Volume 19, No.3 Page 306
6. 告知板/ANNOUNCEMENTS
平成25年度実施の蓄積リング棟熱源機器更新工事について
Construction of Replacing Heart Source Equipment at Storage Ring
蓄積リング棟の熱源機器(一般空調設備・装置冷却設備)は設置・運用を開始してから15年が経過しており、設置当時、最新鋭であった機器も技術の進歩により、COP(Coefficient Of Performance:成績係数)が低いものとなり、補修・交換部品の供給可能期間も明確でない状況となってきていました。また、昨今の燃料費高騰による電気料金、ガス料金の値上がりにより運転経費の圧迫ということも懸念されていました。
独立行政法人理化学研究所(以下「理研」)としては、これを看過できない状況として更新工事を計画していましたが、改修工事には多額の予算が必要であり、実施するためには国に特別な予算を認めてもらわなければなりません。
幸いな事に蓄積リング棟の主要な熱源機器全てを更新できるだけの予算を平成24年度の補正予算(15ヶ月予算)として認められることとなりましたが、与えられた予算と期間の中で、どのようなシステムにしたらCOPの高いものとできるか、また利用者の為にはどうしたら良いか、どのようにしたら短期間で工事を竣工できるか、これまで大枠で決まっていた方針の詳細検討を行うため、設計業者や公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)、スプリングエイトサービス(株)(SES)といった関係組織とも打合せを行い、設計内容を決定していきました。
エネルギー効率の向上、環境配慮面の向上、ランニングコストの低減、イニシャルコストの低減、また装置側に影響のある振動の低減といった事を念頭に、吸収式冷温水器を高効率のインバーターターボ式冷温水器に変更することを基軸として、熱交換器、冷却塔など関係機器全てを最新型に刷新することとし、また振動を発生する機器類全てに最新の除振機構を組み込むことで振動による装置側への影響も減らす設計としました。
これらの検討と同時並行的に契約手続きにかかる時間、設計積算、工事にかかる時間の検討を行い、予算の性質上15ヶ月しか認められない期間でこれだけの大規模工事を竣工させる為にはどうしたら良いか。理研は公的機関であるためその契約には透明性が求められており、基準額を超える契約は入札にしなければなりません。また設置機器の製作で一番大きい機器は6ヶ月の製作日数がかかるため、契約の為の入札期間、設計・積算期間、機器の製作期間、工事期間を考えると、どうしても夏の運転停止期間には間に合いません。本来ならば、もう少し余裕をもって実施できる予算だと良いのですが、この補正予算を逃すといつ予算が手当てされるか分からない状況では冬の運転停止期間に行わなければなりませんでした。
工事を請負った会社も「理研の為なら24時間フル操業でも完成させます。」と言ってくれていました。そんな関係者全員の協力で、例年よりも若干長い冬の停止期間とはなりましたが、予定していた更新工事全てをやり遂げることができました。
まだ、完成して2ヶ月程度ですので具体的な省エネ効果の検証はこれからですが、間違いなく省エネや環境配慮向上に貢献すると共に、これからも利用者の為の安定したビーム運転に役立ってくれるものと思っております。
最後になりますが、工事に関係したすべての方と貴重な工事期間をいただいた利用者皆様に心から感謝したいと思います、ありがとうございました。