ページトップへ戻る

Volume 23, No.4 Pages 391 - 393

3. SPring-8/SACLA通信/SPring-8/SACLA COMMUNICATIONS

2015B期 採択「新分野創成利用」における研究グループの事後評価について
Post-Project Review of Research Group for Epoch-Making Initiatives Projects Starting in 2015B

(公財)高輝度光科学研究センター 利用推進部 User Administration Division, JASRI

pdfDownload PDF (318 KB)
SPring-8

 

 「新分野創成利用」は、SPring-8の利用研究成果創出を質的・量的に飛躍させるために、既存の研究分野の枠を超えた複合・融合領域等における未踏分野の開拓・創成およびそれに伴う利用の裾野を拡大することを目的として、2015B期より運用しています。採択された研究グループは、代表責任者の裁量により有効期間(2年間)内に各分担責任者が複数ビームラインで「新分野創成利用課題」を実施することも可能となり、またビームタイムも認められた範囲内で期ごとに任意に配分(但し審査あり)することができます。
 「新分野創成利用」における研究グループの事後評価は、新分野創成利用審査委員会において、あらかじめ提出された新分野創成利用における研究グループ終了報告書に基づいた代表責任者による発表と質疑応答により行われます。事後評価の着目点は、研究グループとしての、1)目標達成度、2)研究成果(①科学技術的価値、新しい研究領域・手法の開拓、産業基盤技術の向上、②科学技術的波及効果、③情報発信)、3)「新分野創成利用」の趣旨との合致性(①新分野が創生され今後もその分野の発展が期待できるか、②実施にあたってマネージメントは妥当であったか)です。今回は、2015B期に採択された研究グループ(有効期間:2015B~2017A期)について、事後評価(2018年6月21日開催)を行いました。
 以下に新分野創成利用審査委員会がとりまとめた評価結果等を示します。研究内容については本誌の「最近の研究から」に「新分野創成利用」研究グループによる紹介記事を掲載しています。

 

プロジェクト名 ナノスケール実スピンデバイス開発に向けた新しい放射光利用
代表責任者(所属) 大野 英男(東北大学)
分担責任者(所属) 壬生 攻(名古屋工業大学)
千葉 大地(東京大学)
課題番号 2015B0901ほか
ビームライン BL08W、BL09XU、BL13XU、BL17SU、BL25SU、BL39XU、BL47XU
利用期間/配分総シフト 2015B~2017A/339シフト
(BL08W:60シフト、BL09XU:36シフト、BL13XU:60シフト、BL17SU:18シフト、BL25SU:72シフト、BL39XU:75シフト、BL47XU:18シフト)

 

[評価結果]

1)目標達成度

スピントロニクスを利用した実デバイスの開発の進展のために、異なる研究グループによる多様な放射光利用成果の情報交換を通じて、スピントロニクスの諸現象を包括的に解析するという当初の目標は一応達成された。

2)研究成果

①科学技術的価値、新しい研究領域・手法の開拓、産業基盤技術の向上
計測手法には新規性はないが、放射光利用の諸手法を体系化した点が評価出来る。
産業基盤技術としては、実デバイスを意識した「構造と機能の可視化」の取り組みが挙げられるが、今後の課題であろう。

②科学技術的波及効果
核共鳴散乱、コンプトン散乱などを用いて反強磁性体の磁気異方性の評価が行われたことは特筆すべき成果で、今後スキルミオンなどトポロジカル磁気現象への適用も期待される。また、スピン軌道トルク(SOT)の研究成果も注目される。また、電界印加によるスピン磁化反転の微視的解明の成果は、今後マルチフェロイック材料への波及が期待される。

③情報発信
グループ内部の情報共有は適切に行われたが、論文以外の方法での外部への情報発信は、もう少し積極的にやっても良いのではないか。

3)「新分野創成利用」の趣旨との合致性

①新分野が創生され、今後の発展が期待できるか
異なるグループ間による様々な放射光利用を体系的、包括的に行ったところは、「新しい利用」として評価されるが、異なる測定を組みあわせたことによるシナジー効果は、現段階では明確には見られておらず、本プロジェクトの継続提案である小野グループに期待したい。

②実施に当たってのマネージメント
新規課題に向け、途中段階でチームを拡大再編成するなど積極的なマネージメントが行われたと判断する。また、研究会開催などによるチーム間の情報共有を図る取り組みが行われた点も評価されるが、異なる計測手段の組み合わせによるシナジー効果をめざす積極的なアプローチは、今後の課題であろう。

総合評価
 本プロジェクトを通じて、広範なスピントロニクスの分野の研究者を巻き込み、様々な放射光計測を積極的に適用し包括的かつ体系的に現象の解明を行うとともに、放射光計測を通じて電圧誘起磁化反転、スピン軌道トルク、反強磁性体磁気異方性制御などについて多くの新しい知見を蓄積した点、高く評価する。異なる測定手段の組み合わせによるシナジー効果および実デバイスへの適用は道半ばであり、継続提案である小野グループへ、適切な引き継ぎが行われることを強く期待する。

 

[成果リスト]
(査読付き論文)

  [1] SPring-8 publication ID = 31926
S. Li et al.: "Large Enhancement of Bulk Spin Polarization by Suppressing CoMn Anti-Sites in Co2Mn(Ge0.75Ga0.25) Heusler Alloy Thin Film" Applied Physics Letters 108 (2016) 122404.

  [2] SPring-8 publication ID = 32019
M. Yamazoe et al.: "Spin/Orbital and Magnetic Quantum Number Selective Magnetization Measurements for CoFeB/MgO Multilayer Films" Journal of Physics: Condensed Matter 28 (2016) 436001.

  [3] SPring-8 publication ID = 33235
T. Kojima et al.: "Growth of L10-FeNi Thin Films on Cu(001) Single Crystal Substrates using Oxygen and Gold Surfactants" Thin Solid Films 603 (2016) 348-352.

  [4] SPring-8 publication ID = 33354
T. Koyama et al.: "Magnetization Switching by Spin-Orbit Torque in Pt with Proximity-Induced Magnetic Moment" Journal of Applied Physics 121 (2017) 123903.

  [5] SPring-8 publication ID = 34512
K. Kumar et al.: "Temperature Dependent Magnetic Compton Profiles and First-Principles Strategies of Quaternary Half-Heusler Alloy Co1-xCuxMnSb(0 ≤ x ≤ 0.8)" Journal of Physics: Condensed Matter 29 (2017) 425805.

  [6] SPring-8 publication ID = 34576
Y. Hibino et al.: "Enhancement of the Spin-Orbit Torque in a Pt/Co System with a Naturally Oxidized Co Layer" Applied Physics Letters 111 (2017) 132404.

  [7] SPring-8 publication ID = 34772
N. Kikuchi et al.: "Time- and Spatially-Resolved Hard X-ray MCD Measurement on a Co/Pt Multilayer Dot Excited by Pulsed RF Field" IEEE Transactions on Magnetics 54 (2018) 6100106.

  [8] SPring-8 publication ID = 35172
K. Mibu et al.: "Thickness Dependence of Morin Transition Temperature in Iridium-Doped Hematite Layers Studied through Nuclear Resonant Scattering" Hyperfine Interactions 238 (2017) 92.

  [9] SPring-8 publication ID = 35465
M. Suzuki et al.: "Three-Dimensional Visualization of Magnetic Domain Structure with Strong Uniaxial Anisotropy via Scanning Hard X-ray Microtomography" Applied Physics Express 11 (2018) 036601.

[10] SPring-8 publication ID = 35775
K. Takanashi et al.: "Fabrication and Characterization of L10-Ordered FeNi Thin Films" Journal of Physics D: Applied Physics 50 (2017) 483002.

[11] SPring-8 publication ID = 35977
K. Yamada et al.: "Microscopic Investigation into the Electric Field Effect on Proximity-Induced Magnetism in Pt" Physical Review Letters 120 (2018) 157203.

[12] SPring-8 publication ID = 35993
S. Goto et al.: "Synthesis of Single-Phase L10-FeNi Magnet Powder by Nitrogen Insertion and Topotactic Extraction" Scientific Reports 7 (2017) 13216.

[13] SPring-8 publication ID = 35994
T. Tashiro et al.: "Fabrication of L10-FeNi Phase by Sputtering with Rapid Thermal Annealing" Journal of Alloys and Compounds 750 (2018) 164-170.

[14] SPring-8 publication ID = 36278
S. Li et al.: "Enhancement of current-perpendicular-to-plane giant magnetoresistive outputs by improving B2-order in polycrystalline Co2(Mn0.6Fe0.4)Ge Heusler alloy films with the insertion of amorphous CoFeBTa underlayer" Acta Materialia 142 (2018) 49-57.

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794