Volume 24, No.3 Page 249
理事長室から -理事長に就任して-
Message from President – Greetings from President of JASRI –
2019年6月18日付で、土肥義治前理事長からバトンを引き継ぎ、JASRI理事長に就任しました。SPring-8が1997年に稼働を開始して以来、私はユーザーとしてSPring-8を利用して研究活動を行ってきました。今後は立場が変わりますが、ユーザーを支援し、良き研究課題を選定するというJASRIに与えられたミッションを通して、SPring-8/SACLAにおける研究活動の発展に尽力したいと考えています。
私のこれまでのSPring-8との関わりを振り返ってみました。2011年にはSPring-8利用者懇談会の会長、2012~2013年にはSPring-8ユーザー協同体(SPRUC)の初代会長を務めました。その間、ユーザーコミュニティが、コミュニティ内における情報共有を密にすること、対JASRI/理研との関係において情報共有を密にして緊張ある協力関係を築くこと、それを通してSPring-8における研究推進に資すること、を意識して、ユーザーの立場からSPring-8に関わりました。2015、2016、2017年には、JASRI科学技術助言委員会の委員長を務め、ユーザーというよりは第三者の立場で、JASRIの運営や体制に対して助言を行う機会を与えられました。2018年には文科省の量子ビーム利用推進小委員会の主査として、同じく第三者の立場で、5年毎に行われるSPring-8/SACLAの中間評価に携わりました。また、SPring-8選定委員会の委員を6年間、SACLA選定委員会の委員を8年間務めました。
職歴に関して、私は14年間、Photon Factoryの研究スタッフを勤め、その後、東京大学・新領域において21年間、教員を勤めました。大学においては、研究、教育、運営という3つの事柄をバランス良く遂行することが求められ、それは挑戦的な課題でした。それと同じく、放射光施設の研究スタッフに求められるユーザー支援、共同研究、独自の研究開発の3つの事柄をバランス良く遂行することは挑戦的な課題で、そのことをPhoton Factory研究スタッフとして身をもって実感しました。今後は、これらの経験を最大限に活かして、JASRIの運営に取り組み、世界のトップランナーであるSPring-8/SACLAにおける研究の更なる推進に尽力したいと思います。
差し当たり、以下のことに注力したいと考えています。
1. JASRIの研究スタッフが、SPring-8/SACLAでの研究成果創出に向けて、高いモチベーションと誇りを持って、ユーザー支援、共同研究、各自の研究開発を推進できるための環境作り。
2. JASRI、SPRUC、RIKENの三者(JSR)間の情報共有とSPring-8アップグレードに向けた更なる議論の活発化。
3. 建設が決まった軟X線向け高輝度3 GeV放射光施設を始めとする他の放射光施設との緊張ある協力関係の構築。
地球上に現れた多くの生物種の中で、取るに足らない種であったホモサピエンスが何故このように地球上で繁栄しているのか?言語を習得し、その結果として、お互いの協力関係を築くことができたことが大きな要因であったと言われています。協力関係を構築できる能力、すなわち、collaborationできる能力こそ、放射光科学に限らず科学技術の今後の発展、より良き社会・文化の構築にとって、最も重要な人類に与えられた能力だと考えます。ホモサピエンスに与えられたcollaborationできる能力を最大限に発揮できる運営に努めたいと考えています。皆様のご協力をよろしくお願いいたします。