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Volume 13, No.3 Pages 212 - 213

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

2006A、2006B 採択長期利用課題中間評価について
Interim Review of 2006A and 2006B Long-term Proposals

(財)高輝度光科学研究センター 利用業務部 User Administration Division, JASRI

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 2006Aおよび2006B期に長期利用課題として採択となった3件の課題の中間評価実施結果を報告いたします。長期利用課題の中間評価は、実験開始から1年半が経過した課題に対して、提出書類をもとに成果報告を行い、3年目の実験実施有無の判断を行いました。以下に対象課題の評価コメントと成果リストを示します。

 

 

1. 共存する電荷秩序が作る機能と構造:電荷秩序ゆらぎの時間・空間分解X線回折

〔実験責任者名〕

寺崎一郎(早稲田大学)

 

〔採択時の課題番号〕

2006A0010

 

〔ビームライン〕

BL02B1

 

〔評価結果〕

3年目を実施する

 

〔評価コメント〕

 本研究は、実験責任者らにより発見され有機サイリスタと命名された革新的な電気伝導体に対して、電流通電により制御できる電荷秩序の本質的不均一構造とその非線形伝導との関係をX線回折の手法により明らかにしようとする挑戦的な研究である。現段階でいくつか興味ある研究成果が得られており、残りの期間実験を継続することにより、より一層大きなインパクトを材料科学や基礎物理学の分野に与えるであろう。

 研究の進捗状況として、採択時に掲げた3テーマのうち、電荷秩序融解のダイナミクスに係わる時間分解実験に関しては、重要な実験結果が得られており大いに評価できる。新現象として巨大電歪効果を発見したことも大いに評価されるが、その実験の確度についてはより慎重に精査すべきである。一方、採択時に計画性に不明確な点があると指摘されていた圧力実験やマイクロビームによる空間マッピングに関する実験については、当初の研究計画どおりには研究が進捗していない。しかし、圧力実験で高圧下での逐次相転移を発見したことは評価に値し、高圧実験が計画どおりにいかなかったことを補って余りある研究成果である。今後、この逐次相転移の起源が競合する秩序のゆらぎに関連付けて解明されることを期待する。さらに、Rb塩で競合する電荷秩序を制御できることを見出した意味は非常に大きいと思われる。この系で詳細な研究を継続することにより、非線形物理学の基礎分野で重要な研究成果が得られると予想する。空間マッピングに関する実験については、現状では、X線回折以外に光の分光法を用いた顕微的な手法による研究も計画すべきである。

 全体を通して、現段階で新たな現象をいくつか見出している。それら、本研究課題の中心となる研究成果を早急にまとめて論文投稿されることを提案する。

 

〔成果リスト〕

[1]          H. Endo et al.: “Current-Induced Metallic State in an Organic (EDT-TSF)2GaCl4 Conductor”, J. Am. Chem. Soc. 128 (2006) 9006-9007.

 

 

2. 遺伝子導入剤とDNAが形成するリポプレックス超分子複合体の高次構造解析とその形成過程のダイナミクス

〔実験責任者名〕

櫻井和朗(北九州市立大学)

 

〔採択時の課題番号〕

2006B0012

 

〔ビームライン〕

BL40B2

 

〔評価結果〕

3年目を実施する

 

〔評価コメント〕

 本課題は、リポプレックス複合体の高次構造、特にその中でDNAがとる構造の解析と複合体形成過程の解明を目指したものであり、遺伝子治療につながる社会性をもった重要な課題であると考えられる。

 真空チェンバーと真空環境下で使用できる希薄ミセル溶液用セルを開発することによりSAXSのS/N比が向上した。このことにより希薄ミセル溶液の測定感度が向上し、脂質の構造がミセル濃度に依存することを明らかにした。また遺伝子導入に使用される3成分系脂質の混合比と遺伝子発現効率を検討し、その効率とミセル構造の関係をモデル計算との比較により解析している。また現在リポプレックスの標準的なモデルとされているSafinyaらのDNAベクターの構造に疑問を抱かせる結果も得ており解析を進めている。

 光学系の検討に基づく真空チェンバーシステムの開発は波及効果もあると考えられ評価できる。一方DNA複合構造のモデルに関しては、現データの多面的解析とともに、SAXS以外の複合的な手法による解析が必要と思われ、今後の解析の進展に期待する。これまでの成果はJACSに3篇の報文として投稿中ということであるので、これまでの成果の取りまとめも進展していることが確認された。一方、本課題で予定されている複合体形成過程のダイナミクスについても、残されたビームタイム中に取り組むことを期待したい。

 

〔成果リスト〕

[1]          I. Koltover, T. Salditt, J. O. Radler and C. R. Safinya: “An inverted hexagonal phase of cationic liposome-DNA complexes related to DNA release and delivery”, Science 281 (1998) 78-81.

[2] 8576   K. Koiwai, K. Tokuhisa, R. Karinaga, Y. Kudo, S. Kusuki, Y. Takeda and K. Sakurai: “Transition from a normal to inverted cylinder for an amidine-bearing lipid/pDNA complex and its excellent transfection”, Bioconjug Chem 16 (2005) 1349-1351.

 

 

3. 膜輸送体作動メカニズムの結晶学的解明

〔実験責任者名〕

豊島 近(東京大学)

 

〔採択時の課題番号〕

2006B0013

 

〔ビームライン〕

BL41XU

 

〔評価結果〕

3年目を実施する

 

〔評価コメント〕

 採択時の主な目的であった2種類の膜タンパク質の反応中間状態の解析は、豊島・村上2グループでそれぞれ順調に進んでおり、メカニズムの全貌解明に迫っている。Ca2+-ATPaseについては、3種の中間体を決定して、ゲートの開閉機構がほぼ明らかになった。また、AcrBについても阻害剤の結合様式が解明され、医薬品開発への糸口が得られている。これらの成果は高いインパクトを与えるものである。また、Na+K+-ATPaseやAcrBホモログなど新規膜タンパク質の構造解析にも取り組み、両タンパク質ともに順調に解析が進行しており、Ca2+-ATPaseおよびAcrB同様大きな成果が期待できる。

 これらの解析にあわせ、diffraction scanningやcontinuous scanningなどのデータ収集法やコントラスト変調法を結晶解析に適用する新たな手法の開発にも積極的に取り組み、前者においては放射線損傷を抑制して高分解能データ収集が可能になり、後者の手法においては、脂質二重膜の可視化に成功して脂質二重膜のダイナミクスを示すデータを得ている。これらの手法開発・技術開発の結果は、一般のビームライン利用者にも還元されつつある。

 実施に関しては、2グループでビームタイムがシェアされており有効に利用されているほか、技術の開発や情報の共有がなされており、採択時に期待されていた相乗効果が得られている。3年間の計画を半分経過したところであるが、以上を総括すると残りの期間での更なる発展が期待できる。

 

〔成果リスト〕

[1] 12133  M. Takahashi, Y. Kondou and C. Toyoshima: “Interdomain communication in calcium pump as revealed in the crystal structures with transmembrane inhibitors”, Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 104 (2007) 5800-5805.

[2] 12134  C. Toyoshima, Y. Norimatsu, S. Iwasawa, T. Tsuda and H. Ogawa: “How processing of aspartylphosphate is coupled to lumenal gating of the ion pathway in the calcium pump”, Proc. Nat. Acad. Sci. USA. 104 (2007) 19831-19836.

[3] 9956   S. Murakami, R. Nakashima, E. Yamashita, T. Matsumoto and A. Yamaguchi: “Crystal structures of a multidrug transporter reveal a functionally rotating mechanism”, Nature 443 (2006) 173-179.

 

 

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[ - Vol.15 No.4(2010)]
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