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Volume 27, No.2 Pages 107 - 108

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

SACLA Users’ Meeting 2022
Report on SACLA Users’ Meeting 2022

大和田 成起 OWADA Shigeki

(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室 XFEL Utilization Division, JASRI

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SACLA

 

1. はじめに
 2022年3月2日から3日にかけて、SACLA Users' Meeting 2022が開催された。COVID-19の影響により、前回に引き続き「Zoom」を利用したオンラインのみでの開催となった。当日は、最新のSACLAの性能に関する情報共有や、XFEL利用研究の将来のあり方について、施設とユーザーコミュニティーおよび利用者同士で議論が行われた。

 

 

2. 会議の内容
 第1日目は、米田仁紀教授(電気通信大学、SACLAユーザー協同体会長)および、石川哲也RSCセンター長による開会挨拶に続いて、“Facility”セッションとして、本会議の概要説明、施設の現状報告、次世代検出器CITIUS開発状況の報告が行われた。施設の現状報告では、恒例の課題申請状況や施設高度化報告に加えて、海外の研究グループによる、SACLAでは初となるリモート実験が行われたことが報告された。
 “Scientific Talks”では、尾崎典雅准教授(大阪大学)による高強度レーザーを用いた高圧物性科学、松田巌教授(東京大学)による軟X線FELを用いた非線形分光に関する招待講演が行われた。
 第1日目午後にはブレイクアウトセッションAとして、2つのテーマによるセッションが同時並行で開催された。1つ目のテーマである、“High-resolution and high accuracy femtosecond crystallography”セッションでは、結晶構造学分野での実験において、より高分解能のデータを得るために20 keV付近の利用や次世代検出器などに関する議論が行われた。“New perspectives using the coupling between high-power nanosecond laser and XFEL at SACLA”セッションでは、高強度ナノ秒レーザーを用いた実験において、今後求められるXFELや実験装置の性能についての議論が行われた。
 第2日目午前は、まず2021年度のSACLA基盤開発プログラムの進捗報告(前編)として、Mark Dean博士(Brookhaven National Laboratory、採択課題名:“Time Resolved Resonant Inelastic X-Ray Scattering Beyond Iridium”)、池田暁彦助教(電気通信大学、採択課題名:「ポータブルパルス超強磁場発生装置PINKによるXFEL-100テスラ共用実験」)、松山智至准教授(名古屋大学、採択課題名:「新規結像ミラーに基づいたsub-10 nm XFEL集光装置の開発」)の3件の講演が行われた。
 続くブレイクアウトセッションBでは、前日同様に2つのセッションが同時に開催され、“Recent achievements and future perspectives in materials science at SACLA”セッションでは、物質科学研究での軟X線(BL1)および硬X線(BL3)FEL利用がテーマとなった。BL1についてはFELや共用装置の開発・高度化、BL3については中赤外からTHz領域の励起光源の高度化と利用に関する内容を中心に議論が行われた。もう一方の、“Nanofocusing XFEL: 100 nm- and 10 nm-focusing capabilities at SACLA”セッションでは、100 nm集光装置(100 exa)およびSub-10 nm集光装置の現状と、ナノ集光されたX線パルスを、どのように実験に用いるかなどについての議論が行われた。
 第2日目午後は、「若手研究者と共に考える30年後のX線利用研究」と題する特別セッションが開催された。本セッションは、SACLA供用開始10周年を迎える節目の年において、さらなるSACLAの発展形を考え、それを活用した研究について議論する場として企画された。施設・利用者から合計6名の若手研究者が、それぞれの想像する30年後のSACLAについて講演した。現状を手堅く発展させた内容から、非常に独創的な内容まで、それぞれの講演者の個性を強く反映した大変面白いセッションとなった。
 続いて、SACLA基盤開発プログラム進捗報告(後編)が行われ、岩田想教授(京都大学、採択課題名:「生体分子動画測定装置の開発」)、江川悟博士(理化学研究所、採択課題名:「回転体結像ミラーの瞳分割による軟X線多波長イメージングシステムの開発」)、宮脇淳博士(量子科学技術研究開発機構、採択課題名:「広ダイナミックレンジ・高速読み出し軟X線用CMOS検出器の開発」)の3件について、今年度の進捗報告がなされた。
 最後のクロージングセッションでは、全参加者で本会議にて議論された情報を共有し、米田会長の挨拶をもって本会議は閉会となった。

 

 

3. まとめ
 SACLA Users' Meetingは、一般的な学術発表のための会議ではなく、利用者と施設および利用者間の情報共有と意見交換を主な目的として開催され、今回で通算7回目の開催となる。前回に続き対面での開催はかなわずオンラインのみとなったが、各セッションにおける議論などを通じて、その目的は果たせたように思える。今後も、利用者からの要望に対する施設側の対応や、施設側からの情報を活かしたSACLA利用研究の展開などに注目していただきたい。2022年度以降も、SACLA Users' Meetingは開催される予定となっている。次回については詳細が決まり次第、SACLAのホームページ(http://xfel.riken.jp)などで情報が公開される予定である。
 今回のSACLA Users' Meetingも盛況のうちに終えることができたのも、国内外の多くの利用者の方々に参加いただき、活発に議論していただいたことに尽きると思われる。本会議に関わった皆様に厚く御礼を申し上げ、SACLA Users' Meeting 2022の報告とさせていただく。

 

 

 

大和田 成起 OWADA Shigeki
(公財)高輝度光科学研究センター XFEL利用研究推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0992
e-mail : osigeki@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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