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Volume 25, No.4 Pages 347 - 351

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

新型コロナウイルス感染症に関するSPring-8およびSACLAの対応について
Information against COVID-19 at SPring-8/SACLA

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

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SPring-8 SACLA

 

1. COVID-19に対するSPring-8/SACLAにおける対応の概略
 利用者の皆様もすでに多くの影響を受けておられると思うが、2019年の末頃から一般的に認識され出した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SPring-8およびSACLAの利用運転にも多大な影響を与えている。2020A期の利用に関しては、4月半ばから6月半ばまでの間、播磨キャンパスに勤務するスタッフによる利用、および新型コロナウイルス感染症関連研究以外はすべて中止となり、採択されていた課題実験の多くが秋以降のスケジュールに変更されている。そのため、通常であれば実施されるはずであった2020B期をキャンセルし、2020A期を年度いっぱいまで延長する措置をとっている。このような措置は、SPring-8の共用が始まってから初めてのことであり、また、いつまでこのような状況が続くかも見通せない中ではあるものの、今後のための記録という意味も込めてこの間の経緯を説明させていただきたい。
 表1に、2020年1月以降の政府や施設者である理化学研究所(理研)などの関係機関の動き、および、ユーザーに向けたアナウンスや対応などを簡単にまとめたものを示す。JASRIでは、WHOの緊急事態宣言に先立つ形で、1月24日にいろいろなケースを想定した場合の対応が相談され、安全衛生担当理事の下で、その後随時対策会議が実施されている。また、理研播磨地区の対策会議との連携を取る形でいろいろな対応が議論されている。理研播磨地区の対策会議では、和光本部の方針との整合性を取りながら、常勤スタッフ(理研、JASRI、その他専用施設ビームラインのスタッフを含む)およびユーザーのキャンパス内への立ち入り基準について関係部署と協議をし、JASRIではその方針を受けてユーザーや専用施設への通知を行っている。また、JASRIでは、理研の方針に準ずる形でユーザーないしスタッフの発熱など、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる症状が出た場合に対する様々な事例を想定し、連絡手順の確認や待機する部屋の設定など対策フローを定めてスタッフに周知している(政府や理研の対応策の変遷に応じて、このフローもすでに十数回見直され現在に至っている)。最新の対応策に関しては、SPring-8/SACLA User Informationサイトに掲載しているので、来所前には必ずご確認いただきたい。
 また、受け入れる施設側としても、実験フロアや建物入り口付近、各ビームラインへの消毒用アルコールの設置、マスクもしくはフェースシールド着用の上でユーザー対応にあたること、密な状況を避けること、特に食堂での対面着座の中止、研究交流施設や、建物ドアノブの清掃消毒の徹底、ユーザー入れ替わりのタイミングでのキーボードやハッチドアノブの消毒、机の上への透明パーティションの設置など可能な対策を取って利用実験を再開している。さらにユーザーの皆様にも、必要最低限の人数での来所や、時間的空間的になるべく交わる機会を少なくする工夫をしての来所実験をお願いしているところである。万一発熱などの症状がある場合は、来所をお断りしたり、PCR検査の結果を待たずに実験を中止していただいたりする場合もあり得るので、万全の体調で来所していただくよう準備をお願いしたい。実験中、あるいは実験前後の打合せも極力スムーズに行っていただくために、Web会議をぜひ有効利用していただきたい。施設内ネットワーク環境については十分な容量や通信スピードが確保されている。

 

 

2. 対応の経緯
 以下に、時系列に従って、主だったユーザー対応について記述する。当時世界の感染の中心であった中国は1月24日から30日までの間春節の休暇期間中であり、WHOの緊急事態宣言は30日(日本時間31日)であった。SPring-8では中国から来所するユーザーに対し、2月7日以降、すでに日本に入国して2週間以上経過している人以外の入所をお断りする措置を理研の要請により行った。当時の中国本土の各研究機関では、日本が思っている以上に移動制限が厳しく設定されており、来所を遠慮していただきたい旨の通知に対する反応もほぼ混乱なく受け入れていただくことができた。2019B期に関してはこのような対応の下ほぼ混乱なく終了した。
 4月に入ってから、すなわち2020A期の開始とともに状況は厳しいものとなった。3月中旬から政府の動きも活発になり、放射光学会会長から国内の各放射光施設に対して運転の休止を呼びかけるメールが配信された。SPring-8/SACLAにおいても、ユーザーや現場の担当者から、実験が可能なのかどうか、ビームタイムがキャンセルになった場合の扱いはどうなるかなどについての質問が多く寄せられたが、日々状況が変わり、政府や理研の対応が定まらない中では決定ができない事項も多く、やきもきされた方も多いと思われるがご容赦いただきたい。理研とJASRIの間で、運転および利用の可否についての議論が行われた。理研和光本部の動きは、政府方針よりも少しずつ厳しめの方針が立てられていたが、外部ユーザーが数多く利用している播磨キャンパスの現状を理解していただきながら、最終的には東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡に対して政府の緊急事態宣言が出されたタイミングと同時に4月7日以降のユーザー受け入れを停止することとした(但し、4月7日以降、すでに実験のために播磨に向かっていたユーザー、実験中のユーザーの便宜を考え、実験を途中で打ち切るなどの影響が少なくなるよう4月11日まではユーザー利用を継続した)。
 JASRIのスタッフは4月13日より、基本的に在宅勤務を開始した。JASRIでは、コロナの蔓延する前より、GoogleのクラウドシステムG Suiteを導入しており、Web会議やスケジューリング、資料の共有などがあまりストレスなく実施できる状況が整っていたため、大きな問題はあまりなかったように思う。研究系、事務系ともに施設の維持管理など最低限の人数のスタッフのみが出勤した。ユーザー利用は停止されていたが、播磨キャンパス常駐スタッフが実施する新型コロナウイルス感染症関連研究の緊急課題、および成果専有時期指定課題を受け付け、共用ビームラインでは実際に数件の課題が実施された。関連課題が実施されると想定されるビームライン以外は夏期停止期間に準ずる状態で停止したが、加速器は立ち上げに時間がかかることが想定され、運転状態をほぼ維持していた。
 利用停止期間がどのくらいの期間にわたるかは見通せなかったが、5月の連休明けの段階で、2020A期に実施できなくなる課題が相当数に上ることが想定されたため、急遽、2020A期を年度末まで延長し、2020B期は実施しない(課題公募は行わない)こととした。また、ユーザー利用を停止した期間中に行われるはずだった実験は原則として10月以降に延期し、再スケジュール調整の上で割り付けることとした(一部7月に実施できた課題もあった)。また、本来であれば2020B期に応募予定であったユーザーも存在すること、および夏期停止期間までにある程度は2020A期の採択課題も実施できることが想定されたことから、秋以降に余裕の出る残りのビームタイムを配分するために6月25日からSPring-8、7月3日からSACLAの追加募集を行うこととした。これらの措置については、5月中旬に選定委員会をメール審議で行うことによって承認を得た。これらの措置を受け、利用推進部では、2020A期の実験予定日が迫ったユーザーに対して延期を行う旨の周知を個別に行っていった。
 5月中旬には、感染者数も減り始め、国の緊急事態宣言も兵庫県を含む8都道府県を除く39県で解除された。5月25日に全都道府県に出されていた緊急事態宣言が解除されたが、理研からの人の往来制限に関する通達は継続していたため、利用運転の開始についての相談を始めた。最終的にはまだ感染者数の多い5都道県を除くユーザーの来所は6月15日からとし、6月19日からすべての国内ユーザーの来所が可能となった。JASRIでは、10月1日現在ほぼすべての職員が在宅勤務を行わない状態が基本となっている。
 この間、予定されていたSPring-8シンポジウム、産業利用報告会などの会合もオンライン形式や、オンラインと現地とのハイブリッド形式に変更されるなど、これまでとは全く違う状況になっている。結局、夏期停止期間前にはSPring-8で4割弱、SACLAで2割弱(SPring-8、SACLAともに実験日程の一部のみ実施できた課題を含む)の課題が実施でき、残りは10月以降に延期となった。

 

 

3. 今後の利用について
 6月半ばから、通常のユーザー利用が開始されたが、国内からの来所ユーザーの利用に限られている。夏期停止期間が終了し、10月に入ってからユーザー利用が再開したものの、入国制限措置等により、まだ海外からのユーザーの来所がかなわない状況が続いている。海外ユーザーの利用はなるべく2021年1月、2月に割り付けるよう、ビームライン担当者に依頼をかけたが、それでもかなりの数のユーザー実験がキャンセルになることが予想される。このような状況に鑑み、2021A期の課題募集は通常通りのスケジュールで行うものの、これまでとは異なり、採択課題よりも審査の点が少ない課題も補欠課題として設定する運用を行うこととした。審査時につけられた点数の順位が優先されるが、その他来所スケジュールや装置のセットアップ変更、バンチモードとのマッチングなどの条件を考慮し、最終的には課題審査委員会に承認を得る形で採択課題とする。正規の採択課題のキャンセルの有無に関しては実験開始予定日の40日前に判断することとした。また、なるべくキャンセルを出さずに済むよう、海外ユーザーにも日本国内のユーザーとの共同研究などの形をとり、本人が来所しない形でも実験が行える環境を整えるよう推奨することとした。さらに、この2021A期の運用方針は、2020A期の残りの課題についても、先般行った追加募集時の不採択課題を補欠課題とすることとして運用を始めることにした。すでに、候補となる利用者の皆様には調整が始まっていることと思う。以上の方針も、9月中旬にWeb会議方式で選定委員会を開催し、承認を得た。2021B期以降も、このような運用を続けるかどうかは今後の推移を見ながら判断していきたい。
 10月から2020A期後半のユーザー利用が開始された。SPring-8/SACLAにおいても、利用者の皆様に安全に利用実験を行っていただけるよう様々な感染防止対策に努めている。写真1から5で一部を紹介しているが、詳しくはSPring-8/SACLA User Informationサイトでご確認いただきたい。
 10月1日以降、ビジネストラック、レジデンストラックという方式により、海外からの入国制限が徐々に解除されつつあるが、すべての利用者がこの方式で入国できるかどうかは不明である。各所に問い合わせをしながら、ビームタイムを有効に配分する方策を進めている。
 以上ご紹介してきたように、2020年が始まってからの新型コロナウイルス感染症拡大の影響でSPring-8/SACLAの利用研究にも大きな影響があった。1997年のSPring-8運転開始以降初めての運用変更など、なるべくフレキシブルに対応してきたつもりではあるが、すべての皆様のご要望には沿えなかったものと思う。今後もいろいろ未経験の取り組みが必要となってくることと思われるが、できる限りの知恵を絞って対応していく所存である。利用者の皆様のご理解とご協力を切にお願いしたい。

 

写真1 ユーザー受付に設置された感染防止対策用の透明パーティション、手指消毒用アルコール

 

写真2 BL02B2に設置された感染防止対策用の透明パーティション

 

写真3 リング棟実験ホール入り口扉付近に設置された手指消毒用アルコール

 

写真4 ユーザー談話室扉の感染防止対策に関するお知らせ

 

写真5 ユーザー談話室に設置した消毒機材一式

 

 

表1 新型コロナウイルス感染症への対応経緯
日付 関係機関の動き(国・理研) 日付 対応経緯(JASRI)
    1月24日 新型コロナウイルス感染症に関する対策についての協議開始
1月31日 世界保健機関(WHO)からの緊急事態宣言 2月4日 User Informationサイトに「新型コロナウイルスに対する対応について」を掲載
3月13日 国:改正新型インフルエンザ等対策特別措置法成立 3月19日 User Informationサイトに入国制限情報を掲載(リンク)
3月26日 国:改正特措法に基づく「政府対策本部」が設置 3月24日 共用ユーザー等の来所禁止措置
3月29日 国:政府対策本部が「基本的対処方針」を決定    
4月7日 国:緊急事態宣言(東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡)
理研:共用ユーザー等の受入停止措置を決定
4月7日 User Informationサイトに「SPring-8/SACLAのユーザー利用の停止について」を掲載
SPring-8新型コロナウイルス感染症関連の課題募集受付開始
4月8日 理研:全職員在宅勤務指示発出(5月10日まで)活動制限レベル4
(原則在宅勤務+外部ユーザー来所制限)
4月11日 共用ユーザー等の利用停止措置
4月16日 国:緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大(13特定警戒都道府県) 4月13日 JASRI職員の在宅勤務開始
    4月30日 ユーザー利用の再開に関する協議開始
    5月1日 User Informationサイトに「SPring-8/SACLAのユーザー利用の停止について(5/1更新:停止期間の延長)」を掲載
5月4日 国:緊急事態宣言を5月31日まで延長(対象は全国)    
5月7日 理研:全職員在宅勤務の延長指示発出(6月7日まで)    
5月14日 国:緊急事態宣言 39県の解除を決定(兵庫含8都道府県は継続) 5月18日 第31回SPring-8選定委員会(メール審議)
第21回SACLA選定委員会(メール審議)
(2020A期課題の10月以降への延期、2020B期の募集中止等)
5月20日 理研:播磨地区の活動制限レベル3への移行
(可能な限り在宅勤務、外部ユーザー制限、コロナ関連課題以外の実施も可能になる)
   
5月21日 国:緊急事態宣言 大阪、京都、兵庫を解除(5都道県は継続) 5月21日 リモート利用、常駐スタッフによる利用の制限緩和
5月25日 国:緊急事態宣言が全都道府県で終了
   
  国:政府対策本部が緊急事態解除後の「基本的対処方針」を決定 5月27日 User Informationサイトに選定委員会決定事項を掲載
「2020A期の採択済み課題および2020B期の課題募集の取扱についての概要」
SACLA新型コロナウイルス感染症関連の課題募集受付開始
    6月3日 ユーザー利用再開案の策定
6月5日
理研:ユーザー来所および利用再開決定
来所は6月15日から再開、ユーザー利用は6月16日から再開
但し、5都道県(東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道)、海外からの来所については制限を継続
6月5日 User Informationサイトに「ユーザー利用の再開について」を掲載
6月15日 理研:播磨地区の活動制限レベル2への移行 6月15日 ユーザー来所の一部再開(5都道県、海外除く)
  (在宅勤務措置の緩和、外部ユーザー制限一部緩和) 6月16日 ユーザー利用の再開
User Informationサイトに利用再開に関する関連情報を掲載
「実験のために来所される予定の皆様へ(6月16日更新)」
「SPring-8/SACLAにおける感染予防対策について(同上)」
「新型コロナウイルスに対する対応について(同上)」
    6月19日 ユーザー来所を全国規模で再開(海外除く)
User Informationサイトに5都道県からの来所再開を掲載
    6月25日 User InformationサイトにSPring-8 2020A期の追加募集の案内を掲載
    6月26日 User Informationサイトに「利用実験におけるWeb会議の利用について」を掲載
    7月3日 User InformationサイトにSACLA 2020A期の追加募集、および試験利用の案内を掲載
    7月26日 2020A期(前半)のユーザー利用期間終了
8月26日 理研:播磨地区の活動制限レベル1への移行
 (スタッフの通常勤務、国内ユーザー受け入れ)
  夏期停止期間
    9月17日 第22回SACLA選定委員会(Web会議)
    9月24日 第32回SPring-8選定委員会(Web会議)
(2021A期における補欠課題の設定等)
    9月28日 User Informationサイトに「新型コロナウイルス感染症への感染防止対策について」を掲載
JASRI職員が通常勤務体制へ復旧
    9月30日 User InformationサイトにSACLA 2021A期の課題募集の案内を掲載
    10月1日 User Informationサイトに「2020A期後半(2020年10月~2021年2月)における利用研究課題およびビームタイムの運用について」(SPring-8)を掲載
    10月2日 2020A(後半)ユーザー利用実験の開始
    10月7日 User Informationサイトに「今後の実験実施形態について」(SACLA)を掲載

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794