Volume 26, No.2 Page 173
4. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS
SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて 分科会主査報告3 −XAFS・蛍光分析分科会−
Proposal Review Committee (PRC) Report by Subcommittee Chair – XAFS and Fluorescence Analysis –
SPring-8利用研究課題審査委員会 XAFS・蛍光分析分科会主査/(株)日産アーク 解析プラットフォーム開発部 Analysis Platform Department, NISSAN ARC LTD.
令和元年~令和2年度(2019B~2021A期)のXAFS・蛍光分析分科会主査を仰せつかり、この期間微力ながら雨澤浩史先生(東北大学)、為則雄祐先生(JASRI)と共に務めさせていただきました。2020年度は、コロナ禍というこれまでにない状況でありましたが、施設側の切れ目ないビーム供給、柔軟な課題募集、キャンセル枠への繰り上げ採択などの対応により、数多くの課題が実施されましたこと、関係者の皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。
本分科会では、XAFS・蛍光X線分析の手法を扱い、各期およそ6本のビームラインにまたがる課題の審査を行いました。課題申請に対するレフェリーの評価をもとに、選定課題の決定、ビームラインの決定、シフト配分、分科会としての評価点および申請者への審査コメントの作成を行っています。
XAFS・蛍光X線分析は、試料周りの制約が少ないことから非常に多くの分野で利用されています。触媒、金属、セラミックス、半導体、高分子材料など多様な材料を対象とし、基礎科学分野から、素材、エレクトロニクス、化学、エネルギー、医療、食品など多くの応用分野も含んでいます。また、新材料開発に伴う構造・状態の解析のような汎用的な利用から、特殊環境下やデバイス動作を模擬したオペランド計測、構造解析との複合計測、CTと分光を統合した計測、最先端計測領域に踏み込んだ課題など、多岐にわたっています。そのため審査にあたっては、レフェリーには評点のみならず、詳細な評価コメントを求め、評点のバラつきなどを見ながら慎重に検討を行いました。ボーダーライン付近では、分科会委員も課題申請書を細部まで読み込み、採否を決定しました。
採択課題の傾向としては、当初は、蓄電池・燃料電池・触媒といった応用系のテーマが多く申請/採択されていましたが、大型プロジェクトの実施と共に、成果公開優先利用課題として採択されるようになりました。
これに伴い、分科会での審査対象としては、新材料、地球科学、生物、海洋科学など基礎科学分野や、セラミックス、エレクトロニクス、医療などの課題も増えてきました。このような傾向を踏まえ、分科会では、新分野、新規利用者の促進を促すように選定をさせていただきました。大学院生の課題についても、申請書の技術内容のレベルが年を追って上がっており、多くの課題が採択されるようになってきています。
このように新規利用者の増加を増やす試みの1つとして、不採択となった課題に対して、フィードバックを行う試みも開始されています。研究対象/手法が多岐にわたることから、専門家外のレフェリーに対しても、目的や意義、測定の内容・手順、実験後の解析、得られた成果の展開方法など、わかりやすく説明できれば、採択に繋がります。
一方で、利用希望が集中するビームライン/測定手法、あるいは、実験を実施するために多くのビームタイムを要するような提案については、科学・産業的な価値は認めつつも採択に至らない課題もありました。これについては、その状況を施設側とも共有し、実験枠の増加を要望させていただいています。
今後も多くの優れた提案課題が実施され、大きな成果が得られることを期待しています。
(株)日産アーク 解析プラットフォーム開発部
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