Volume 15, No.2 Pages 87- 88
3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT
平成20年度・21年度重点メディカルバイオ領域課題成果報告会開催報告
Report on the Presentation of Research Reports from 2008
SPring-8では、メディカルバイオ(医・生物学)領域の利用研究促進施策の一環として、平成18年度より「メディカルバイオ」を重点研究課題・領域型に指定し、重点支援を実施してきた。平成20年度からは、従来からの「重点メディカルバイオ・トライアルユース課題」に加え、新たに「重点拡張メディカルバイオ課題」を導入し、本領域における研究活動の進展を図った。
「重点メディカルバイオ・トライアルユース課題」は、放射光の医学・生物学への寄与を高め利用拡大を図ることを目的に、新規研究課題及び新規利用者を対象に実施した。
一方、「重点拡張メディカルバイオ課題」は、「病の克服と健康への貢献」をキーワードに「重要な疾患の原因解明と診断・治療法に関する研究」を行う課題を対象として実施した。また、これまで実施された重点メディカルバイオ・トライアルユース課題のうち、発展が期待される課題についても本課題において引き続き支援を行った。
今回の成果報告会では、平成20年度・21年度に実施した「重点メディカルバイオ・トライアルユース課題」及び「重点拡張メディカルバイオ課題」計72件のうち、特徴的な研究課題やユニークな研究課題である14件について成果の報告があった。
3月15日、医療産業都市構想を推進している神戸ポートアイランドの臨床研究情報センターで開催された成果報告会には、あいにくの小雨模様の中、約50名の方に参加頂いた。
報告会の前半は、梶谷文彦座長(川崎医療福祉大学副学長)の司会により平成20年度に実施した課題について、後半は八木直人座長(JASRI)の司会により平成21年度に実施した課題について、それぞれ利用者から研究成果の報告があった後、質疑応答があり、活発な議論が行われた。
今回の成果報告会では、平成20年度から「重点拡張メディカルバイオ課題」として、従来のイメージングに加え、回折・散乱等まで手法を広げたこともあり、より広い医学的課題に関する報告が行われた。利用者についても、大学等の研究機関だけでなく、食品会社や製薬会社、海外からの利用研究に関する報告など、幅広い分野からの報告があった。
また、位相コントラスト法による脳や水晶体のイメージング研究や、バイオプシー標本の回折実験など新たな利用事例の発表もあり、メディカル分野におけるSPring-8利用の新たな可能性を示すものであった。
なお、当日のプログラムについては、次のとおりである。
平成20年度重点メディカルバイオ領域課題成果報告
【重点メディカルバイオ・トライアルユース課題】
1 形態多様性理解のための脊椎動物およびその近縁種の3次元再構築
水谷 治央(東京大学)
2 Phase-contrast imaging of blood flow and lung
共同研究者:八木 直人(JASRI)
研究代表者:Andreas Fouras(Monash University, 豪州)
【重点拡張メディカルバイオ課題】
3 障害脳の神経回路再構築による治療法の開発 ナノ構造物と高磁場による神経機能再生、放射光による障害脳解析法の確立と病態解析 位相差CTのアルツハイマ病、パーキンソン病、脳卒中への応用
小野寺 宏(西多賀病院)
4 Investigating cardioprotective treatment efficacy for acute heart failure: adenosine and adrenomedullin
共同研究者:白井 幹康(国立循環器病センター)
研究代表者:James Pearson(Monash University, 豪州)
5 Tropomyosin mutations associated with muscle weakness and nemaline myopathy: Structure and Function of the thin filament studied by X-ray diffraction
共同研究者:岩本 裕之(JASRI)
研究代表者:Julien Ochala(Uppsala University, スウェーデン)
6 シンクロトロン放射光スリット状マイクロビームに対する細胞致死効果からの回復現象とがん抑制遺伝子p53が関与したバイスタンダー効果
鈴木 雅雄(放射線医学総合研究所)
7 新規治療薬および製剤材料の開発を目的とする有機3次元複合体のX線結晶構造解析
桝 飛雄真(徳島文理大学)
平成21年度重点メディカルバイオ領域課題成果報告
【重点メディカルバイオ・トライアルユース課題】
8 全身性器官としての働きを可能にする骨の3次元内部構造の解明
南郷 脩史(ラトックシステムエンジニアリング(株))
9 ゼブラフィッシュの脳および器官の立体構造と摂食運動の生体X線解析
八田 公平(兵庫県立大学)
【重点拡張メディカルバイオ課題】
10 ヒト皮膚角層細胞間脂質の熱特性と外部刺激に関する定量的解析
小幡 誉子(星薬科大学)
11 X線位相差CTによる水晶体タンパク濃度勾配の可視化法開発と眼科領域疾患の病態生理解明への応用
毛利 聡(川崎医科大学)
12 微量元素による組織傷害の病理学:遺伝性銅欠乏疾患症例から学んだ貴重なこと
松浦 晃洋(藤田保健衛生大学)
13 リン酸化オリゴ糖カルシウムとフッ素が歯エナメル質の結晶に及ぼす効果に関する研究
田中 智子(江崎グリコ(株))
14 高速4Din vivo-CTの開発
世良 俊博(理化学研究所)
※海外からの研究代表者については共同研究者が代理で発表を行った。