会長(写真1)より挨拶が行われました。最初にWSの概要とその目標を説明されました。その後、今回のWSの全体のスケジュールについて述べられ、共同主催者の高輝度光科学研究センター(JASRI)、理化学研究所(理研)への謝辞を述べて、挨拶を終えられました。

 

写真1 SPRUC 木村昭夫会長

 

 

 続いて、JASRI 雨宮慶幸理事長より挨拶が行われました。JASRIは研究支援をする。支援をするためには同じことを繰り返すのではなく常に変化し、前進することが日常的に行われることが重要であり、そのためにはユーザーとの意思の統合が必要とのお考えを述べられました。共用開始から25周年を迎えるSPring-8の本格的なアップグレードに向けた準備体操をする必要があると言われました。現在は東北の次世代放射光施設を立ち上げるフェーズである、それが終わった後にSPring-8-IIということを考えなければならないとのことでした。その後、プログラム全体への言及があり、積極的な意見交換を行っていただきたいとの要望で挨拶を終えられました。
 次に、文部科学省 科学技術・学術政策局 研究環境課 萩谷遥平様より、来賓の挨拶をいただきました。まず、国の大型研究施設をめぐる状況について説明がありました。SDGsに向けての放射光施設への期待について述べられました。SPring-8の効率的な運営が求められていること、令和4年度は令和3年度並みの運転時間が確保できたことを説明されました。コロナで始まった研究のデジタルトランスフォーメーションの流れが加速していくと考えていること、今後は、SPring-8だけでなく様々な施設のデータを繋いでいくことが要望されているとのことでした。東北の次世代放射光施設についてもその安定的な稼働を期待しているとの意見を述べられました。最後に、SPring-8として変化、深化を続けていくことを期待するとして挨拶を終えられました。
 概要の最初の講演として、理研/JASRI 矢橋牧名グループディレクター(写真2)より近況サマリーの報告がありました。最初に、発表のそれぞれの項目について説明がありました。東北3 GeV、ESRFのアップグレードなど国内外の情勢、BLの再編・高度化、データセンターの整備、要素技術の開発、ユーザーニーズの反映、SPring-8-IIに向けて、来年度の運転の各項目について簡単な概略が示されました。BLの更新については、ルーチン計測(measurement)、テイラーメイド実験(experiment)、装置手法の開発(development)の3つの分類について述べられました。海外でのレビューで、“measurementとexperimentを区別しろ”とよく言われるとのことでした。施設側として、リソース配分は、measurement 60%、experiment 30%、development 10%を目安として進めようとしているとのことでした。その後、2019年から始まったBL更新の年次進展の説明がありました。大改造と実験装置改造・DX化の2種類の方法で進めているとのことでした。SACLA/SPring-8基盤開発プログラムについても説明があり、このプログラムは、利用者の個々のアイデアを施設に直接伝えるチャンネルとしても考えているとのことでした。

 

写真2 理研/JASRI 矢橋牧名グループディレクター

 

 

 次にBL再編の概要について、JASRI 放射光利用研究基盤センター 坂田修身副センター長(写真3)より講演がありました。再編にかかわる共用BLの現状について報告がありました。BL09XUの更新について、分光結晶の高熱負荷耐性向上など多くの光源系の更新により、これまでのビーム位置変動などの多くの問題点が解決されたこと、実験時間が1/10にまで短縮したとの説明がありました。実験装置についても説明があり、施設内の英知を集約した装置開発によって、実験ハッチ1、2ともに大幅な性能向上があったとのことでした。次に、BL20B2の更新について話があり、光源のアップグレードについては実測フラックスが数百倍になったとのことでした。BL35XUについても光学系の大幅な性能向上について説明がありました。性能だけでなく、分光器の切替なども整備され、強度、エネルギー分解能ともに2倍以上の性能になったとのことでした。続けて、BL13XUの説明がありました。新規の回折計と自動機器の説明がありました。BL28B2に納入される自動CT装置の話がありました。ユーザーは試料を送れば自動装置で測定できるようになるとのことでした。試料準備に関する装置の説明があり、キャピラリー充填装置、XAFSの試料自動調整装置が報告されました。最後に、持ち込み装置用の実験ハッチについて説明がありました。

 

写真3 JASRI 坂田修身副センター長

 

 

 次に利用制度について、JASRI 後藤俊治部門長(写真4)より報告がありました。最初に背景として国の中間評価のコメントの紹介、現状の問題点、BLの高度化、再編との関連について説明がありました。2022A期からの実施状況として、緊急・特別課題の設定、時期指定課題(時間単位利用)の設定、大学院生提案型課題(長期型)の設定の報告がありました。2022B期以降に導入される制度として、年6回募集の拡大について説明がありました。具体的にこの制度が実施されるBLが示されました。また、産業利用BLの運用が変更され、それぞれの手法の分科会で審査可能となるとのことでした。2023A期以降の計画として、長期間有効な利用課題の改正の説明がありました。長期利用やパートナーユーザーなどの課題の改正や、新たな成果公開方法を導入し、部分成果公開利用を設定するとのことでした。利用料金体系の改正については、「入口課金」、「出口課金」を設定していくとのことでした。長期間有効な課題については、現状の長期利用などの制度は取りやめ、抜本的に改良するとのことでした。長期の受け皿の一部として、大学院生提案型課題の長期型、パートナーユーザーの受け皿として理研基盤開発プログラム、長期の成果公開優先利用の設定、重点研究課題の設定などを行い、これまでの課題を受け持つとのことでした。入口課金については科学審査を免除し、出口課金は、審査を受け、課題実施後に成果専有、公開、部分公開を選べる形にするとのことでした。金額についても、改正案が示されました。最終的に新制度によって整理された課題全体の分布が示されました。質問のセッションでは、BL再編について研究会からの提案はどうやって施設側に相談すればいいのかという質問がありました。坂田氏より、SPRUCの動向調査報告書に記述すること、また、研究会内にJASRI、理研のメンバーがいる場合にはその人達に相談してほしいとの話がありました。出口課金での公開の判別の仕方について質問がありました。後藤氏より具体的な内容についてはこれからの議論になるとのことでした。

 

写真4 JASRI 後藤俊治部門長

 

 

3. BL再編の進捗状況
 次のセッションでは、現在進められているBL再編の進捗状況について施設側からの報告がありました。最初に、“回折・散乱BL群及びBL13XUのアップグレード”と題して、理研/JASRI 玉作賢治室長(写真5)より講演がありました。最初にBL13XUの光学ハッチについての説明がありました。Si311の使用が可能になり、高エネルギーX線利用が強化されるとのことでした。続けて実験ハッチについて、最初にハッチ3の片付けの説明がありました。実験ハッチ1、2、3が全て空になり新しい装置が入る(すでに入った)とのことでした。実験ハッチ1にはBL46XUの多軸回折計が移設されているとのことでした。産業利用の装置でしたが今後は学術利用でも使用可能になるとのことです。多軸回折計で利用可能な試料環境装置について、多数の施設保有の共用装置とユーザー持ち込み装置の両方が示されました。ハッチ2では、大型の試料環境装置を設置可能な回折装置が設置され、検出器は6軸のロボットアームに搭載されるとの説明がありました。この装置の利用例としてその場観察やプロセス観察を考えているとのことでした。また、CITIUS検出器の性能と整備計画についても報告があり、BL13XUに納入予定とのことでした。ハッチ3は高分解能粉末回折装置が納入されるとの説明がありました。既存のBL02B2の粉末回折系との性能比較が表として示され、ほぼ全ての点でBL02B2の装置を大幅に上回るとのことでした。ハッチ4については、これまで通りのナノビームを用いたX線回折が可能との説明がありました。次に、BL13XUのリモート実験への対応について紹介がありました。リモートデスクトップを使った遠隔実験が将来的に可能になるとのことでした。また、BL13XUは2022B期より年6回募集に移行するという利用制度の変更の話がありました。最後にBL04B2のPDF装置の高度化及びBL08Wのハッチ改良の説明がありました。

 

写真5 理研/JASRI 玉作賢治室長

 

 

 次に、“分光BL群及びBL39XUのアップグレード”と題して、JASRI 為則雄祐室長(写真6)より講演がありました。今年度の報告としてXAFSとHAXPESについて報告するとの説明がありました。HAXPESのBLについては、装置をBL09XUに集約したとの報告がありました。先端光学系の利用と外部制御系の整備が進められているとのことでした。ユーザー利用の例として、エネルギーを変えながらのHAXPES測定が可能になったとの報告がありました。また強度が10倍になり、分解能も高まっているとの報告がありました。BL46XUの再編の状況についても2023年からに向けた状況の説明がありました。BL09XUとBL46XUの利用制度については分科会の見直しが行われていることの紹介と2022Aでの課題審査・採択状況の報告がありました。

 

写真6 JASRI 為則雄祐室長

 

 

 硬X線分光BLのアップグレードの検討状況の報告がありました。BL37XUとBL39XUについて分野別利用状況の紹介があり、この2本のBL整備の方向性についての説明がありました。BL37XUについては、時分割を強化するとの話がありました。BL39XUについては発光分光を中心に整備を予定しているとのことでした。この目的のためにハッチ3の増設、光学系の改良を2023年夏を目標に計画しているとのことでした。その後、軟X線BLの検討状況について報告がありました。BL27SUの軟X線の発光分光器については、100倍の明るさの分光器を検討しているとのことでした。BL25SUの高分解能軟X線顕微鏡については、次世代放射光施設への移設が検討されているため、入れ替わりの別の新しい装置の設置を計画しているとのことでした。BL39XUのハッチ増設のスケジュールについて質問があり、夏期点検調整期間だけでは間に合わず、もう少し時間がかかるとの話がありました。BL37XUに溶液界面の装置を設置している研究会から今後どうなるのかという質問があり、持ち込み装置を全て排除する訳ではないので今後相談をしていきたいとのことでした。BL27SUのエネルギー領域について質問があり、まだ具体的には検討中とのことでした。BL37XUのエネルギーの下限について質問があり、下限を伸ばす予定はなく、別のBLでカバーする考え方で進めているとの返答がありました。
 次に、“イメージング・SAXS BL群のアップグレード”と題して、JASRI 登野健介室長代理(写真7)より講演がありました。最初に方針と、対象BLについての説明がありました。イメージングBLの状況についてBL20B2のアップグレードの説明がありました。多層膜ミラー分光器の導入により、40 KeVと110 KeVのX線のフラックスが数百倍から1000倍になったとの説明がありました。なお、Siの分光器も引き続き利用可能とのことでした。フラックスの増強されたCTの撮影結果や高速撮影の結果の報告がありました。BL28B2のX線マイクロCT自動測定装置の導入について説明がありました。自動測定により数多くの試料を人の手を介さず測定できるとのことでした。現状の計画されている装置のスペックが紹介され、広視野測定、高分解能測定の2モードで利用可能になるとのことでした。この装置については時間当たり9万円程度の依頼測定を計画しているとのことでした。小角散乱(SAXS)BLの現状について説明があり、問題点が示され、今後のアップグレード計画が説明されました。BL40XUについてはBLの基幹部を含めた大幅改造が予定され、将来的にはSAXS専用のBLとして運用されていくとのことでした。BL40XUへのCITIUS検出器の設置計画についての説明やイメージング、散乱同時計測ユニットの設置計画について説明がありました。同時計測ユニットについてはプロトタイプでの測定がすでに行われているとのことでした。BL40B2の溶液散乱の自動化を進めているとの報告もありました。試料チェンジャーの設置により自動化が進んでいるとのことでした。最後に、BL群の高度化のスケジュールが示されました。

 

写真7 JASRI 登野健介室長代理

 

 

 最後のディスカッションでは、次世代放射光施設とのすみ分けについての質問がありました。施設側からは、性能で分ける訳ではなく、次世代にもSPring-8にも必要な装置は設置していくように考えているとの意見がありました。ユーザーから国内の施設全体のポートフォリオを議論する場がないため、こうした場がそれに利用できればいいとの意見がありました。ユーザーから自動CT装置のデータフォーマットについて質問があり、施設側から、今後、関係研究会の方々と議論していきたいとの説明がありました。

 

 

4. 新装置・手法の開発
 昼食休憩をはさみ、次の新装置・手法の開発のセッションでは、3件の講演がありました。最初に、“High-energy test bench(05XU)の進捗”と題した講演が、理研 林雄二郎チームリーダー(写真8)より行われました。最初に、課題として国際競争力の維持が挙げられました。高エネルギーの利点として、試験片から実部品へという産業利用の例が示されました。2020年度に多層膜分光器を光学ハッチ1に納入してフラックスを確保したこと、2021年度に光学ハッチ2に多層膜KB配置の集光ミラーを導入したことの紹介がありました。学術から産業にわたるトライアルユース実験が行われているとの説明があり、3DXRDの研究例についての報告がありました。プリント基板上のはんだの方位マッピングに世界で初めて成功した例や10 mmφ以上のサイズの鉄の方位マッピングの成功例の報告があり、ハウジングに覆われた部品の実験が可能になるとのことでした。また、1 μm3の分解能が可能になるとの報告がありました。

 

写真8 理研 林雄二郎チームリーダー

 

 

 次に、“2021年度SPring-8基盤開発プログラム1”と題して愛媛大学の河野義生氏から講演がありました。最初に、高圧化の液体・非晶質研究の科学的な物理・化学・地球科学分野でのモチベーションについて説明がありました。次に、海外の高圧化の液体・非晶質研究の現状がAPSとESRFを中心に例が紹介されました。その後、この研究で実現した実験条件が説明され、到達した温度、圧力の紹介がありました。この実験の要点は100 KeVの高エネルギーとピンクビームによる高フラックスにあるとのことでした。装置の説明の後、1 GPa(大気圧)と10 GPa(高圧)のGeO2ガラスの測定データが示されました。どちらもほぼ遜色のないデータでQ < 28 Å-1の世界最高分解能のデータが得られているとのことでした。海外の同等の施設をはるかに超えたデータを得られるようになったとのことです。
 続けて、“2021年度SPring-8基盤開発プログラム2”と題して群馬大学の鈴木宏輔氏より講演がありました。自動車の脱酸素化におけるオペランド測定の重要性の説明がありました。次に、既存のBL08Wでの電池のオペランドコンプトン散乱イメージングの例が示されました。その中で現状の問題点として、検出効率の低さと測定対象に制限があることが説明されました。新しいコンプトン散乱イメージングとしてマルチピンホール化の符号化開口を発案し、基盤開発プログラムに応募したとのことでした。実際の実験時の配置が示され、Cuブロックを使って性能を評価したところ、BL05XUで実験可能なことが示されました。実際の電池を利用しての実験結果も示されました。マルチピンホール化の実験の現状についても説明があり、ピンホールと検出器のアライメントが今後の検討課題との説明がありました。

 

 

5. データ
 データのセッションでは、理研/JASRI 初井宇記氏(写真9)より、“SPring-8データセンター構想”についての講演がありました。データ増大に関する類型化と課題、検討中の機能について説明がありました。試料当たりのデータ量は1試料当たり1 TBが現状のSACLAなどの状態であるとの説明がありました。1日当たりの試料数については100試料が現状で今後は10000へと進んでいくとのことでした。1試料当たりの大量データを大量高精細データと称し、その検討状況について説明がありました。この種のデータについては解析律速があり、計算が遅いこと、解析手法に問題があることが原因になっているとのことでした。解析フローの提案として、並列計算を使って多条件の解析を並列に進めることが提案されました。SPring-8データセンター構想について、ネットワークの100 G化を施設内外で進め、ネットワークを高速化すること、圧縮技術を高めることなどの整備が進められているとのことでした。データの管理について国立情報学研究所(NII)のシステムが紹介され、SPring-8データセンターも連携していくことを計画しているとのことでした。多数の試料を測定する多数試料系については、データの流通基盤を提供することを検討しているとのことでした。企業内サーバ、商用クラウドでのデータ利用については、現在ヒアリングとR&Dを進めているとのことでした。2023年の夏には共用利用が進められるように計画が進んでいるとのことでした。2022年度には試行利用が進められるため、要望や意見と試行利用への参加を希望するとのことでした。

 

写真9 理研/JASRI 初井宇記氏

 

 

6. 総合討論
 休憩をはさみ、SPRUC 木村会長をモデレーターとして、総合討論が行われました。施設側から、理研/JASRI 矢橋氏、JASRI 坂田氏、JASRI 後藤氏、理研/JASRI 玉作氏、JASRI 為則氏、JASRI 登野氏が会場でカメラに映る位置に着席し、ユーザーからの質問に答える形で進められました。
 SPRUCの研究会の複数名から討論での発言がありました。放射光構造生物学研究会 大阪大学 栗栖源嗣氏から、“生命科学における構造生物学の位置付けから”と題してスライドを利用しての意見がありました。実験空間と情報空間を繋ぐのが構造生物学であるとの説明が最初にありました。研究者の裾野の広がりからSPring-8には非専門家でも使える研究基盤であってほしいとのことでした。SPring-8にはGoogle Earthのようなマルチスケールで多様な情報が得られる場所であってほしい、そうなれば鬼に金棒との意見がありました。その後、SPring-8のタンパク質構造解析環境としてCryo-TEMも含めた各BLがそれぞれの特徴とともに説明されました。複数の手法を組み合わせて解析した時にどうすればいいかが現在の問題になってきているとの問題提起がありました。具体的には同じものの計算の構造、X線の高分解能の構造、TEMの中分解能の構造をどう評価するかが問題になってきているとのことでした。こうした問題を今後、施設側と議論しながら進めたいとのことでした。不規則系機能性材料研究会 NIMS 冨中悟史氏から、データの種類の分類について、計測後の処理に違いがあり、処理から先がどうなるかが今回の再編計画では見えにくいとの指摘がありました。データを測定した段階から処理プロセスが多いものと少ないもので違いがあり、どこまでを施設側がやってくれて、どこからは研究会がやることを考えればよいかの判断ができないとのことでした。施設側からは、IT化を進め、解析コードを使いこなせるように進めていく方向に仕組みを作りたいとのことでした。ただし、施設がどこまでやるかは切り分けが難しく、今後とも検討を進めたいとのことでした。構造解析については、市販品がある場合には各BLに導入済みで解析可能、PDFについては、S(Q)を出すところまでは施設として進めるとのことでした。コンプトン散乱研究会 群馬大学 櫻井浩氏からコンプトン散乱研究会の活動についてスライドを使って説明がありました。次に、BL08Wのハッチの改造による効率化とユーザー利用の現状の話がありました。続けて各ハッチを利用した研究について研究会での検討が示されました。施設からは、研究会から提案のあったハッチの穴の拡大は難しく、今の穴と変わらないサイズになるとのことでした。また、その他の点についてはユーザーの方々との意見交換を進めたいとのことでした。固液界面研究会 東京大学 原田慈久氏から、固液界面研究でのX線利用について説明がありました。硬X線の例として、ESRFの78 KeVでの固液界面の表面回折の研究例が示されました。最先端の研究例としてコヒーレンスを使った固液界面のスペックル実験の例が示されました。軟X線については液体側を見るのがフロンティアであり、今後の放射光が目指す方向の一つであるとの説明があり、将来BLが目的とするスペックが示されました。施設側からは、液体は重要な分野でSPring-8でも継続して進めていく予定との話がありました。高圧物質科学研究会 広島大学 石松直樹氏から高圧のユーザーが利用しているBLについて、高圧物質科学と地球惑星科学研究会に対して行ったアンケート結果が示され、SPring-8で約20の多くのBLが利用されていることが示されました。次に高圧物質科学からの提言として、1)マイクロビームとサブマイクロビームの重要性、2)検出器の高度化への期待、3)イメージング測定との融合、4)XRDとXAFSの同時測定の充実、5)硬X線領域のXMCDの継続の5つの項目について説明がありました。X線スペクトロスコピー利用研究会 京都大学 内山智貴氏からは、データフォーマットをSPring-8、PF、Aichi、SAGA、立命館、分子研などで共通化をしてほしいとの要望がありました。データの利用に関するルール作りが必要との意見がありました。ex-situ硬X線XAFS実験はすでに人間律速になっている。持ち込み装置と計測装置が同期できるようになってほしいとの要望がありました。BL39XUのXES、HERFD、XASはぜひ進めてほしい、3dと4dの吸収端を同時に計測できるようにしてほしいとの要望がありました。利用制度について、1課題で複数BLを利用できるようにして欲しいとのことでした。X線発光・非弾性X線散乱スペクトロスコピー研究会 東京大学 高橋嘉夫氏から、4.9~55 KeVまでの100 nmビームを用いたSPring-8ならではのBL37XUの利用例が示されました。BL39XUについては、微量試料のXANES解析について0.42 ppmのEuの価数分析の利用例が示されました。BLの高エネルギー分解能化は微量元素分析にも役立つとのことでした。最後にTESという高エネルギー分解能検出の説明があり、SDDの25倍の分解能を有すること、SDDでは見えないスペクトルが見えることが示されました。最後に地球惑星科学研究会 岡山大学 芳野極氏から研究会の活動について説明がありました。今後の展開として、XRD、イメージング、XFRの複合測定の時分割、2次元、3次元スキャンが、必要となるとの提言があり、高圧プレスの配置をアップグレードの際に検討してほしいとの意見がありました。施設側からは利用課題の複数BL利用については、分科会の区分など、すぐには難しいとのことでした。まずは、成果公開優先利用において1課題で複数BLを可能にしていきたいとの意見がありました。

 

 

7. クロージング
 最後のクロージングセッションでは理研放射光科学研究センター 石川哲也センター長(写真10)よりまとめとして閉会の挨拶をいただきました。日本のコミュニティとして足りないものが何かが段々分かってきて今後を考えるのに役立っているとの話がありました。一方で、エネルギーの費用が増加しており、今後どうするかが問題になってきている、今後もユーザーと意見交換して進めていきたいとのことでした。
 以上、今回は1日のWSでしたが、実際にアップグレードが進められる中で、研究会からも活発な意見が見られる有意義な場であったと思います。

 

写真10 理研 石川哲也センター長

 

 

SPRUC第4回BLsアップグレード検討ワークショップ プログラム

3月14日(月)
<オープニング>(座長 SPRUC利用委員長 田中義人)
9:00- 9:15 主催者挨拶(SPRUC会長 木村昭夫)
主催者挨拶(JASRI理事長 雨宮慶幸)
来賓挨拶(文部科学省 科学技術・学術政策局 研究環境課 萩谷遥平)
<概要>(座長 SPRUC利用委員長 田中義人)
9:15-10:15 近況サマリー(理研/JASRI 矢橋牧名)
BL再編の概要(JASRI 坂田修身)
利用制度について(JASRI 後藤俊治)
ディスカッション
10:15-10:20 休憩
<BL再編の進捗状況>(座長 SPRUC幹事 西堀英治)
10:20-12:05 回折・散乱BL群及びBL13XUのアップグレード(理研/JASRI 玉作賢治)
分光BL群及びBL39XUのアップグレード(JASRI 為則雄祐)
イメージング・SAXS BL群のアップグレード(JASRI 登野健介)
ディスカッション
12:05-13:00 昼食休憩
<新装置・手法の開発>(座長 SPRUC幹事 藤原秀紀)
13:00-13:45 High-energy test bench(05XU)の進捗(理研 林雄二郎)
2021年度SPring-8基盤開発プログラム1(愛媛大学 河野義生)
2021年度SPring-8基盤開発プログラム2(群馬大学 鈴木宏輔)
<データ>(座長 SPRUC幹事 藤原秀紀)
13:45-14:10 SPring-8データセンター構想(理研/JASRI 初井宇記)
14:10-14:30 休憩
<総合討論>(モデレーター SPRUC会長 木村昭夫)
14:30-16:00 総合討論
<クロージング>
16:00-16:10 まとめ(閉会挨拶)(理研放射光科学研究センター長 石川哲也)
16:15-17:10 SPRUC特別総会

 

 

 

西堀 英治 NISHIBORI Eiji
筑波大学 数理物質系
〒305-8571 茨城県つくば市天王台1-1-1
TEL : 029-853-6118
e-mail : nishibori.eiji.ga@u.tsukuba.ac.jp

 

 

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