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Volume 14, No.4 Page 247

理事長室から −さらなる情報発信を−

白川 哲久 SHIRAKAWA Tetsuhisa

(財)高輝度光科学研究センター 理事長 President of JASRI

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 JASRIの理事長に就任しておよそ4ヶ月が経ちました。

 

 この間、JASRIの関係者はもとより、利用研究者、産業界や行政の方々、海外からのお客様など多くの方とお会いし、各種の委員会やシンポジウム等に出席し、少しずつですがJASRIとSPring-8のおかれている立ち位置がより鮮明に理解できるようになりました。それは概ねポジティヴに受け止めうるものでありましたが、前回も書きましたように「多くの取り組むべき課題がある」ことも改めて強く認識したところです。同時に我々は、この間わが国ではかつて経験したことのない新たな状況、すなわち総選挙による政権交代という歴史的な転換点に遭遇しています。

 

 そのような中で、今回利用者情報の読者の方々に理事長としてまずお願いしなければと感じましたのが、副題の「さらなる情報発信を」ということであります。

 

 ご出席された方もいらっしゃると思いますが、今年はSPring-8シンポジウムとSPring-8産業利用報告会を「合同コンファレンス」として同時開催いたしました。大変な盛況で主催者としてもまずは満足のいく会合でしたが、開催日は9月3日で、まさに上述の政権交代につながる総選挙の直後でありました。ここで、この合同コンファレンスに来賓としてご出席いただきました、文部科学省研究振興局長の磯田様のご挨拶からその一部を引用させて頂くことをお許し願いたいと思います。磯田局長は、「政権交代に伴い、科学技術も含め従来の政策について国民の視点から改めて問われることになると思います。(中略)SPring-8のような大型研究施設は、その運営にあたり、多額の国費が必要とされるものであり、施設の意義や有用性について国民の理解を得るため、文部科学省としても説明責任を果たしていく所存でありますが、皆様におかれましても、今まで以上に、生み出した成果を広く社会に情報発信していかれることを期待しております。」と強調されました。

 

 私が今回申し上げたいことは、この磯田研究振興局長のお言葉にすべて凝縮されています。そして、これはこの時に限らず、理事長就任以降多くの方々から指摘を受けていることでもあるのです。利用研究者を含めSPring-8の関係者は、この施設が国民の税金によって建設され、維持・運営されていることを常に念頭においておかねばなりません。そして、その成果は、国民の視点で理解できるように説明されなければなりません。

 

 今後SPring-8を取り巻く状況はより厳しくなることが予想されます。利用研究者の方には、優れた成果をお出しいただくのはもちろんですが、その成果についての「さらなる情報発信を」切にお願いしたいと思います。

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794