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Volume 15, No.1 Page 1

ご挨拶
Message from Chairman

川上 哲郎 KAWAKAMI Tetsurou

(財)高輝度光科学研究センター 会長 Chairman of JASRI

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 平素は当財団の運営にあたり、種々ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 皆様方のお陰をもちまして、SPring-8は供用開始から12年を経過し、昨年6月5日には利用者数が延べ10万人に達しました。また昨年は、年間延べ約12,000人の利用者と約1,800件もの実験が記録されており、学術、産業のそれぞれの分野で多大な成果を上げることができました。特に産業利用の割合が全体の20%に達したとともに、専用ビームラインにおいても、昨年5月に「豊田ビームライン」が、11月には産学連携による高分子の新素材開発を中心とする「フロンティアソフトマター開発専用ビームライン産学連合」が稼働するなど、従来のサンビーム等に加えて新たな産業利用が具体化してまいりました。

 昨年、わが国の政治及び経済社会に大きな変化があったことは、ご高承のとおりでありますが、11月に行われました行政刷新会議の事業仕分けにおいては、SPring-8についても一旦は厳しい評価(1/3〜1/2程度の予算縮減)が出され、適切な運転経費の確保がなければ、十分な放射光を提供できなくなると危惧されると同時に、今後は関係各方面への説明責任を十分に果たす責務を痛感いたしました。

 その後、政府内で慎重な検討がなされた結果、当施設の果たす社会的な重要性に鑑み、従来と同程度の運転時間の確保が可能な状況になりました。この機会に、ご利用のユーザー様をはじめとする皆様方のご意見やご要望等を通じ、力強いご支援を賜りましたことに深く感謝し、御礼申し上げる次第であります。

 これからの進路につきましては、いかにわかりやすく成果を示すかを含め、種々課題も残っておりますが、産業の礎でもある科学技術の成果が社会に還元されるためには、長い年月にわたる研究者のたゆまない努力を要するものでもあります。これからもより多くの利用者にSPring-8を有効活用していただき、基礎的な分野での最先端の技術開発を通じてその成果を示すことで、科学技術振興の一翼を担いたいと存ずる次第であり、皆様方のご理解とさらなるご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。



Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794