Volume 23, No.4 Pages 372 - 375
2. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
第2回SPring-8秋の学校を終えて
The 2nd SPring-8 Autumn School
SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)利用幹事/(国)量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 Quantum Beam Science Research Directorate, National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology
秋の学校概要
第2回SPring-8秋の学校が、9月17日(月)~9月20日(木)の3泊4日の日程で開催されました。SPring-8ユーザー協同体(SPRUC)と高輝度光科学研究センター(JASRI)が主催し、大学や関係諸機関の協力のもとに行われました。校長はSPRUC会長の関西学院大学教授水木純一郎先生にご就任いただき、事務局はJASRI利用推進部が担当いたしました。
SPRUCが主催として加わる「SPring-8秋の学校」は、SPring-8ユーザーの発掘、ひいては次世代の放射光科学に貢献する人材の発掘を目指しています。放射線業務従事者登録や学年、指定校推薦などの参加資格の制限はなく、卒業研究や大学院進学を控えた方々が進路を考える機会、また、これから放射光の利用を考えている大学院生や企業研究者の方々へ放射光を知っていただく機会、となることを目指しました。
今回、18校16社(国研、大学含む)から45名の参加を得ました。内訳は次の通りです。学生25名(学部2年生1名、学部3年生3名、学部4年生11名、高専専攻科2年1名、博士課程前期1年4名、博士課程前期2年4名、博士課程後期2年1名)、社会人20名(企業からの参加17名、大学関係者2名、国研関係者1名)。男性30名、女性15名。33名がSPring-8/SACLAの今年度の放射線業務従事者登録“なし”であり、そのほとんどが過去においてもユーザー登録がなされていない方々でした。
図1 講義風景
カリキュラムについて
カリキュラムは、初日に3講座、2日目に4講座の基礎的な講義を行い、その後の2日間に3テーマのグループ講習が行われました。参加者は以下の「グループ講習について」で示す12テーマから希望する3テーマを選択し、受講しました。初日には、SACLAとSPring-8実験ホールの見学、最終日にはSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学が行われました。参加者のバックグラウンドは多様であり、参加者間の異分野交流を深めるために、懇親会も行われました。今年のスケジュールは以下の通りでした。
第2回SPring-8秋の学校 日程表
基礎講義について
基礎講義内容と担当者(敬称略)は以下の通りです。工夫が凝らされ大変わかりやすく、参加者にとって満足のゆく講義であったと思われます。
基礎講義1. 放射光発生の基礎
金城良太(理化学研究所)
基礎講義2. ビームライン
~光源と実験ステーションを繋ぐもの~
山崎裕史(高輝度光科学研究センター)
基礎講義3. X線検出器の基礎
雨宮慶幸(東京大学)
基礎講義4. X線自由電子レーザー入門
井上伊知郎(理化学研究所)
基礎講義5. X線回折入門
熊坂崇(高輝度光科学研究センター)
基礎講義6. XAFSの基礎
新田清文(高輝度光科学研究センター)
基礎講義7. X線イメージング
矢代航(東北大学)
グループ講習について
グループ講習のテーマと担当者(敬称略)は以下の通りであり、主にはSPRUC研究会よりご提案いただきました。SPring-8施設の停止期間中ではありましたが、現地にて実際の装置やデータを手に取って進めることで効果的な講習になったと思われます。講習によってはPCの持込み、ソフトウェアの事前インストールなどを推奨し、効果をあげているようでした。
1. 単結晶構造解析
橋爪大輔(理化学研究所CEMS)
杉本邦久(高輝度光科学研究センター)
星野学(理化学研究所)
2. 粉末X線回折によるその場観測の実際
笠井秀隆(筑波大学)
石橋広記(大阪府立大学)
3. タンパク質結晶解析
水島恒裕(兵庫県立大学)
田中良和(東北大学)
4. 小角X線散乱
増永啓康(高輝度光科学研究センター)
5. 応力・ひずみ解析
秋庭義明(横浜国立大学)
冨永亜希(日本原子力研究開発機構)
城鮎美(量子科学技術研究開発機構)
6. 小角X線散乱による高分子材料のin-situ構造形成解析
坂本直紀(旭化成株式会社)
7. X線吸収分光法
朝倉博行(京都大学)
水牧仁一朗(高輝度光科学研究センター)
新田清文(高輝度光科学研究センター)
8. 軟X線吸収分光法
鶴田一樹(高輝度光科学研究センター)
9. 赤外分光分析
池本夕佳(高輝度光科学研究センター)
10. 光電子分光(HAXPES)
藤原秀紀(大阪大学)
11. 高圧力の発生と高圧下の物質科学
石松直樹(広島大学)
町田晃彦(量子科学技術研究開発機構)
12. X線イメージング
矢代航(東北大学)
SPring-8秋の学校は今回が2回目で、先の概要で申し上げた開催趣旨以外は、開催ごとに見直しており、現在進行形で充実させております。今年は、昨年好評であった企業からの参加者を増やすことを試み、企業関係者(ソフトマター系、ハードマター系からそれぞれ)に実行委員会に入っていただき、テーマ設定や情報宣伝の助言をいただきました。この取り組みが実を結び、社会人の参加者が昨年の7社10名から16社20名に増加しました。次回以降、アンケートの分析結果をもとにSPring-8秋の学校をどのように発展させていくかはSPRUC全体の課題です。また、SPring-8秋の学校の企画がSPRUC会員に浸透し、回数を重ねていけば、初心に立ち返ることも必要となるでしょう。SPRUCの皆様のご意見を賜ることができれば幸いです。
図2 グループ講習風景
謝辞
工夫を凝らして分かりやすく丁寧に講義をしてくださった講師の先生方、2日間にわたる講習を熱心に指導してくださったグループ講習担当の先生方、分かりやすい説明で参加者の興味を引きつけてくださった見学引率者の皆様、大人数の参加者にSPring-8蓄積リング加速器収納部の見学を可能にしてくださったJASRI光源基盤部門の方々に感謝申し上げます。また、事務局として関係各所との調整、ウェブ作成から懇親会・バーベキューのお世話までしていただいたJASRI事務局担当者の方々、講師の選定、テーマの決定にご協力いただいたSPRUC研究会の方々に感謝申し上げます。
(国)量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門
〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
TEL : 0791-58-1045
e-mail : ohwada.kenji@qst.go.jp
第2回SPring-8秋の学校に参加して
奈良工業高等専門学校
専攻科 電気電子システムコース
竹内 誠
私は奈良工業高等専門学校で電気電子工学を専攻している専攻科2年生です。普段は電気めっき技術を応用した研究に取り組んでおりますが、SPring-8はこれまでに利用したことがありませんでした。そのため、今回の「第2回SPring-8秋の学校」は大学院進学後の研究活動に活かせるよう、放射光科学の基礎から応用に至るまでを学びたいという思いがあり、さらに他大学への研究室訪問の際にSPring-8に関する話をよく耳にしており、非常に興味があったことから参加を考えました。
秋の学校は4日間のカリキュラム構成となっており、前半2日は受講者全員で放射光発生の基礎などの基礎講義を受け、後半2日は割り当てられたメンバーとペアとなりグループ講習を受けました。さらに、2日目にはSPring-8実験ホール/SACLA、4日目にはSPring-8蓄積リング加速器収納部を見学させていただきました。基礎講義では、理論を数式で説明するのではなく、大学3年生が十分に理解できる水準に設定されており、すでに学校で学んだことのある内容は頭の整理になり、そこからの発展内容が頭に入りやすかったです。また、理論だけではなく例え話などにより、イメージしやすく説明してくださったので、聞き入ることができて非常に良かったです。また、グループ講習において私は「粉末X線回折によるその場観測の実際」、「単結晶構造解析」、「X線イメージング」を選択しました。粉末X線回折は研究で少し経験があったのですが、学校の測定機と比較して非常に短い時間で測定ができることに驚き、放射光の素晴らしさを実感しました。今回の秋の学校期間中は蓄積リングの停止期間で、実際に測定している場面を見ることができなかったので少し残念な気持ちもありましたが、今後夏の学校あるいは配属先の研究室でSPring-8を使用する際に、学んだことを活かして使用したいと思いました。施設見学では、多くのビームラインの実験設備や、通常では見ることができないSPring-8内部を拝見させていただきました。基礎講義でSPring-8による放射光発生の原理などの学習後だったので、すでに学んだ内容は頭の整理になり、アンジュレータや偏光電磁石など初めて学ぶSPring-8内の装置は興味深く見ることができました。
初日の懇親会や3日目の懇親会バーベキューでは交友関係を広げることができ、学生だけでなく先生方ともお話しすることができました。
今回の秋の学校で、私は放射光科学の基礎から応用まで広く知識を得ることができました。さらに、実習や懇親会では多くの先生方をはじめ、他大学の学生と交流する機会も豊富にあり、今後の研究生活のモチベーションアップに繋がったと思います。講師の先生方、実習担当の皆様ならびに実行委員会の皆様に厚く御礼申し上げます。
図3 懇親会風景
図4 記念写真