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Volume 11, No.6 Pages 368 - 372

1. SPring-8の現状/PRESENT STATUS OF SPring-8

利用研究課題の選定にあたって
Report of the Proposal Review Committee

佐々木 聡 SASAKI  Satoshi

東京工業大学 応用セラミックス研究所 Materials and Structures Laboratory, Tokyo Institute of Technology

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 本年7月に共用促進法(特定放射光施設の共用の促進に関する法律)が改正され、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律と名前が変わると共に、SPring-8の運営形態が大きく変更されました。それに伴って課題選定に係る組織も変更され、諮問委員会が選定委員会に、従来の利用研究課題選定委員会が利用研究課題審査委員会になりました。そして、第6期課題選定委員会による2006B期が、以前の法律で実施される最後の課題選定となりました。なお、2007A期は移行期であり、もう一度だけ、同じ審査委員により課題選定作業が行われます。
 これまでは、課題選定を終えてという標題で主査報告を行ってきましたが、共用促進法の改正という節目であり、SPring-8の評価も始まっていますので、今期の課題選定報告の後に、課題選定の変遷や特筆すべきことを書き留めてみたいと思います。


1.2006B期の課題募集と審査

 最初に、今期18回目の課題選定について簡単に報告いたします。対象となる期間は2006年9月の第5サイクルから12月の第6サイクルまでで、共同利用の配分シフト数は、162シフト(1シフトは8時間)となっています。一般利用研究課題570件と重点研究課題297件の総計867件の応募に対し、一般利用研究課題329件と重点研究課題213件の総計542件が採択されました。今期の特徴は、運転時間の短縮から配分可能なシフト数が大幅に減ったことにあり、そのため前回とほぼ同じ応募数ながら採択件数が大幅に減っています。詳しくは、本誌前号に掲載されました利用業務部からの課題選定報告を参照ください[1]
 課題選定ではレフェリー制がうまく機能し、規格化したレフェリーの評価点を基に各分科会で審査が行われました。2005A期からは、研究成果についての評価結果が課題審査に反映されており、分科会ごとにプラスとマイナスの評価がされています。その対象となる課題数はまだ限定的で、全体の数%以下です。産業利用分科への適用は、評価基準が違うということで見送っています。レフェリーによる事前評価と一般課題分科会による最終審査を受けて、6月30日開催の第40回利用研究課題選定委員会で課題が採択されました。平和目的であること、共用ビームラインでは一般利用研究課題の占める割合が50%を切らないこと、選定課題のシフト充足率を満足させること、挑戦的な課題に充分な配慮をすること等に留意されています。
 大学院生対象の萌芽的研究支援課題は、32課題の応募に対し13課題が選定されました。萌芽的課題の審査は、他の一般課題と同じ条件で行われています。長期利用課題には4件の応募があり、書類審査と面接審査の結果、「遺伝子導入剤とDNAが形成するリポプレックス超分子複合体の高次構造解析とその形成過程のダイナミクス」(2006B0012、櫻井和朗、BL40B2)と「膜輸送体作動メカニズムの結晶学的解明」(2006B0013、豊島近、BL41XU)の2件が採択されました。


2.第4期までの課題選定を振り返って

 共用促進法改正の機会を今後の課題選定に活かすため、整理の意味も込めて、今までの課題選定を振り返ってみたいと思います。
 共用促進法には公平な課題選定の実施が謳われています。改正前の法律では、学識経験者により構成される諮問委員会が、募集や選定の公平性を確保し、利用課題の選定基準を策定することになっていました。SPring-8の利用は、内閣総理大臣が1994年9月22日に特定放射光施設の共用の促進に関する基本的な方針を5項目にまとめて告示したことから始まり、JASRIが放射光利用研究促進機構に指定されています[2,3]。第1回の諮問委員会は1994年11月に開催され、その下部組織として、利用研究課題選定委員会(PRC; Proposal Review Committee)が発足しました。そして、「共用施設の利用研究課題選定に関する基本的考え方」と「専用施設の設置及び利用に関する基本的考え方」がまとめられました[4]
 この時にまとめられた課題選定の基本的考え方を簡単に示します。すなわち、(1)公平な提案機会を確保するため、利用研究課題を公募し、申請に必要な情報を十分に提供する、(2)課題選定では、科学技術的妥当性、SPring-8の必要性、技術的な実施可能性、安全性について総合的専門的に評価する、(3)課題の有効期限を6ヶ月、選定を年2回とする。半年課題に合わせて申請から実施までの手続きを簡素かつ迅速にする、(4)利用研究課題選定委員会で課題を選定する。利用研究分野に応じ複数の分科会を設置し、その分科会が課題審査ならびにビームタイム配分を行う。選定結果は利用研究課題選定委員会の審査を経て機構と諮問委員会に報告する、(5)緊急課題は随時受け付け、対応分科会で随時迅速に審査する、(7)その他の留意事項、です。
 立ち上げ期に対応した第1期および第2期の利用研究課題選定委員会(太田主査)では、3回の利用期(1997B、1998A、1999A)の課題選定を行っています[5,6]。最初の利用研究課題の募集(1997B)は、試行期間(1997年10月からの半年間)に10本の共用ビームラインに対してなされ、テスト実験に重みが置かれました。課題選定委員会は、様々な研究分野・組織や異なった価値観を持つ研究者の課題に対し、公平かつ迅速な審査をする体制作りに苦慮されています。ESRFやAPSと同様に、色々と議論が起こる半年制度がSPring-8にも導入されましたが、そこには一回一回のビームタイムを大切に使って欲しいという期待感が込められています。迅速な審査への配慮からレフェリー制度を採用せず、課題選定委員による審査が採用されました。ところが、研究課題の申請数が予想以上(1286、1702、2585件)になり、分科によっては審査委員1人で80件以上の課題数を処理することにもなりました。第2期課題選定委員会が終わる頃には、課題選定の基準も、立ち上げビームラインの性能評価実験の優先から、本来の科学技術的評価に移っています。
 1999年4月からは、第3期課題選定委員会(村田主査)に引き継がれました。SPring-8の共同利用も建設フェーズから利用フェーズに入り、15本の共用ビームラインを含む21本体制で、課題募集が行われました。このときから、利用期間が区切りのよい暦年の前半(A期)後半(B期)となり、成果占有課題の募集も始まっています。回折・散乱と生命科学の分科では課題申請が激増したため、選定委員を増すとともに小分科会が設置されました。このときの課題選定作業の多忙さは1999B期の主査報告によく示されています[7]。その報告の中で、募集期間で選定可能なシフト数が変動するため採択の閾値が時によって変化すると指摘されていますが、その状況は今も変わっていません。2000A期からは、生命科学分野で留保ビームタイムが設定され、試料のチェックや緊急利用に対処できるようになりました。
 第3期の課題選定で最も大きく変わったことは、2000B期から特定利用制度(特定利用課題;現在の長期利用課題)が導入されたことです。諮問委員会に特定利用制度特別検討部会(村田主査)が設置され、長期的な視野でプロジェクト型研究の導入が検討されました[8]。特定利用課題では、各期の共同利用ビームタイムの20%を限度にして最長3年間にわたりビームタイムを利用できます。書類審査と面接審査の2段階審査や中間評価・事後評価も盛られ、優先利用に対して厳重な審査で対処されています。特定利用制度の導入により課題選定に関する基本的な考え方も改訂されました[9]。また、この改正で、課題選定業務が諮問委員会から利用研究課題選定委員会に委任されました。これにより、課題選定委員会の結果をJASRIが直接採択できるようになり、申請者への採択通知が速くなりました。特定利用が開始された2000B期には、9件の応募があり3件が採択されています。
 長時間あるいは逆に生命科学のように短時間のビームタイムで実施される特別な分野を除外して、シフト充足率(配分シフト数と要求シフト数の比)を100%に近づける措置がとられました。申請者の要求シフト数を適正に評価するために、ビームライン担当者による推奨シフト数が審査の際に参考にされています。2001A期のシフト充足率は87%になり、これを契機に継続課題が原則廃止となりました。
 2001年4月からは、第4期利用研究課題選定委員会(松井主査;2001B期〜2003A期)に引き継がれました。共用ビームライン20本(含、3本のR&D)など合計34本が稼動する本格的な利用フェーズとなり、ビームラインや装置の高度化と共に、SPring-8の特徴を活かした研究成果の輩出が強く期待されるようになりました。生命科学分科会、回折・散乱分科会、および分光分科会に小分科会が設置され、産業利用分科会が新設されました。この時期のSPring-8では、JASRI放射光研究所の組織改革、社会的ニーズに応える産業利用や医学診断の促進とコーディネーター支援、総合科学技術会議による科学技術計画、文科省科学技術学術審議会の評価委員会による中間評価など、大きな展開が起こっています。そのような状況下、2002年の4月に課題選定の基本的な考え方が再度改訂されました。そして、今後の利用研究課題選定に関して、(1)独創的、開拓的研究の採択拡大、(2)国外からの利用に対する平和目的の確保、(3)分野ごとの特徴を生かす課題選定、が推奨されました[10]。この時に、課題の実施と成果利用が平和目的に限定され、科学技術基本法や社会通念に照らして妥当なものでなければ課題選定の対象にならないことが明確にされました。分科会が10に細分化されたことで研究分野に特徴的な課題選定が行え、産業利用分科会の新設で産業利用特有の価値判断での審査が可能となりました。ワーキンググループでの議論を経て2002B期からは、回折・散乱分科会での試行として、専門委員制(レフェリー制)の導入やBL02B1(結晶構造解析)での1年課題の募集が始まりました。また、留保ビームタイムが産業利用やXAFSの分科会にも拡張され、試し実験などに活用されるようになりました。
 評価委員会による戦略的研究導入の指摘やSPring-8運営費の減少を受けて、2002B期から、ナノテクノロジー総合支援プロジェクト(SPring-8におけるナノテクノロジー研究課題;ナノテク課題)とタンパク3000プロジェクト(タンパク質の個別的解析プログラム;タンパク500プログラム)という戦略的な研究が開始されました。ナノテク課題については、一般利用研究課題と同時に12テーマを公募し、ナノテク課題審査委員会で審査した後に、採択課題を課題選定委員会に推薦する方式をとっています。不採択になった課題は、再度、一般課題として扱われ、課題選定委員会の対応分科会で審査されます。一方のタンパク500プログラムでは、中核機関に登録された研究者を対象に、シフト枠の確保のみを行っています。一般課題での旅費支援はなくなりましたが、これらのプロジェクトで採択された課題に対しては、旅費等の支援を行う仕組みができました。しかし残念ながら、厳しい予算体制のため1〜2年で打ち切りになっています。上記プロジェクトの開始を受け、重点化した課題やプロジェクトと一般課題とを課題選定やビームタイム配分でどのように棲み分けるかが問題になってきました。諮問委員会に重点課題選定検討作業部会(松井主査)が設置され、課題選定委員会においても施設主導の研究課題の選定について何度も議論されました[11]


3.第5期以降の課題選定を振り返って


 2003年4月からは第5期課題選定委員会(2003B期〜2005A期)となり、共用ビームライン25本(含、3本のR&D)など33本(2004A期からは34本)を対象に課題選定が行われています。2003B期には、前述の重点課題選定検討作業部会で検討された重点研究課題(公募の領域指定型、非公募の利用者指定型、JASRIと共同研究を実施する戦略型)が立ち上がりました[12]。重点研究課題とは、SPring-8が主体的・戦略的に主導する成果創出型の研究課題です。この導入に伴い、公募による一般利用研究課題枠の配分を決める前に、重点研究課題枠と一般利用研究課題枠との間で、配分可能なシフト数を調整する作業が入ってきました。JASRIと課題選定委員会との間でシフト枠配分調整会議が開催され、全体のバランスを考えながら、共用ビームラインで50%を切らないシフト配分になるよう調整されています。領域指定型の重点研究課題として、重点ナノテクノロジー総合支援と重点タンパク500の他に、新たに重点産業利用(重点トライアルユース)が始まりました。トライアルユース課題もナノテク課題と同様、トライアルユース委員会で審査された後に、課題選定委員会に採択課題を推薦する方式をとっています。不採択になった課題は、再度、一般課題として扱われ、産業利用分科会で審査されます。産業利用の観点から課題選定に関する基本的な考え方も改訂され、科学技術的妥当性の中に、産業基盤技術としての重要性や発展性、研究課題の社会的意義や社会経済への寄与、という視点が新たに盛り込まれました。
 課題選定委員会では、常に課題選定のあり方を議論し、選定方法の工夫を少しずつ積み重ねてきています。一次審査の方法を見直して、すべての分科会に専門委員制(レフェリー制)を導入しました。専門分野の近い3〜4名のレフェリーが審査することで公平性が高められるとともに、各分科会委員が100件程度の申請書を短期間に読んで審査するという過大な負担が軽減されました。秘密保持の重要性から、予め選出されたレフェリー(2003B期では分科会委員を含めて85名)によって、すべての分科で閉じた形での事前審査が行われています。その審査は、科学技術的な妥当性を中心とした一次審査で、各レフェリーは、評点が一定の分布になるように規格化した上で点数評価を行うよう依頼されています。そして、そのレフェリーの評価点に基づいて、各分科会と課題選定委員会が最終的な審査をしています。レフェリーの評価がばらついた場合には、分科会で丁寧に対応しています。各申請に対し、科学技術面で最も関係深い分科会で評価を行いますので、1本のビームラインに対し複数の分科会が関与します。そのため、ビームラインに対応する責任分科が設定され、ビームライン毎に最終配分シフト数の調整を行っています。
 2期に分けて実験を行うことに重要な意味がある課題に対しては、1年課題を募集しています。BL02B1で2002B期と2003B期に1年課題の試行募集を行った後に、2004B期からは、4つのビームラインで1年課題を募集しています。対象ビームラインは、BL02B1(単結晶構造解析、D1分科)、BL04B1(高温高圧、D2分科)、BL10XU(高圧構造物性、D2分科)、BL27SU(軟X線光化学、S分科)です。募集の受付は1年に1回(B期開始のみ)で、括弧内の分科会に申請された課題のみが審査対象となります。1年課題の選定は、通常の半年課題に変更するかどうかの判断も含めて、該当する分科会で審査されます。2004B期には21件の応募に対し17件が選定されました。別の新たな制度として2005A期からは、大学の指導教官の承認を受けた上で、大学院生が課題責任者として萌芽的研究支援課題に申請する道が開けました[13]。一般利用研究課題と区別なく審査され、採択されると旅費や一部の研究費に若手支援が受けられます。2005A期には、40課題の応募に対し18件が選定されています。
 2004年10月のSPring-8シンポジウムで説明を行った後の2005A期の募集から、研究者の成果を課題審査に反映させるシステムを試行的に導入しました[14,15]。このシステムでは、研究成果を出すことでSPring-8の成果創出に貢献した利用者を優遇し、合わせて、成果のないリピーターには減点して、社会への説明責任を果たすことを目指しています。また、意図するところは、SPring-8を維持するのに論文等の成果公表が不可欠だと喚起することです。実際の審査では、レフェリーの点数評価に基づく公平な審査を維持するため、その評価点を基本データとした上で、大きな成果がある申請者に加点し、逆に利用の割に登録論文数が極端に少ないリピーターに減点しています。統計処理や各分科会での検討をもとに、1論文を発表するのに必要な標準シフト数(Nc値)や加点・減点値(dV値)をビームライン毎に算出しています。成果の公表はJASRIに登録された原著論文とし、実験責任者として過去3年間にNc値の2倍以上のビームタイム利用を対象にしています。現在の審査では、利用したシフト数に対して公表の標準とされる論文数を算出し、その2倍以上の登録がある実験責任者には加点を、登録がゼロの実験責任者には減点を施しています。産業利用については、特許獲得と論文発表との関係など成果の中身を検討している段階にあり、このシステムを産業利用分科に適用することは見送られています。2005A期の試行では、加点と減点の課題は全体の2.6%と1.7%でした。なお、成果反映の審査システムでは、課題選定の審査基準は一切変更されておりません。
 特定利用課題は、重点研究課題の導入で長期利用課題と改称されました。最長3年間を利用する一般利用研究課題であり、実験開始後1年半から2年で中間評価を受けます。書類およびヒヤリング審査により、3年目の利用が適当かどうか判断されます。実験期間が終了すると、研究目的の達成度等を把握するため事後評価が行われます。第5期の2年間には、初期の5課題が事後評価の対象となりました。事後評価のシステム作りがなされ、SPring-8シンポジウムで成果を発表してもらうことになりました。2000B期に開始した3課題が2003年11月に、2001A期と2001B期に開始した2課題が2004年10月に、そして第6期では2002A期と2002B期に開始の2課題が2005年11月に、成果発表がSPring-8シンポジウムの中でユーザーに公開され、質疑応答と事後評価委員会による評価が行われました。長期利用課題の成果をわかりやすくアピールし、以後のSPring-8評価に活かすため、事後評価の一環として利用者情報誌に解説記事が掲載されています。
 2005年4月から第6期課題選定委員会(2005B期〜)に引き継がれました。第6期での大きな変化は、急遽、2005B期からSPring-8戦略活用プログラム(重点領域指定型)が導入されたことです。このプログラムへの配分シフト数が2005B期だけでも834シフトに上り、一般利用研究課題枠への大きな影響が懸念されました。課題選定委員会での議論の末に、一般課題枠を50%に近づける努力をするようJASRIに要望しました。総ビームタイムを増加させ、課題の一部を2006A期3月に配分し、ビームラインへの割り振りを工夫するなどの努力をしていただいた結果、一般課題枠50%以上が確保されました。募集が産業利用に偏っていたために幾つかのビームラインに利用が集中し、前回に比べ採択率が極端に低いビームラインが出ました。2006A期4月分以降の戦略活用プログラムは、2006A期で平成18年度前半分として公募されました。2年目に入り各ビームラインにうまく分散されているためか、共用ビームラインで一般課題の占める割合は56%程度と一般利用研究課題への影響は落ち着いたものになってきています。
 2006B期からは、成果公開の課題でビーム使用料を徴収する新たな優先利用枠の制度が始まりました[16]。この優先利用枠は、大型研究費を獲得した課題に対し、成果公開を前提に優先利用料金を払うことで、簡単な審査( 安全審査、技術審査とSPring-8を利用する必要性の審査)のみでビームライン利用を提供する制度です。そして、ビームタイムが優先的に配分されます。優先利用枠には、全ビームタイムに占める割合、ビームラインごとの利用時間、単一課題での利用可能なシフト数の上限が決められ、適正に運用されているかどうかを課題選定委員会でチェックすることになっています。なお、優先利用枠制度の導入で、課題選定の基本的考え方の該当部分が改訂されています。また、2005B期から、実験技術・方法等の第5分科会は休眠していますが、レフェリー制度が機能しており特に問題は出ていません。


4.今後の課題選定について

 2005年10月にはSPring-8の運営が理研とJASRIの2者体制になるという大きな変化がありました[17]。課題選定に関することでは、2005年度に諮問委員会の専門委員会、共用ビームライン運用方法検討委員会(坂田主査)が設置されました。重点研究課題の導入や本格的利用期に入った機会に、応募分野が利用者にわかりにくくないか、利用の多様化で一般課題の50%枠確保が困難ではないか、成果公開に改善の余地がないか、などの項目で運用方法の見直しが検討されました。2005年5月から11月にかけて集中的に開催された委員会からは、(1)利用研究課題選定委員会における分科会の分類方法、(2)共用ビームラインにおけるビームタイム枠の取扱、(3)成果非占有課題における成果公開のあり方、を中心に答申がまとめられ、2006年2月の諮問委員会で承認されています。(1)についての答申では、今後の課題選定は、レフェリー制度、研究成果の審査への反映、ホームページの充実を3本柱にして進めるべきで、レフェリー審査や分科会の分類方法は現行の継続で問題がないとされました。また、公募する課題の枠を50%以上確保し、論文・プロシーディング・特許などを知的公共財として積極的に公開するよう答申されています。以上のように、今後も切磋琢磨することを条件に、大枠では今まで構築してきた課題選定制度が継続されるものと思っています。しかし、いくつかの検討事項が指摘されています。公募する重点領域課題でも一般課題並みの公平性や透明性を確保すること、重点領域課題と一般課題との選定方法を整理・簡略化することなどです。また、競争率の非常に高いビームラインが出てきており、新ビームラインを建設する努力とそれまでの対策が望まれています。
 JASRIは放射光利用研究促進機構に指定されていましたが、共用促進法が改正されたことにより登録施設利用促進機関に変わりました。そして、JASRIの業務内容が整理され、例えば、その業務から利用研究促進のための試験研究がはずされました。これにより、調査研究目的で共用ビームラインを利用するときには文部科学大臣の承認を受ける必要がでてきました。JASRIでは登録施設利用促進機関に登録するときに調査研究を明記する意向ですので特に問題は生じないかもしれませんが、不安定になる内部スタッフ研究への危惧が、2006年6月開催の課題選定委員会で話し合われました。そこでは、内部スタッフの研究を積極的に推進しないと施設の力が落ちるとの指摘があり、内部スタッフも外部ユーザーと同じ土俵と基準で審査を受けて研究でき、それを施設が推奨することの重要性が確認されました。
 このように、SPring-8のまわりでは大きな変化が起こっています。利用研究課題審査委員会と名前は変わりましたが、今後ともSPring-8の発展とその共同利用に寄与するため、出来る限りの努力を重ねていきますので、皆様のご協力をよろしくお願い致します。課題選定システムを変更することは、特に利用業務部の皆さんの苦労を伴います。例えば、1年課題の導入の例1つをとっても、システム変更に伴い仕事量が膨大に増えました。そのような苦労を厭わない責任感と情熱に対し感謝しております。なお、JASRIおよび課題審査委員会では、利用者の課題選定に関する要望に、できるだけ応えたいと考えています。ぜひ、ご意見やご要望をお寄せください。



参考文献
[1]SPring-8利用者情報Vol.11,No.5(2006)291-307.
[2]SR科学技術情報Vol.4,No.9(1994)30-36.
[3]SR科学技術情報Vol.4,No.11(1994)28-31.
[4]SR科学技術情報Vol.5,No.1(1996)28-30.
[5]SPring-8利用者情報Vol.3,No.6(1998)16-18.
[6]SPring-8利用者情報Vol.4,No.2(1999)13-20.
[7]SPring-8利用者情報Vol.4,No.5(1999)18-20.
[8]SPring-8利用者情報Vol.5,No.2(2000)82-83.
[9]SPring-8利用者情報Vol.5,No.3(2000)184-185.
[10]SPring-8利用者情報Vol.6,No.3(2001)189-191.
[11]SPring-8利用者情報Vol.8,No.2(2003)61-63.
[12]SPring-8利用者情報Vol.8,No.3(2003)148-149.
[13]SPring-8利用者情報Vol.10,No.5(2005)286-287.
[14]SPring-8利用者情報Vol.9,No.5(2004)333-335.
[15]SPring-8利用者情報Vol.10,No.2(2005)63-68.
[16]SPring-8利用者情報Vol.11,No.3(2006)154-155.
[17]SPring-8利用者情報Vol.11,No.2(2006)77-80.



佐々木 聡 SASAKI Satoshi
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