Volume 25, No.3 Page 268
4. 談話室・ユーザー便り/USER LOUNGE・LETTERS FROM USERS
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)四季報
SPRUC Communications
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)会長/広島大学 大学院先進理工系科学研究科 Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University
SPring-8シンポジウムのオンライン開催
SPRUCの重要な活動の1つとして、SPring-8シンポジウムを2012年より毎年開催してきましたが、これに関して新年度早々に決断を迫られることになりました。コロナ感染症拡大防止の観点で、SPring-8が4月から約2ヶ月間利用停止となりました。現在利用は国内ユーザーには再開されておりますが、同じような事態が繰り返されることが懸念されます。一方、これまで限定的にしか行われていなかった実験試料のメールインサービスや遠隔実験の導入拡大への意識もユーザーの間で高まったという印象を受けています。私が専門とする軟X線分光実験に遠隔実験を適用するためには様々な点をクリアする必要がありますが、会員の皆様と施設側との入念な意見交換により新たな試みが可能になるかも知れません。いずれにせよ、パンデミックな状況でも、研究活動を維持できる環境づくりが必要であるということは会員の皆さんが強く望んでおられることと思います。そのような意味も込めて、今年度のSPring-8シンポジウムのテーマを、「ポスト・コロナ時代のSPring-8利用」として、2020年9月18日(金)にオンラインで開催をすることとなりました。初めてのオンライン開催で、関係者の方々にはその準備に多大なるご尽力をいただいているところです。コロナで教育研究活動が大きく制限を受ける中で、ネガティブなことばかりではありません。大学では、講義はほぼ全てオンラインとなっています。これまでですと、積極的な学生は前列に、そうでもない学生は後ろの方に座って時々下を向いています。一方、ZOOMなどで講義を行うと、一つの画面に学生が最前列に並んでいるわけです。私は新入生の一般教養の講義を第2ターム(6月開始)からオンラインで行っておりますが、これまでお互いに対面する機会もほぼなかった学生同士、大学に入ったという意識も薄かったのだと思います。緊張した面持ちで臨んでいた学生の1人から、「先生、自己紹介をさせていただけませんか?」と申し出があり、気持ちを察した私は同意しました。すると、どこか繋がった気持ちが芽生えたのか、多くの学生が発言・議論しながら楽しく講義を進めることができています。このようにオンライン講義のメリットに気付かされます。おそらく、SPring-8でのユーザー実験もこれまで気付いていなかったメリットが潜んでいて、ユーザーの方々の中にはもうすでにお気付きの方もいらっしゃるのではと想像いたします。会員の皆様には、ご参加の上、積極的に多様な意見をいただきたく思います。
第5期研究会の発足と新規研究会参加のすすめ
評議委員会での承認の上、第5期32研究会が新たに発足いたしました。その中で4研究会が新規に立ち上がりました。これまで異分野融合を目的として、ナノデバイス科学グループ、実用グループが活動してきました。それぞれ2年間を2期の合計4年間の新分野創成利用課題が実行され、多くの成果が得られたようです。今年度をもって、新分野創成利用課題は終了いたします。その集大成として、ナノスピントロニクス研究会と固液界面研究会がこの度新しく誕生いたしました。また、非破壊解析研究会、X線発光・非弾性X線散乱スペクトロスコピー研究会も新規にスタートすることになりました。これらの研究会には多くのユーザーの方々にご参加いただきたく思います。さて、分野融合については、これまでの新分野創成利用課題から新分野開拓利用課題と名称変更をし、新たに課題の募集が行われています。一方で、サイエンスのブレークスルーは、分野融合などの境界領域で生まれることが多く、SPRUC会員の皆様とも意見交換をし、進めていきたいと思います。
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