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Volume 24, No.3 Pages 291 - 293

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

日本地球惑星科学連合2019年大会参加報告
Report on the Japan Geoscience Union Meeting 2019 (JpGU2019)

丹下 慶範 TANGE Yoshinori

(公財)高輝度光科学研究センター 放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室 Diffraction and Scattering Division, Center for Synchrotron Radiation Research, JASRI

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SPring-8

 

 2019年5月26日(日)から5月30日(木)の5日間にわたる日程で、千葉県の幕張メッセ国際会議場、国際展示場ホール8および東京ベイ幕張ホールを会場とし、『日本地球惑星科学連合2019年大会(Japan Geoscience Union Meeting 2019, JpGU2019)』が開催された[1][1] http://www.jpgu.org/meeting_2019/index.php。日本地球惑星科学連合大会は、例年30を越す国と地域からの海外参加者を含む約8000名の参加者が集う国内最大級の研究集会の一つで、口頭発表、ポスター発表ともに2000件を優に超す、計5000件程度の発表が行われている。セッションは、研究者以外の一般参加者も対象としたパブリックセッションから専門的なセッションまで、合わせて200以上が開催される。それぞれのセッションはおおむね数件~十数件の発表で構成されるが、2019年大会では、パブリックセッションが8、宇宙惑星科学が25、大気水圏科学が45、地球人間圏科学が33、固体地球科学が60、地球生命科学が8、教育・アウトリーチ関連が3、領域外・複数領域にまたがるものが50、さらに全分野に関するテーマを扱う特別なセッションであるユニオンセッションが8の合計240セッションが開催された。また分野毎にややばらつきがあるものの、セッション合計の4割近くに相当する88のセッションが、言語を英語とする国際セッションであった。国際セッションへの外国人研究者の参加数もとても多く、国内学会でありながら国際学会のような様相を呈していた。会場は先述したとおりだが、そのうちの幕張メッセ国際会議場と東京ベイ幕張ホールが口頭発表の会場として利用され、240ものセッションを5日間で開催することから、幕張メッセ国際会議場では17、東京ベイ幕張ホールでは10もの会議室で並行してセッションが開催されるという、大変規模の大きな会議であった。
 そのような大規模な連合大会において、今回筆者は岡山大学惑星物質研究所副所長でSPRUC地球惑星科学研究会の会長でもある芳野極教授と、現在BL04B1「高温高圧」大容量プレスビームラインでパートナーユーザー課題を代表として実施している、愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの河野義生准教授らと、コンビーナーとしてユニオンセッションを開催する機会に恵まれた。JpGU2019のセッション提案期間は昨年2018年の9月3日からの1ヶ月あまりであったが、その直前8月24~26日に開催されたSPring-8シンポジウムやSPRUC研究会のサテライト研究会の内外で行われていた議論を基礎とし、放射光を利用する地球惑星科学関連研究の将来の方向性を議論する場を設けることを目的として提案がなされた。我々の提案セッションは固体地球科学にやや関連が強いものではあったが、他の分野からも広く聴衆を求めたいという希望のもと、全分野が関係するユニオンセッションとしての開催を提案し、それが受理されたものである。
 今年度の大会ではユニオンは8セッションが開催され、それぞれタイトルは「JpGU-AGU-EGU Great Debate: Impact of research assessment and going forward」「地球惑星科学分野のダイバーシティ推進状況:国際的な視点から」「地球惑星科学における学術出版の将来」「地球惑星科学の進むべき道9:大型研究計画とマスタープラン2020」「100周年を迎えるIUGGへの日本の貢献」「連合の環境・災害への対応 ─予期せぬ地質災害の衝撃に備える─」「日本地球惑星科学連合の将来に向けた大会参加者からの意見と提言」といった、非常に幅広い視点からなるものであった。そのような中、我々が開催したセッションは「地球惑星科学における高速過程を捉える」というタイトルで、放射光を利用してこれまで観察できなかった高速現象を実験的に可視化する、ということを軸とし、地震の発生や火山の噴火、隕石や天体の衝突といった幅広い地球科学現象を扱う研究者を招待してセッションを構成した。プログラムは以下のとおりである[2][2] http://www.jpgu.org/meeting_2019/SessionList_jp/detail/U-04.html

 

「地球惑星科学における高速過程を捉える」
招待講演(12件)

・地球惑星科学における高速過程 研究組織の構築に向けて 芳野極(岡山大学)

・粉砕岩のフラクタル特性と岩石の動的粉砕 武藤潤(東北大学)

・滑りの不安定化における普遍的加速過程 波多野恭弘(大阪大学)

・Semi-brittle flow in dunite and harzburgite at upper mantle pressures 大内智博(愛媛大学)

・微視的構造解析から迫るマグマ破砕メカニズム:爆発的火山噴火の発生原因の解明へ向けて 奥村聡(東北大)

・火山噴出物の解析にもとづく噴火物理パラメータの推定 –噴火ダイナミクスの理解進展に向けて− 前野深(東北大)

・衝突蒸気雲内化学反応が結びつける小惑星リュウグウと地球初期進化 杉田精司(東京大学)

・Time-resolved synchrotron X-ray observations of mineral transformations under static pressures: applications to non-equilibrium behaviors in shocked meteorites 久保友明(九州大学)

・Ultrafast pump-probe experiments for planetary materials using high-power lasers and XFEL 尾崎典雅(大阪大学)

・X線自由電子レーザーで捉える動的過程 片山哲夫(JASRI)

・放射光X線を用いた高速度計測 上杉健太朗(JASRI)

・大容量プレスを活用した動的地球科学研究の開拓:特に液体の高圧放射光X線実験について 河野義生(愛媛大学)

ポスター発表(2件)

・X線吸収分光法を利用したSPring-8における時間分解計測の現状 新田清文(JASRI)

・Ultrafast time-resolved XFEL diffraction study on shock-compressed corundum 丹下慶範(JASRI)

 

 発表は実験的な研究、天然の試料や現象を取り扱うもの、放射光を用いた先端計測手法の紹介が織り交ぜられ、それまで面識のなかった講演者間でも刺激的な議論が繰り広げられた(写真1)。セッション終了後のオープンディスカッションや懇親会では、今回のセッションの講演内容を軸とした新たな研究分野の共創について活発な議論が行われ、今後の研究活動の進展に大きな期待が感じられた。特に懇親会で印象的だったのは、ほぼ一気圧での岩石や液体の破壊、大容量プレスを用いた数万気圧~数十万気圧における岩石の粘弾性変形、マイクロ地震の発生や断層形成、一千万気圧にわたるまでのレーザー誘起衝撃圧縮など、それぞれ異なる手法を用い、大きく範囲の異なる温度圧力場で異なる対象を研究している研究者達が、嬉々としてお互いの研究内容について議論し合い情報交換している姿であった。今回の焦点は地球惑星科学で研究対象は主に岩石や鉱物などの脆性材料であったが、一般にはあまり馴染みのない液体(岩石が溶融したマグマの液相部)の破壊も含まれていた。SPring-8では上記物質はもちろんのこと、今回のセッションには含まれなかった金属材料や高分子化合物についても、破壊をはじめとした動的なその場観察が行われている。将来的には本セッションを起点として創出される研究分野を核として、あらゆる物質の破壊をさまざまなスケールで網羅するような学術分野の展開が期待される。SPring-8/SACLAはその中で欠かすことのできない重要な役割を果たすであろう。

 

写真1 セッション中の様子。

 

 

 今回筆者はポスターでの発表を行ったが、ポスター会場は国際展示場ホールで、その広大さは写真をご覧いただくのが一番であろう(写真2)。掲載ポスターの数や人の多さもさることながら、それぞれ趣向が凝らされた、熱の入ったブース展示が印象的であった。一般展示、書籍や関連商品の販売、パネル展示、パンフレットデスクを合わせると、その数は120を越え[3][3] http://www.jpgu.org/meeting_2019/exhibition.php、国内で行われている地球惑星科学関連研究の大枠や現状は展示類から十分把握できるほどに感じられた。展示は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や海洋研究開発機構(JAMSTEC)といった研究所や、大学・大学院の専攻や付置研、新学術領域研究などのプロジェクト研究、関連計測機器を取り扱う企業や学協会など様々であったが、今回、JASRIとして初めて利用推進部普及情報課よりブースを出展した。直接的にすぐさま多くの新規ユーザーが得られるわけではないであろうが、数多くの研究者やその卵の皆さんの目につく場で展示等の普及啓発活動を行い、放射光が限られた研究者だけが使える特殊なプローブでなはく、JASRIはそれを広く有効活用してもらうために存在しているのだと表現することには、非常に大きな意義があると思われる。

 

写真2 ポスター発表、ブース展示会場の様子。手前側が一般展示ブースで右手奥がポスター発表会場。

 

 

 普及情報課にブース出展の話を持ちかけたのは、SPring-8ユーザーである知人との会話の中で、「自分のいる分野にはSPring-8を使っている研究者はほとんどいない。JpGUでブースでも出して宣伝したらいいのに」という言葉を聞いたのがきっかけであった。一方で『SPring-8 Research Frontiers』には「Earth & Planetary Science」というセクションが独立して設けられている[4][4] http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/publications/research_frontiers/html/rf17ことから利用者数が多いようにも感じられ、身近にいるユーザーからは、「SPring-8はもうみんな知っているからブースなんて出さなくてもいいのではないか」というお言葉もいただいた。しかしながら、それはごく限られた範囲での印象でしかない。JpGU2019の講演要旨を“synchrotron”で検索してみるとその事実は明らかだ(JpGUでは英語要旨が必須)。全5000件にものぼる発表のうち、放射光を利用した研究は50数件しかなく、そのうちの41件がSPring-8/SACLAで実施されたものであった。内訳は、半数を越える25件が固体地球科学・極限環境科学研究のもので、イメージングが10件ほど、分光解析はわずか3件であった(我々のセッションを含む)。分光解析に関しては国内ではごく限られたグループにしか利用されておらず、ポテンシャルユーザーはまだまだ多くいるのではないかという印象を持った。今大会で再会した友人知人を呼び込むなど、身近なところから草の根普及活動を進めたい。
 筆者が今回JpGUへ参加したのは、実は8年ぶりであった。その間に学会の規模がとてつもなく大きくなったことに戸惑いを感じたが、自身の発表や関連分野のセッション聴講を通じ大きな刺激を受けた。ここで受けた刺激を多方面に生かしていきたい。来年はアメリカ地球物理学連合(AGU)との共催で、さらに規模が大きくなるそうである。引き続き研究発表や情報収集、普及啓発の場として活用していきたい。

 

 

 

参考文献
[1] http://www.jpgu.org/meeting_2019/index.php
[2] http://www.jpgu.org/meeting_2019/SessionList_jp/detail/U-04.html
[3] http://www.jpgu.org/meeting_2019/exhibition.php
[4] http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/publications/research_frontiers/html/rf17

 

 

 

丹下 慶範 TANGE Yoshinori
(公財)高輝度光科学研究センター
放射光利用研究基盤センター 回折・散乱推進室
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-0802 ext 3773
e-mail : yoshinori.tange@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794