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Volume 24, No.2 Pages 137 - 138

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

SPring-8利用研究課題審査委員会を終えて
Report on the PRC (Proposal Review Committee) of SPring-8

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki

SPring-8利用研究課題審査委員会 委員長/東京大学 大学院新領域創成科学研究科 Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo

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SPring-8

 

1. はじめに
 平成29年(2017年)4月~31年(2019年)3月の2年間、SPring-8利用研究課題審査委員会(以後、本委員会)の委員長を務め、2017B、2018A、2018B、2019Aの4期の課題選定を担当しました。以下に、この2年間を振り返り、感想を簡単に述べたいと思います。

 

 

2. 本委員会での審査に関して
2-1. 審査方法に関して
 SPring-8の供用が開始されて20年間が経過し、利用研究課題の審査方法はほぼ確立しており、総じて順調に審査が行われていると感じます。レフェリー審査、分科会審査、本委員会審査の3段階で審査が行われています。レフェリー審査は課題あたり4名。分科会は、生命科学3分科、散乱回折6分科、XAFS・蛍光分析分科、分光2分科、産業利用分科、重点課題分科、長期利用分科から構成されています。本委員会は各分科の主査および施設側委員から構成されていて、各分科で議論された内容に関する情報を共有すると共に、最終的なビームタイム配分案を決定します。分科とビームラインは一対一に対応していないので、ビームライン毎に責任分科をアサインして、その分科が当該ビームラインに関わる他の分科での評価を含めてビームライン毎の案を纏め、その案をもとに本委員会で議論を行い、最終案として纏める作業を行っています。
 上記の3段階審査で最も重要な位置を占めるのが第1段階のレフェリー審査だと思います。今後、この第1段階のレフェリー審査におけるレフェリーに対する設問設定の記述において、多少、改善の余地があるのではないか、と感じましたので、少し述べたいと思います。レフェリーへの設問は、1)科学技術的妥当性(絶対評価)、2)SPring-8の必要性(絶対評価)、3)総合評価(相対評価)の3項目です。
 1)「科学技術的妥当性」は、所謂、研究価値に対する評価になりますが、その評価軸には、科学技術的価値に加えて、学術的価値、社会的価値等の軸があるので、どの評価軸でレフェリーが採点を行ったのかが、分科会委員に適切に伝わる設問設定が望ましいと思います。
 2)「SPring-8の必要性」は、長時間測定が必須であるphoton hungryな視点なのか、high-throughputの視点なのか、それとも、光特性(パルス性、偏光性、エネルギー領域)の視点なのかを区分してレフェリーが評価するような設問設定をすることにより、レフェリーから分科会委員へのメッセージ性がより明確になると思います。特に、レフェリーの点数がばらついた場合や、コメント無しで評価点を記入するレフェリーの評価に対して、分科会での議論がより適切に行われるようになるのでは、と思います。
 SPring-8の利用が多様化する中で、先端計測が必要な研究と裾野の広い汎用的な測定が必要な研究のバランス、長時間測定が必要な研究とhigh-throughputな測定が必要な研究のバランス、基礎研究と応用研究のバランス等々、SPring-8の研究成果を最大化する上で、レフェリー審査と分科会審査の間でのより緊密な情報伝達の工夫の余地があると感じます。具体的な改善案の検討が行われることを期待します。

 

2-2. 重点課題に関して
 2019Aから2020Bまでの2年間の予定で、領域指定型重点課題である「先進技術活用による産業応用課題」が始まりました。この課題の主旨は、産業応用を志向するユーザーに対して、利用経験がない測定手法を新たに提供し、先進技術の利活用による高度な課題解決に資することです。これにより、異なる複数の測定手法を駆使した産業応用研究が活性化されることを期待します。

 

 

3. おわりに
 最近の5年間において、各期あたりの課題申請数は約800課題とほぼ一定の傾向にありますが、内訳を見ると、国内の大学からの課題が減少傾向(約10%減)にあり、海外からの課題が増加傾向にあります。国内の大学からの課題の減少傾向の原因がどこにあるのか、今後検討が必要だと思います。
 SPring-8の課題選定作業は、SPring-8からの研究成果を最大化する上で、重要な役割を担っていて、本委員会の役割は非常に大きいと感じています。科学ジャーナルの学術レベルは、レフェリーのレベルと強い相関があると云われています。同様に、課題選定作業にあたるレフェリーを含めた分科会、及び本委員会のレベルが、SPring-8から創出される研究成果のレベルと相関があると思われます。
 レフェリーを始めとする分科会、及び本委員会の委員の皆様のこれまでのご尽力に感謝すると共に、引き続きのご協力を心からよろしくお願い申し上げます。

 

 

 

雨宮 慶幸 AMEMIYA Yoshiyuki
東京大学 大学院新領域創成科学研究科
〒277-8561 千葉県柏市柏の葉5-1-5
TEL : 04-7136-3750
e-mail : amemiya@k.u-tokyo.ac.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794