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Volume 14, No.1 Pages 52 - 53

4. 告知板/ANNOUNCEMENTS

最近のSPring-8関係功績の受賞
SPring-8 Related Achievements

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 日本学術振興会賞は、独立行政法人日本学術振興会が、優れた研究を進めている若手研究者を見い出し、早い段階から顕彰してその研究意欲を高め、独創的、先駆的な研究を支援することにより、我が国の学術研究の水準を世界のトップレベルにおいて発展させることを目的に平成16年度に創設されたものである。

 受賞対象者は、人文・社会科学及び自然科学の全分野において、45歳未満で博士又は博士と同等以上の学術研究能力を有する者のうち、論文等の研究業績により学術上特に優れた成果をあげている研究者である。

 

受賞者紹介

廣瀬 敬 東京工業大学大学院 理工学研究科 教授

 

功績名:超高圧高温下における地球惑星内部物質の実験的研究

 

 地球内部は、中心部の金属コア、マグネシウム珪酸塩に富む岩石からなるマントル、表面を覆う薄い地殻に区分される。このうちマントルは、地震波の解析から上部マントルと下部マントルに大別され、またそれぞれは性質の異なる複数の層から成ることがわかっている。このうち、特に下部マントルの最下部域を構成する物質の詳細はこれまで長い間謎であった。

 廣瀬氏は、実験室でこの下部マントル最下部に相当する超高圧高温の状態を発生させる技術開発に成功し、そのような状態下では、下部マントル全域にわたって安定に存在出来ると一般に考えられていた珪酸塩ペロフスカイト相が、より高密度のポストペロフスカイト相に相転移することを発見した。これは、マントル最下部における地震波速度構造を説明し、またマントルとその内側のコアとのさまざまな相互作用を理解する上できわめて重要な成果となった。

 同氏は現在、地球のコア領域に相当する更なる超高圧高温実験を目指しており、その成果は、地球ばかりでなく、よりサイズが大きい惑星の内部構造の理解にも大きく寄与するものと期待されている。これらの功績が高く評価され、今回の受賞となった。

 

 

受賞者紹介

濡木 理 東京大学 医科学研究所 教授

 

功績名:遺伝暗号翻訳の動的機構の構造基盤

 

 濡木氏は、遺伝暗号の翻訳過程において働く酵素が、高い特異性と精度をもって化学反応を進行させるメカニズムを、構造生物学的に原子レベルで明らかにした。すなわち、X線結晶構造解析によって、アミノアシルtRNA合成酵素が翻訳過程でtRNAを正確に認識するためには、tRNAが正しい長さにプロセシングされたのち、特異的な化学修飾によって機能性RNAとして成熟する必要があること、そして、この成熟tRNAとアミノアシル化において働く酵素とがRNA-タンパク質複合体を構成しつつ作用することを明らかにした。同氏のこの研究は、化学反応の途中過程にある分子構造をスナップショットとして段階的に捉えることによって、静的な構造解析から動的な反応機構を追跡することが構造生物学的に重要であることを示したものといえる。

 同氏の研究業績は、生命現象に関与する酵素が誤りなく機能を遂行する作動原理を動的な観点から構造生物学的に解明しようとするものであり、本研究の更なる発展が期待される。これらの功績が高く評価され、今回の受賞となった。

 

 

 なお、授賞式は平成21年3月9日(月)に日本学士院にて開催される予定である。

(日本学術振興会ウェブサイトより一部転載)

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
Online ISSN 2187-4794