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Volume 14, No.1 Pages 49 - 51

3. 研究会等報告/WORKSHOP AND COMMITTEE REPORT

第1回SPring-8萌芽的研究アワード/ 萌芽的研究支援ワークショップ報告
The 1st Workshop on the SPring-8 Budding Researchers Support Program/Winners of Budding Researchers Award

高田 昌樹 TAKATA Masaki

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Research & Utilization Division, JASRI

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1. はじめに

 SPring-8では、将来の放射光科学研究の発展を担う若手人材の育成と萌芽的・独創的な放射光科学研究を創出することを目的として、大学院博士後期課程の学生を対象とした「萌芽的研究支援プログラム」を実施しています。同プログラムは、学生自らが実験責任者となり課題申請し、SPring-8を利用できる制度として平成17年度から開始され、これまでに約150課題が実施されるまでになりました。そこで、平成19年11月に「萌芽的研究支援評価委員会」(委員長 鈴木謙爾(財)特殊無機材料研究所 理事長)により、このプログラムの有効性について審議が行われ、その効果について高い評価が与えられ、今後も本プログラムを継続して実施することが提言されました。さらに、このプログラムを若手研究者育成のために有効活用するために、同プログラムにおける優秀な成果について、顕彰制度を導入することが提言されました。それを受けて、平成20年度から、同プログラム課題実施者で特に優秀な成果を上げた学生(当時)を表彰する「SPring-8萌芽的研究アワード」を新たに設置することになりました。この顕彰制度により、放射光の先端活用の開拓に独自に挑戦する機会を学生のうちから与え、将来の放射光科学を担う若手研究者の育成を促進することを目的としています。

 記念すべき第1回目となる今回は、10月29日に東京の日本科学未来館で「第1回SPring-8萌芽的研究支援ワークショップ〜SPring-8からはじめるサイエンス〜」として、約30名の参加者を得て開催されました。第1回は平成19年度のアワードの対象者である同プログラム課題実施者46名のうちから、6名のアワード候補者を選定し、公開の本ワークショップでの成果発表審査会により、アワードを決定しました。また、アワード候補者以外の学生ユーザーにもポスターセッションによる成果発表をしていただき、若手の研究交流を深める機会を設けました。

 

 

2. 会議内容

 当日は午後からの開会で、最初にSPring-8萌芽的研究アワード審査委員会委員長より、アワードの設置経緯と審査基準、及び本ワークショップの趣旨について説明致しました。続いて、6名の候補者の成果発表が行われました。今回のワークショップでは、人材育成という観点から、ディスカッションを重視するため、質疑応答の時間を通常のワークショップよりも十分に長く設定することとしました。今後の研究展開に関する助言も委員よりなされるなど、活発な質疑応答が行われました。審査会では、どの発表内容も、XAFSからX線回折、光電子分光、XMCD(磁気円二色性)測定まで多岐にわたった、SPring-8の放射光の特徴を活かした先端的かつ質の高いものであることが、委員全員から一様に述べられました。これは、本プログラム課題が、学生という身分に関係なく一般課題と同じ基準で課題選定されることの効果ではないかとの意見も述べられました。

 

 

3. アワード審査結果

 アワードは、最優秀賞1名、優秀賞1名にそれぞれ授与されることとされており、委員会では、審査基準として、

 ①研究テーマの新規性・独創性及び発展性

 ②SPring-8利用結果の当該研究テーマにおける有効性

 ③実施体制における研究実施者の主体性

という3項目を設定し、各発表者について審査が行われました。審査においては、6名全ての発表について、プレゼンテーション能力、成果内容ともに優劣付け難く、難しい審査となりましたが、最終的に次のとおり最優秀賞1名、優秀賞1名が決定されました。

 

 

第1回SPring-8萌芽的研究アワード 受賞者

 最優秀賞 山添 誠司 氏

(当時:京都大学大学院 現:龍谷大学)

「WL1, L3-edge XANESの解析:担持WO3種の構造解明」

 

 優 秀 賞  石井 あゆみ 氏

(当時:青山学院大学大学院 現:ソニー株式会社)

「LB膜法を用いたランタノイド新規発光材料の開発 -有機分子積層膜内におけるランタノイドの構造的解釈と偏光発光特性‐」

 

 

4. おわりに

 SPring-8萌芽的研究アワード及び同ワークショップは、今回初めての開催ではありましたが、発表内容のレベルは高く、発表者の学生の研究遂行における主体性が質疑応答からも確認され、本プログラムの効果が着実に現れてきていることがわかりました。しかし、研究の方向性についての学生の主体性を短い発表から判断することは容易ではなく、そのことを考慮した審査方針については、今後も検討を重ねていくこととしました。

 今後の課題として、審査委員からは、アワードの表彰式、受賞講演などをSPring-8シンポジウムの行事として組み込み、本プログラムのPRと学生の放射光活用研究に対するエンカレッジをより効果的に推進するべきであるとの提言がなされました。この提言については、来年度の実現にむけて協議を始めることとしました。これにより、応募が少なく、まだ十分に本制度が活用されていない、放射光技術に関する研究分野についても、活性化が図られることが期待されます。

 本アワード及びワークショップは今後、毎年継続して行われていくことになりました。本プログラムを通じて、放射光の先端活用を開拓し、その基盤を支える優秀な若い世代を育成するためにも、大学・大学院の教官の先生方には、指導する学生の萌芽的研究支援プログラムへの積極的な応募の奨励をお願い致します。

 

 

 

○アワード候補者課題一覧

1. WL1, L3-edge XANESの解析:担持WO3種の構造解明

山添 誠司 当時:京都大学大学院 工学研究科 現:龍谷大学

 

2. LB膜法を用いたランタノイド新規発光材料の開発 -有機分子積層膜内におけるランタノイドの構造的解釈と偏光発光特性-

石井 あゆみ 当時:青山学院大学大学院 理工学研究科 現:ソニー株式会社

 

3. 放射光を用いた時分割X線回折による多結晶BiFeO3薄膜の電界誘起歪測定

中嶋 誠二 大阪大学大学院 基礎工学研究科

 

4. 超分子複合体の結晶で最良のX線回折データを得る方法の開発 -チトクロム酸化酵素の回折実験を例にして-

菅 倫寛 大阪大学 蛋白質研究所

 

5. 共鳴X線磁気反射率法によるCoFe/MnIr二層膜におけるIrに誘起されたスピン分極と磁化過程

児玉 謙司 当時:奈良先端科学技術大学院大学 現:財団法人高輝度光科学研究センター

 

6. 超伝導ダイヤモンドのドーパント状態最適化方法の模索

加藤 有香子 当時:奈良先端科学技術大学院大学 現:財団法人高輝度光科学研究センター

 

 

○ポスター発表一覧

1. 硬X線光電子分光法によるHfO2/Si構造の評価:表面金属膜による電荷捕獲の抑制

阿部 泰宏 武蔵工業大学大学院 工学研究科

 

2. ヨウ素・臭素‐シクロデキストリン包接体の水溶液中でのXAFS解析

金子 拓真 千葉大学大学院 融合科学研究科

 

3. 無機化合物における結晶学的・磁気的カイラリティの検証

高阪 勇輔 青山学院大学大学院 理工学研究科

 

4. 磁性半導体(Ti1-xCox)O2のXAFS

李  英杰 鳥取大学大学院 工学研究科

 

5. 逆モンテカルロ法を利用した超イオン導電体のイオン伝導経路の解明

尾原 幸治 九州大学大学院 理学部

 

 

○SPring-8萌芽的研究アワード審査委員会委員一覧

 委員長 高田 昌樹  財団法人高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門長

 委 員 栗原 和枝  東北大学 多元物質科学研究所 教授

 委 員 坂井 信彦  兵庫県立大学大学院 物質理学研究科 名誉教授

 委 員 鈴木 謙爾  財団法人特殊無機材料研究所 理事長

 委 員 鈴木 昌世  財団法人高輝度光科学研究センター 研究調整部長

 委 員 八木 直人  財団法人高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門副部門長

 委 員 渡辺 義夫  財団法人高輝度光科学研究センター 産業利用推進室長

 

 

 

高田 昌樹 TAKATA Masaki

(財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門

〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1

TEL : 0791-58-2750 FAX : 0791-58-0830

e-mail : takatama@spring8.or.jp

 

 

Print ISSN 1341-9668
[ - Vol.15 No.4(2010)]
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